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出だし2行目で「あ、好き」って思いました。
なんて跡を引く表現をする方なんだろう。
ずっと海辺で波の音を聴いているような心地。
引いては寄せる波が、胸に何度も打ち寄せてきて、砂浜を濡らすように心に沁み入る。
そこに時々残された貝殻を見つけては、宝物のように拾い集めたくなるような。
素晴らしい表現力にため息が溢れるばかりです。
映画監督としても女優としてもご活躍されていて、小説デビュー作でコレは多才。
きっとこれからもっと、深みを感じられる作品を描いてくれるだろうと感じました。
映画も魅力的ですが、是非多くの方々に、この筆致を堪能して欲しいです。
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我慢することで自分を守ってきた子どもたちが言えるわがまま。こんなにも優しく温かく切ないわがままが、他にあるだろうか。
この限りなく愛しいわがままを、私はきっと忘れない。
母親の愛を、温かい手を、自分に向け優しい一言を与えられないまま育つ「かわいそう」な子どもたち。
それでも懸命に、必死に、手を伸ばすいたいけさ。児童養護施設で暮らす彼らはそれぞれに重い運命を背負って生きている。
子どもは親を選べない。その過酷な運命に息をのむ。
18歳になると自立を求められる。高校卒業が一つの目安だ。
施設の長女として幼い子どもたちの面倒を見てきた花にその時が迫る。何をしてどうやって暮らしていくのか。
何も決められない、焦り、不安。そして踏み出す一歩。
彼女の未来を作るのは星の子の家で暮らした10年の日々。明日の自分の背中を後ろから照らしてくれる日々。
いつか彼女の未来を読みたい。果てしなく広い海で大きく育ってきっと戻ってくる彼女の未来を、読んでみたい。
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女優・映画監督として活躍中の小川紗良氏の2021年6月公開の初の長編映画監督作品を、自ら小説化した作品。映像を文字にしているので、背景も丁寧に描こうとしている。児童養護施設で暮らす花は、18歳になった。翌春には施設を出るきまり。花の母の事件からある事件を想起してしまったし、一生懸命生きている知人を思い出した。花は名もない「金魚」をの奇跡を信じて、願いを込め「金魚」を海に流す。
「世界の丸さに乗って、いつか優しさとなって返ってくる日を信じて待とう。私はその日まで、どんな荒波が押し寄せても、恐ろしい強風が吹いても、「おかえり」と言えるようにこの世界で生きていよう。」
施設にくる子どもたちはいろんな事情を抱えている。周りの人は何ができるのかなと読みながら思った。
「ここにいるということそれ自体に頭を下げながら日々を送る。」理不尽な理由でそんな思いを抱えて生きる人が減りますように。
「日々を重ねるしかない。」
希望にも絶望にもとれる言葉。希望になるよう日々を重ねるしかない。希望になる日を重ねられるよう、周りの人が互いに励ましあうしかないのかな。児童養護施設を退所した子どもを支援する、社会的養護にはゆるやかに自立する仕組みが必要という記事を目にしたことがあったので、できることをしていきたいなと読後思った。
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淡々と、18歳の花の児童養護施設での暮らし、もうじき出て行くことへのさまざまな思い、新たに入所した晴海と自分を重ね合わせたり、母=あの人に思いをはせたり。
特別に大きな感情のうねりも事件もないけど花の達観なのか諦めなのか、静かな文章が切ない。
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児童養護施設を舞台にした小説。
主人公の花は、今年で18歳になり、高校卒業後には施設を出なくてはならない。自分の将来に対する不安や、施設で暮らさなければならなかったこれまでの人生に対する複雑な想いが、施設の子ども達やタカ兄との触れ合を通じて描かれている。
児童養護施設で暮らす子ども達は様々な事情を抱えている。いわゆる普通の家庭で育った私には、彼、彼女達のことはわからないんだと思う。何というか…わかったつもりになっているだけで、本当にはわかってない。
血の繋がった家族でも現実には理想郷のようなものではない。それでも、"家族"というのは、彼等が渇望して止まないものだ。
彼等はこの小説をどう読むだろうか?ちゃんちゃら可笑しいわ!って思うかもしれない。
それでも、ドキュメンタリーとは違って、小説として、児童養護施設の子ども達を主人公にすることに意義があると思った。この小説を読むことで、少しでも周りの理解が深まるかもしれない。関心が高まるかもしれない。ドキュメンタリーは読まない人も、小説は読むかもしれない。しかも著者が話題の方ならば尚更だ。
児童養護施設で健やかに成長できるように、巣立った後に、独り立ちできるまでの精神的、経済的な支えが得られるように。一人でも多くの人が関心を持って、少しずつでも社会が変わっていってほしいと願う。
物語については、主人公が18歳にしては少し大人過ぎると感じたが、"かわいそう"を強調しすぎない話が好感をもてた。どこかの施設で本当にありそうな
話で、そこに様々な社会問題が見え隠れする感じがとてもいい。
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小川紗良さん。俳優で、監督で、本書は同タイトルの長編初監督作のノベライズ(初小説)だそうだ。うーん、才能のある人は本当になにをやっても……。まあ、凡才のおっさんの嫉妬混じりのコメントはともかくとして(^^;)。
児童養護施設「星の子の家」で暮らす18歳の少女・花を主人公とした4作の連作短篇集だ。同じ境遇の子供たちと花の関係や、花の母親の過去など、重くなりがちな内容を不必要に暗くせずに描いていて好感がもてた。
