紙の本
戦後史をほとんど学校で習わない日本人は読んで損はない
2012/02/26 11:02
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
『昭和史』の戦後編である。前編もたいへんに興味深いものであったが、こちらも負けず劣らず、面白かった。やはり、その時代を生きた人の証言というものは貴重である。
講演録なので、口調に砕けたところはあるが、かえってそれがいい味わいをもたらしている。ただ、17回におよぶ講演録は長い(著者自身は寺子屋と称している)。ちょっとくたびれてしまった。読み物としてよりも、時代の記録として、ずっと受け継がれる類の本だろう。
講演なので、著者の視点でバイアスがかかっているのではないかという懸念もあるが、その時代を特長づけるエピソードや具体的なフレーズをふんだんに盛り込んでいるので、そういった心配はなさそうである。どうしても心配なら、ほかの著者の昭和史と比較して読めばいいと思う。
終戦直後の国全体の食糧難は、こうして時代体験として語られるとそのたいへんさが伝わってくる。豊かになってから生まれた者には、想像をこえる厳しさだったのが分かる。闇市における値段の高騰、国民の腹を満たすための策をもたない政府。
いざとなると、政府には全く頼れないというのは、今の時代の人も理解しておいた方が良さそうだ。今後、首都圏直下地震などで東京が壊滅しても、おそらく政府からはまともな救済の手は差し伸べられず、自力で何とかしなくてはならないだろうという感じを受けた。著者の戦後史の振り返りは、著者の意図しない形で、将来の日本の道行きを暗示しているのかも知れない。
特に、民法の改正で、社会のあり方が大きく変わったと結論づけている点は興味深い。法律に親しんでいる人でなければ、民法のことを気にかけることはほとんどないはずだが、社会のあり方と国民の精神を規定していると著者は見る。
もちろん、憲法改正の議論はそれ以上に関心の的である。日本国内で自発的に改正しようとした動きがあり、そのあとGHQからの動きがあり、錯綜した動きだが克明に語り継いでいる。
また、GHQの統治の最中で、東西冷戦がすすみ、アメリカが日本を見方につけておく必要が生じて、劇的に日本の歩みが変化していくくだりは、おさえていきたい。GHQの施策も急旋回したのである。これが良くも悪くも、戦争に負け、占領された国にも関わらず、戦後もっとも急速に経済発展する条件を生みだした。1950年代の朝鮮戦争特需とあわせて、日本の経済発展は幸運の賜物であることは忘れてはならないだろう。
日本人のがんばりもあるが、たぶんに好条件や他国の悲劇をも好機にしていた側面を思えば、豊かになったあとの日本が国際社会に向けて果たすべき役割はもっと大きくていいと思った。
55年体制の成立、60年安保、全共闘などが駆け足で語れられる。著者は1972年の沖縄返還をもって真の意味で「戦後の終わり」としている。ただ、この返還には、米軍の駐留というアジア戦略のなかに組み込まれる要素が組み込まれてしまっているのだが。これが今に至る沖縄の基地問題につながる。
戦後の昭和史は、現代に至る同時代論という色彩を帯びて、終末を迎える。今の日本社会のあり方を理解する手がかりとして一読するのは、長大な本ではあるが価値があると感じた。
少し驚いたのは、1960年代にすでに時代の閉塞感が生じていたことである。今もしきりに閉塞感が語られるが、すでに50年前にその萌芽があった。
「そろそろ、きっちり出来上がって落ち着いてしまった時代に対しての閉塞感が出はじめていたような気がしないでもありません。」(p.506) この箇所以外にも、このキーワードが頻出するようになってくる。
こうした戦後史は学校ではほとんど習わないので、誰が読んでも勉強になるのではないだろうか。少なくとも個人的にはためになった。
紙の本
読みやすいです!
2019/05/31 16:52
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
■読んでいる途中での感想です。■資料に引きずられすぎて、史実に忠実ではあるが、読みにくい本があります。半藤先生の、この本は、平易な語り口で、読みやすいです。■日本側の資料とアメリカ側の資料で、違いがあるという視点も、興味深いです。
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わかりやすい
2021/09/03 08:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
半藤一利さんらしい分析で、昭和の歴史が描かれていて、興味深く読むことができました。バブル崩壊の予兆など、素晴らしかったです。
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(戦前Ver.に引き続き…)
続いて戦後編。今度は著者が青春時代から今まで生きてきた中での出来事ということもあり、
当時の自分の目線・社会一般の目線・政治家の3軸から戦後の昭和を切り開いていく。
スタートは戦後処理である。天皇制護持からはじまり、全面講和か多数講和か。その中で一般人がどう変容していくのか。GHQや外国の動向は。など詳細に記述されていく。
もちろん今でも議論される安保なども語られる。しかし、1970年代に入ると未発表のデータがあるかもしれない、との事で概要のみになっていく。。
そして1989年、昭和の終わりで記述はストップする。そして結びとして平成がどうなっていくか?の事に入る。。
この本で著者が言いたかったのは、「今は戦前の繰り返しを行っていないか?」という危機感の喚起と「我々及び少し上の世代への忠告」であろう。
P.561〜562から引用(し、編集)
■今の日本に必要なのは何か?
