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- カテゴリ:一般
- 発行年月:1994.9
- 出版社: みすず書房
- サイズ:20cm/428,12p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-622-03648-7
- 国内送料無料
紙の本
過去と未来の間 政治思想への8試論
著者 ハンナ・アーレント (著),引田 隆也 (共訳),齋藤 純一 (共訳)
歴史や伝統、権威と自由のありかたを根源から思考する一方で、現実の教育や大衆文化について、カントをもちだしながら描く、見事な筆さばき。20世紀の時代と哲学と政治の交差点にい...
過去と未来の間 政治思想への8試論
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商品説明
歴史や伝統、権威と自由のありかたを根源から思考する一方で、現実の教育や大衆文化について、カントをもちだしながら描く、見事な筆さばき。20世紀の時代と哲学と政治の交差点にいた一ユダヤ人女性のすべてがある書。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ハンナ・アーレント
- 略歴
- 〈ハンナ・アーレント〉1906〜1975。ドイツ、リンデン生まれ。ハイデルベルク大学でヤスパースに学ぶ。ナチス政権成立後、パリに亡命。のちアメリカ亡命、多くの大学で客員教授を勤める。
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紙の本
アレント的精神の強靭さと持続性
2001/02/27 22:16
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハンナ・アレントの文章には“こく”がある。といっても、私は邦訳和文でしか知らないのだが、それにしても濃厚だ。一文一文に長い思索の痕が重層的に折り畳まれていて、透かし読みや流し読みを許さない。それでいて文章としての論理と結構が緻密に設えられていて、時間をかけてそのリズムに馴染んでくると、そこから途方もなく強靱で雄大でそれでいながら繊細かつのびやかな思索の息づかいが洩れてくる。一度この経験を味わうと、ちょっと離れられなくなる。
私の場合、アレントの思想や学的営為の内容よりも、まず叙述と思索の生理のようなものに惹かれてしまう。たとえば本書の、ローマ的精神がもつ強靭さと持続性について述べたくだりに次の文章が出てくる。私には、そこでいわれる「創設の原理」をアレント自身の文章と思索にあてはめることができるのではないかと思える。少なくとも「ローマ的精神がもつ並外れた強靭さと持続性」に匹敵するものを持たない者には、本書のような書物は書けないだろう。
《共和制の開始から実質的には帝制の終わりにいたるまでローマの政治の中心には、ひとたび何かが創設されるとそれは以後すべての世代を拘束するという意味で、創設の神聖さに対する確信が揺らぐことなく貫かれていた。政治に携わるということは、何よりもまず、ローマの都を保ち続けることを意味した。それゆえ、ローマ人は植民地に移り住むにあたって、ギリシア人のように自らの母市たるポリスをあらためてその地に創設できなかった。ローマ人が為しえたのは、起源の創設に付け加えることであり、こうしてイタリア全体、挙句の果ては西洋世界全体が、さながら全世界がローマの後背地以外の何物でもないかのように、ローマを中心として統一され治められた。》
《このローマ的精神がもつ並外れた強靭さと持続性──あるいは政治体の創造にあたって創設の原理に寄せられたただならぬ信頼──は、ローマ帝国が衰退し、ローマの政治的・精神的遺産がキリスト教会に引き渡されたとき決定的な試練にさらされ、そして、その強靭さと持続性を身をもって示した。ローマの遺産の継承というおよそ現実的で世俗的な課題に直面することによって、教会はきわめて「ローマ的」となり、政治的事柄に関してすっかりローマ的思考に染まってしまったため、キリストの死と復活は一つの新しい創設の礎とされ、その上に途方もない耐久性をもつ新たな人間の制度が樹立されることになった。》