紙の本
贖いのリミット
2020/01/26 08:35
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投稿者:J.J. - この投稿者のレビュー一覧を見る
殺された元警官の捜査を進めるうちに明らかになるウィルの妻アンジーの過去、サラとの関係はどうなるのか、底知れぬ暗闇が明らかになる。
紙の本
誰も救われない物語
2020/12/15 03:15
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
原著は2016年だが、なんとも“今の時代”っぽい話であった。
痛めつけられる女性と子供、あらがう女性たち、でも暴力をふるう側の者たちもまたかつては子供だった、という誰も救われない話。
いや、カリン・スローターが書くのは基本的にそういう話だけども。
原題は“THE KEPT WOMAN”:守られた女? 守ってもらえた女?
大量の血液にまみれた惨殺死体が発見された。被害者は元警官ということで警察は色めき立つが、血痕は当人のものではなく、別の人物-女性が現場にいたことがわかる。GBIの特別捜査官ウィル・トレントは相棒のフェイス・ミッチェルとともに現場に急行するが、近くで発見された拳銃がウィルの戸籍上の妻アンジーのものだとわかり・・・。
このシリーズではウィルの関係者の身にいろいろ起こりすぎなのだが、アンジーに関しては「いつか必ずこういうことが起こる」のは約束されていたようなもの。
だから本作はシリーズのターニングポイントになるのかな、と思っていたけれど・・・『三連の殺意』などシリーズ最初の頃はアンジーにはカッコいいところもあったのに、どんどんイタくてひどい女になっていったのが悲しかったのだが、アンジーを再出発させるためにはこういう展開が必要だったのだろうか。
ウィルの恋人で検死官のサラのダメ加減も明らかになり、「完璧な人間はいない」を強く印象付ける(サラの恋愛に関するグダグダは反省材料で、いたたまれなくなるわ~)。
そして事件では「カネのためならここまでやるのか、カネにしか価値を見出せない人生ってなんだ」と思わされ・・・そう思える私は幸せなんだろうな、と感じるのがとても悲しい。
フェイスの見せ場が少なかったのが寂しい。彼女はとてもいい捜査官になっている。
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カリン・スローターを読むと、そのへんの"タフなヒロイン"が並みの人に見えるし、同じく"悪女"が、ただ小遣いをせびるだけの子供に見える。
カリン・スローターが描くのは、タフでなければ生きられない世界と、悪魔のような女たちのだ。
悪魔のような女と聞いて、多くの読者がすぐさま名を挙げるだろう、あのアンジーが本作のテーマである。
ウィル・トレント・シリーズ8巻目にしていよいよというところか。
アンジーについての印象は、人によって違う。
好きか嫌いかだけでさえ、きっと様々だ。
本作だけを読んだ人、シリーズの途中から読んだ人、そして、最初の巻『三連の殺意』から読んだ人では、印象はずいぶん異なる。
当然、すべてを読んだ人のほうが、思いは根深く、ややこしい。
私はといえば、最初はそうでもなかったが、次第に嫌いになってきて、もういっそ嫌いなほうへずっと突っ走ってほしいと、へんな応援をするようになっている。
かわいそうなのは、主人公ウィル・トレントだ。
彼は女性運がよいのか、悪いのか、最悪なのか、とにかく女性に囲まれている。
タフな女、悪魔のような女の数々から、愛情なり気遣いなりが理由ではあるのだが、さんざんに突つかれ、殴られ、跳ね飛ばされ、ピンボールのような扱いを受けっぱなしだ。
私がウィルだったらとうに死んでいるなと、読みながら何度思っただろう。
それでも最後まで立っているのだから、ウィルも実は相当タフである。
女性たちが強すぎて、そう見えにくいのが気の毒だ。
本作を読んで、アンジーに対する印象が変わったという人がいる。変わらなかった人がいる。
さて、あなたはどうだろう?