・無私になれるか。マジメさを取り戻せるか。
・小さな箱から出る勇気。
・大局的な展望能力。
・他人様に頼らないで、世界に通用する知識や情報をもてるか
・「君は功を成せ、われは大事を成す」(吉田松陰)という毅然たる風格をもつことができるか
ロジックやコミュニケーション能力とは違う、自分の根本を問いただされる本だった。
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(戦前編に同じ:以下は複写)具体的で、そして、リアル。歴史系の本は、堅苦しい文章のものが多いが、これは文芸春秋の編集出身の著者が、一部で口語体を交えるなどして、できるだけ多くの人に伝えることを目的として書かれているのだと思う。ノモンハン事件に対する見解など、一部で偏りがあると思われる部分もあるが、極力、双論併記にしてあって、客観的で、頭にすっと入ってくる。ファクトに基づかない思考による現実逃避など、現代の経営に対しても示唆がある。
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前篇に比べたら知っていることが多かった。
小説吉田学校を20代の時に読んだおかげか・・・
マッカーサー元帥についてのイメージがかなり
変わった。半藤氏のフィルターも若干かかって
いるとは思うが・・・
ここ20年くらいはまだ歴史とは言えないし
公文書も公開されないので、史実として
扱えないのは仕方なし。
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昭和史続編。これはかなり読みやすく親しみやすい。毎日出版文化賞特別賞受賞作品。
戦後(1945-1989)昭和史をとても分かり易く語ってくれる。
昭和史にそれ程詳しくない人でも面白く理解できると思う。
憲法策定の話、講和条約、高度経済成長、世界動向、安保闘争など詳細に理解を深めることができる。
まさに生きた日本史だなと実感できる。当時の日本の社会がどのようであったのか、
風潮や文化面などの話も織り交ぜてあり、実際体験してきた見聞録のようでもある。
昭和天皇・マッカーサー会談秘話の付録もある。
前後して、戦前編も読む予定。
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司馬遼太郎が描かなかった時代。日本人にとって辛い時代。歴史小説で歴史に触れてきた私にとって,昭和史は近くても遠い時代であった。しかし,日本人を考える上で,歴史を学ぶ上では避けては通れないことを痛感した。
熱狂しやすい国民性
物事は自分の希望するように動く(自分に都合良く考える)
・・・・
筆者はここに日本人の負の国民性をみる。司馬遼太郎も負の日本人を見たことから歴史をさかのぼったときいたことがある。本書で大まかな昭和史を把握できた。私の歴史を学ぶ旅が再スタートした瞬間である。
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10月25日読了。第二次世界大戦の敗戦・1945年の天皇によるラジオ放送に始まりGHQの占領時代から「奇跡的な」復興を遂げていく日本。その姿と政治家たちの活動を追う書。右に倣えと言われれば従ってしまう国民性もあるのだろうが、闇市が幅を利かせ人民は飢えており、マスコミはGHQにおもねった記事しか流さず、政治家は政局に明け暮れる・・・こんな時代に「武士道とは・正しい日本とは」などと語ることは不可能なことだったのだろう。不可抗力もあれば道を誤った部分もあるにせよ、吉田茂・岸信介・池田勇人・佐藤栄作といった戦後の政治家/首相たちには己の使命感・日本をどうするか、というビジョンがあったのは間違いないということか。私の生まれる前の時代の話ではあるが現在の私にも確実につながっている昭和史。この本一冊でかなり理解を深めることが出来た。巻末には天皇・マッカーサー会談の記録が追記されているが、そちらには興味なし。
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これまで KiKi は昭和史に関連する本を一切読んでこなかったわけではないのですが、それは例えば「満州国」について書かれた本だったり、「日中戦争」に関して書かれた本だったり、「太平洋戦争」に関して書かれた本だったり、「東京裁判」に関して書かれた本だったり、「安保闘争」に関して書かれた本だったりと、ある意味で事象の1つ1つを捉えた本ばかりだったような気がします。