残念ながら映画は観逃してしまったが、機会があればぜひ観てみたい。
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事情を抱えている子供が暮らす星の子の家。
親が病気になってしまった子、経済的な問題で家庭で暮らせなくなった子、身体や精神に深い傷を負った子。
花のお母さんが夏祭りで起こした事件は衝撃的だった。
小さい子を守りたいという願いをサンタさんは叶えてくれるといいなと思った。
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児童養護施設の子どもたちの話。
花は、願いが届きもしないと知っていながら、ずっと母親への恋慕と、母からの愛情というものを欲していた。十年間、ずっと。
それはまるで、外の世界を知っていながら、綺麗に管理された水槽の中でぐるぐると回るしかない金魚のように。
花以外の彼らも、ある程度ものごとがわかるように成長したとき、それでもその小さな体で、なぜ血の繋がった家族と一緒に暮らせないのか、真実を知る。いたいけに、受け止めようとする。
そしてそれでも、本心では「母親」を求めている。自分のことだけを見てくれる「本当の家族」を。
突如施設で暮らすこととなった晴海。
強気なみっちゃん。
ぴかぴかなものと空想が好きな麦と里美。
やんちゃ双子の武彦と智彦。
未熟児で生まれた2歳の源ちゃん。
みんながみんな、愛おしかった。
いたいけで、優しくて、だけどしっかりとそれぞれの芯をもっている。
「かわいそう」と思うことは、無関心で無責任だ。
みにくいアヒルの子、マッチ売りの少女、親指姫。
モチーフとして登場する絵本が、いいスパイスになっていた。どの章も素敵だった。
小川紗良さん。俳優であり映像作家である。
(正直、名前を聞いたことがある程度で、どんな俳優さんなのかは全く知らないまま読んだ。)
華やかな世界で活動しているイメージがあるのにとても繊細な小説で、この人自身にとても惹かれ、興味が湧いた。
しかも初の小説執筆らしい。すごく好みな文体だった。
今後も新刊があったらチェックしたい作家さんになった。
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家族や居場所、児童養護施設に関心を持って読んでみた。
重くりそうなテーマを暗くならずに描いてあった。
大きな事件も大きな感情の変化もなくサラッと読めたけどあらすじからみるとちょっと期待はずれ感情あり。
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図書館で借りたもの。
児童養護施設で暮らす花は、18歳の夏を迎えたが、将来への夢や希望を何ひとつ持てていない。ある日、事情を抱えた女の子・晴海が施設にやってくる。晴海の姿に、花はかつての自分を重ね合わせ…。
自身が監督した作品のノベライズ。
児童養護施設で暮らす花の心情が丁寧に描かれていた。花を通して語られる他の子供たちの様子も。
『どんなにちゃんとしようったって、初めからうまくいくわけはないんだよ。血がつながってても、つながってなくても』
っていう言葉が沁みた。子供を産む前に知りたかったな。
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児童養護施設に暮らす主人公が18歳になり、様々な事情で親と暮らせない子供たちとの関わりや成長を通して、目標を見つけ新たな生活に向かう。幸せになって欲しいなぁ、という余韻を残して終わる連作短編。1話目は児童虐待や無差別殺人など重い感じでしたが2話目以降は「みにくいアヒルの子」、「マッチ売りの少女」、「親指姫」など簡単な童話がモチーフにされて、考えさせられながらも成長が感じられる話でした。
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美しい小説体験だった。
一つひとつ選ばれた言葉はやさしく、丁寧に紡がれて、脆くも繊細で温かかった。
児童養護施設での1年で主人公や他の子供たち、そして大人たちも揉まれ、絶望しながら、一歩一歩進んでいく。確かな答えが出せなくても、それでもいい。静かな希望を感じた作品だった。
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特別養子縁組、また親と暮らせない子供たちの集まって住む家。
読み進めていくうちに主人公の花がまっすぐに育ってよかったと思えた。タカ兄が言っていた家族って日々を重ねていくしかないっていう言葉がまさに。です。
生みの親より育ての親とも思うし、家族を振り返ったときに日々の積み重ねから家族ってできていくのかなと本当に思う。
いい言葉です。読めてよかった。
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時には呪縛にもなり得る家族と言う言葉。それでもやっぱり子供達にとっては、その家族は何にも変えられない大切な場所で。とは言え、親からの愛情を十分に受けられずとも、可哀想ではなかった。施設の仲間との衝突や葛藤の中で、人として大切な物を大事に育んでいる。希望に満ちた物語。
日々を重ねて、生きていこう。
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小川糸さんの並びにあって間違えて借りた本。笑
小川紗良さんって全然知らなかったけど、俳優や監督もやっているとか。
意図していなかったのだけど、親と暮らせない子どもの話をまた読んでしまった。
主人公の花が、淡々と状況を受け入れ、でも割と前向きに家の人たちと関わって暮らしているから、そんなに悲壮感は感じない。胸が痛くなるようなエピソードは、いくつも散りばめられているのだけど。
迷いつつも前向きに生きていけそうな花の未来に、希望を感じる終わり方。