シリーズの順番は以下のとおり。
どれから開いたとしても、『三連の殺意』はやはり読んでほしいと思う。
それは、アンジーだけでなく、主人公ウィル・トレントをより知ってほしいからでもある。
『三連の殺意』
『砕かれた少女』
『ハンティング』 上下
『サイレント』 上下
『血のペナルティ』
『罪人のカルマ』
『ブラック&ホワイト』
『贖いのリミット 』
『破滅のループ』
『ザ・ゴールド』(番外編 リー・チャイルドとの共著 電子ブックのみ 『贖いのリミット』の冒頭も読める)
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「ウィル・トレント」シリーズの八作目。このシリーズは毎回主要人物の誰かにスポットが当てられてきたけれど今作はアンジー。一番読みたかった人物。ウィルとの夫婦関係の形の歪さ、憎しみと愛情。元警官の惨殺死体と残された別の人物の大量の血液。残酷な描写。事件の展開、ウィルたちの捜査を読むだけで面白いのに、中盤からアンジーの章が挟まりそこからラストまでが圧巻で一気読み。ウィルとアンジーのこれまでとこれからとウィルとサラのこれから。今回の事件の影響が次作以降どうなるのかも含めてとても楽しみ。
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さて自分としては珍しく順不同で最新作だけ齧っている捜査官ウィル・トレント・シリーズ。『ブラック&ホワイト』に継ぐシリーズ第8作は、ウィルの行方不明の妻であり過酷な過去をウィルが共有してきたらしいアンジーの事件。
男性捜査官ウィルのシリーズとは言え、実際は彼を取り巻く個性派女性たちが持ち回り主役となるこのシリーズ。女性らしい感性と容赦のなさで惨憺たる殺人現場を軸に捜査と葛藤と闘いが始まる。心理戦と、暗躍する女たちと、ウィルを獲り合うサラとアンジーというデリケートな恋愛模様にも深みというだけではない捻じれのようなものを感じさせるこの作者独特の世界観を感じる。
事件現場はプロバスケットの花形選手に集まるマネー軍団の企画する新しい城の工事現場で幕を開ける。血みどろの工事中巨大ビルで発見された元刑事の死体。さらに刑事を取り巻く夥しい血液は、行方不明となっているウィルの妻アンジーのもの。
現場捜査だけで一冊の小説の厚みになるほど、時が進まないのが、あたかもパトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズみたいで、アメリカ女性作家のパターンなのかな、と感じる。とりわけ女対女のウィルの取り合いに関する心理戦、これに巻き込まれるウィルと彼の過去、と言ったところで、ストレートな時間軸の物語ではなく、作者の描こうとしているのは、彼らの棲む地軸や時間軸における世界観とその深みであるかに思われる。
家族、血縁、そして過去。すべてはウィルやアンジーの置かれた虐待児童という過去に根差しつつ、そういう世界悪を造り出している支配階級、資本家ども、そして心を病んで暴力衝動に体や心を毒されたスポーツ界のスターたち等々、アメリカの陰影を抉り出そうという試みが見える。
そして前半と後半で物語がでんぐり返りを見せるのだが、事の真相はさらに深く、昨今ではフレンチ逆転ミステリーのピエール・ルメートルを思わせる仕掛けで最後には読者を驚かせてしまう。やや強引な嫌いはあるものの、犯罪現場を料理してデザインしてメディアまでも化かしてしまう荒業プロットには正直度肝を抜かれた。
残酷な暴力シーンや、有象無象のあまりよろしくない人物たちの人間関係図が描きにくいところが抵抗となる読み物ではあるが、どこにも作者の謎の伏線が仕込まれている超級のミステリーであることは確かである。重層構造で、なおかつとてもボリューミーな700ページという重量級エンターテインメントをご賞味あれ。
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ウィル・トレントシリーズ8作目
クラブ建設中の敷地内で、元警官の死体が発見される。現場には大量の血が流れていた。調べると血は死んでいた警官のものではなく、主人公ウィルの妻アンジーのものだとわかり…
ウィルのシリーズと名乗っておきながら最初の数作以降は、ウィルは傍に居て
事件を捜査するのがメインで、女達の苦悩や闘いに重点が置かれる。(ウィルも壮絶な過去を抱えているけれど)
鋼鉄の鬼上司アマンダ、タフ・ママのフェイス、などの強い女性達がウジャウジャと出てきたのですが、毎回出番は少ないものの圧倒的な存在感を放っていたアンジーに関する回です。
売春の潜入捜査を行う警察官であり、誰とでも寝る女、全身をフェロモンを纏った武器として利用して様々なものを手に入れてきた彼女…ウィルと施設で出会い、傷つく互いの姿を見てきた二人。
気まぐれの様に結婚したもののアンジーはほとんど家におらず暗躍、たまにふらっと家に帰ってきては事件解決の重要な手がかりを知っていたり、ウィルの恋人であるサラへの嫌がらせに熱を上げていました。
「罪人のカルマ」でも事が起きたように、ウィルを支配する一方で執着し苦しむ姿がアンジーなりの愛の示し方なのでしょうか…これまではウィル、サラの視点で見ていた嫌なアンジー像を超えて、芯に抱えている孤独の深さと想いの強さが見えたのが良かったです。このやり方では幸せにはなれないんだろうな…
……読むのしんどいシリーズですね。
読みたくないくらいピリピリムードになるんですが読んでしまう。
サラの考え方も、なんかちょっと危険信号
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バスケットのスター選手マーカス・リッピーが起こしたレイプ事件を担当する捜査官ウィル・トレント。金と弁護士の力で立件できなかった。その選手が経営するクラブで遺体が発見された。元警官のデール・ハーディングだった。現場に大量の血液が流れており、ウィルの別居中の妻アンジーのものだと考えられた・・・
うーむ。重たいのにスピーディーな展開。ある巧妙な策略が終盤に明らかになるのだけれど、これ込みでシリーズナンバー1。
後半はアンジーがいったい何をしていたのかが時間を巻き戻して明らかになる。前半も面白いけれど、後半はさらに面白くなる。そういう意味では迷惑な女アンジーの物語だと言える。
しかし、アンジーではなくサラと付き合っているウィルの苦悩。サラの苦悩。こちらもかなり読ませる。
「母親のいない子供にかけられた呪いね。わたしたちは、自分が傷つける相手に慰めてもらおうとするんだわ」
※以下自分用ネタバレ
別の選手ルーベンの妻ジョーはアンジーが捨てた娘。夫から暴力を振るわれている。ジョーを逃すために、アンジーは死んだ振りをし、ジョーも死んだことにする。
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最初に言いたいのがこれシリーズ物だったのかーーと言う事。
知らずにこの本から読んでしまった…が、
それを抜きにしても凄い面白かった!!