それらの既読本と比較してこの「昭和史 2冊セット」は非常によくまとまった「昭和通史」だったために、様々な事件が発生する時代の空気感、事件ごとの因果関係をリアルに感じながら読み進めることができたと思います。 ちょっと笑っちゃったのが KiKi の所持本の1冊「昭和史 著:遠山茂樹 今井清一 藤原彰 岩波新書」に関して評論家の亀井勝一郎さん & 半藤一利さんの会話
「あの本を読んだかね?」 「読みました」 「面白いかね」 「いやぁ、くそ面白くもありません」 「どこが一番悪いと思うかね」 「あそこには血の通った人間が書かれていません」 「そうか君もそう思うか」
というのが紹介されていて、実は KiKi はこの本は学生時代から何度もチャレンジしているものの、ただの一度もちゃんと読み通すことができていなかったのですけど、その理由はやっぱり面白くなかったからだったのか!と得心できちゃったこと(笑) やっぱり歴史は、そこでうごめく人たちの「人間」が感じられないと、学生時代の丸暗記系の読み物になっちゃうんですよね~。
この「戦後篇」は後半になると自分が生きてきたリアルな時代の記述がバンバンと出てきて、その頃は当然のことながら KiKi も子供だったので、断片的 & ショッキングなニュース映像だけは頭に残っていたものの「それがどんな出来事だったのか?」を深く考えずにここまできてしまったようなことが多々あるわけですけど、それらがそこそこ整理できたような気がしたのも収穫でした。
(全文はブログにて)
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日本の戦後史は学校の授業では飛ばされがちなので、流れが分かって面白い。現在の政権を担う政治家たちの父親、祖父たちの世代が何をして来たか。現在の二世政治家たちがいかにも小さく見えてしまうのも時代の流れによるものなのだろうか。良くも悪くも清濁合わせ飲むのが昭和の政治家だったのだが、現在はつまらない小事を穿って足を引っ張り合っているだけで、国の大事を為す前に政権から引きずり降ろされてしまう。マスコミが誘導可能な世論により国政がぶれ続けるこの国の未来を憂う。
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内容は平易で読みやすいのだが、講演がベースなのでどうも文体がこなれていないというか、冗長な感がある。
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戦前よりも綿密な物語がない印象。
それも自分がある程度知っている歴史のせいか?
マッカーサーと昭和天皇の話を鵜呑みにすると、
「昭和」は元号ばかりでなく、昭和天皇は、
戦前も戦後も「昭和史」の最大のキーマンであるように
みえてくる。
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昭和天皇とマッカーサーの会談の項が一番印象に残っている。他はと言えば「小説吉田学校」や「官僚たちの夏」を読んだ事があるので、なんとなくイメージがし易かった。
こういった本は、現在の日本がどうやって出来たのか、そのプロセスがおぼろげながらも掴めるので、とても興味深いです。
個人的には「改憲派」ですが、色々と考えさせられるものがありました。
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戦前戦中史ほど楽しくはないが、やっぱり歴史っておもしろい。
渦中にいるときはまったく見えないことが、何年か経って振り返って俯瞰で見てみれば「なるほど、そうゆうことだったのか。」とわかることがいっぱい。
1990年以降は現代史ということになり、資料がまだ流出していないらしい。
昭和天皇とマッカーサー会談の内容が外務省から公開されたのも2002年になってからです。
半藤氏は戦後を6つの時代に分けている。
1.昭和20~26年 降伏~GHQ占領の時代
2.昭和27~35年 「60年安保」までの政治闘争の時代
3.昭和36~40年 池田内閣の所得倍増計画で経済第一の時代
4.昭和41~47年 高度成長期
5.昭和48~57年 経済最優先に疑問を抱き始め日常生活を守りだす
6.昭和58~63年 国際化の時代
日本国民はつくづく従順な羊で、順応性に富む民族だなと思う。
天皇を崇拝し、妄信的に戦争に突入し、かと思えば敗戦後はGHQに身をゆだねマッカーサーを祭り上げる。マッカーサーが帰った後は、戦前の天皇制もどして再軍備するか経済最優先にするのか大いにもめ、そして会社のためにがむしゃらに働く高度成長期を迎える。(高度成長期には学生紛争というおまけがついてくるけどね。)
強力な指導者不在の今、日本はどこへ向かって進んでいくのか。
日本よ、いつまでも平和で穏やかな国であれ。
と半藤氏は結んでいます。同感です。