むしろちゃんと最初から絶対読みたいと思わせられる。
シリーズ物と知らずこの本から読んでも全然大丈夫。
中盤からの引き込み度具合が凄い。
物事には常に裏と表がある。あいつは悪い奴だから悪だ!と思っても、悪だと思ってる側の視点からしてみればそこには深い理由があったりする。
善サイドと思わせられた視点から読み進め、中盤になって視点が代わり悪サイドから物事を見れば悪だと思っていた人の事もなんだか憎めなくなる…
ミステリーの展開も勿論だけど、人間関係の面でもとても面白かった。
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先に読んじゃった、シリーズの中で最新となる「破滅のループ」の前作ですね。元妻といってるけど、まだ離婚成立してないんじゃん。複雑な関係ですよ。著者の取材力には舌を巻きますね。NBAスター選手をこのように登場させることに驚かされます。全く○○野郎です。彼らを取り巻くビジネスや人間たちがリアルで唸らされます。そして、読むたびに思うのが、登場する女性たちの凄さですよ。悪い女はとことん悪くてむしろ清々しいくらい。男たちが右往左往させられて、ざまあみろと言いたくなってしまいます。構成もひねりがあって、アンジーを見る目も後半で変わりました。作者の手腕としか言いようがありません。あんなラストみせてくれたんじゃあ、これからも目が離せないじゃないですか!
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カリン・スローター、初読。確かに面白い!一章ワンシーン、さらには最後の1、2行のセリフで次への含みを持たせる展開等々、あきさせない。
ただやや長く感じる事とアンジーがわが娘や孫に対して、これまでの行状からは想像できない位の愛着を見せるのが解せないのは初読ゆえのことだろうか…。
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ダヴィンチの広告欄とか特集で何度か見かけたことがあり、見栄えのする著者近影も相俟って、ひそかに気にはなっていたもの。今回、本の雑誌年間ランキング入賞で、いよいよ手に取ってみた次第。シリーズものを途中から読んで大丈夫か?とも思ったけど、杞憂でした。どんでん返しな展開も含め、本作だけでも十分に楽しめる内容でした。積読状態の本が多過ぎて難しそうだけど、機会があれば他の諸作も読んでみたい。
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ああ、アンジー
あなたにも義があり
あなたにも信があった
わかりにくいし
わかりたいとも思わないけど
よくぞここまでの話が・・・
読むだけでも疲れるのに
凄い
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ウィル・トレントシリーズの第八作、初めて手に取った著者の本だが、シリーズ最高傑作との評判はさすが。
序盤は重い犯罪と展開が辛かったが、最初の章のラストで登場したアンジーのセリフから一転!続く章では、これまでのシリーズと本作の最初の章でも、イヤなキャラだったウィルの別居中の妻、アンジーが主役。解説にもある通り、立場を変えて同じストーリーを見ると、全く別の側面が。
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図書館の本 読了
内容(「BOOK」データベースより)
建設現場で元警官の惨殺死体が発見された。首にはドアノブの軸が突き刺さり、一面血の海だったが、鑑識の結果、大量出血したのは被害者でなく現場から姿を消した女だと判明する。特別捜査官ウィルは車の側に残された銃が別居中の妻アンジーのものと知り動揺する。現場となった建物の所有者は揉み消されたレイプ事件の容疑者。やがて事件の背後に恐るべき闇が浮かびあがり―「ウィル・トレント」シリーズ。
過去がどうあろうと、アンジーがウィルを支配する方法は間違っている。
でもアンジーにはアンジーの論理があったというのはこの作品でよくわかった。
でもね、ウィルの傷が和らぐことはないのよね。
ウィルはサラと幸せになってほしい。
ストーカーまがいのことをするアンジーを許せないけれども、そこには確実に愛情も存在しているから複雑。
The kept woman by Karin Slaughter
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アンジー回
アンジーが苦手なのでところどころ読むのが退屈だった。それでもしつこくしつこくアンジーの内面の描写を見ているとだんだん同情してきてしまう。
カリンスローターの著書をいくつも読んでいるけれど好きな女性の登場人物が1人もいない。みんな性格がひねくれていて、かといって個性的でもない。基本的な女性の弱さと強さをもっているだけ。好きになれるひとがいない。男性は興味深いひとが多いのになー。
今作は文字を突然太くしている部分がある。引用やなんらかの記述の描写ではなくて、ほんと突然。なんの意図かわからないけど、子供向けのホラー本っぽくなって冷めるからやめてほしい。
とりあえず読み終えられてよかった。
ウィルトレントが好きなのでまた次も読もうと思う。