紙の本
よかったです。
2016/11/08 15:06
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:s.k. - この投稿者のレビュー一覧を見る
TEDのスピーチを見てから、興味も持ちずっと読みたいよ思っていた本でした。期待を裏切られない、いい本でした。
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ためしにAmazonで「記憶力」、「記憶術」などと検索してみて欲しい。『○○で憶える、ラクラク記憶術』といった類の本が、溢れんばかりに表示される。もちろんその効能は、玉石混交なわけであるが、多くのビジネスマンや学生にとって、記憶する能力へのニーズがいかに高いかということを示している。
本書もそのような記憶力をテーマにした一冊なのだが、いわゆるマニュアル本、自己啓発本とは、一線を画す内容である。著者は『ナショナル・ジオグラフィック』などでも執筆するフリージャーナリスト。取材ライターとして赴いた全米記憶力選手権で記憶力に興味を持ち、一年後の大会には自身が出場者としてエントリー、ついにはチャンピオンになってしまう。本書はその過程を描いた、実験ドキュメンタリー。ミイラ取りがミイラになるという典型のような話である。
◆本書の目次
第1章 世界で一番頭がいい人間を探すのは難しい
第2章 記憶力のよすぎる人間
第3章 熟達化のプロセスから学ぶ
第4章 世界で一番忘れっぽい人間
第5章 記憶の宮殿
第6章 詩を憶える
第7章 記憶の終焉
第8章 プラト―状態
第9章 才能ある10分の1
第10章 私たちの中の小さなレインマン
第11章 全米記憶力選手権
「いいかい、平均的な記憶力でも、正しく使えば驚くほどの力を発揮するんだ」そんな台詞に魅了され、著者はイギリスの若きグランド・マスターの教えを受けることになる。その教えのベースにあるのは、紀元前五世紀、天井が落ちてきたテッサリアの大宴会場のがれきの中にいた詩人、ケオスのシモニデスによって始まったものである。シモニデスは目を閉じて、記憶の中で崩壊した建物を再び組み立て、どの客人がどこに座っていたかを思い出すことが出来たという。このシンプルな発見から、いわゆる記憶術の基盤となるテクニックが編み出されたのだ。
著者のトレーニングも、シモニデスのやり方を正常進化させた「記憶の宮殿」という方式である。自分が憶えなければならないTo-Doリストを、自分のもっている素晴らしい空間記憶を利用し、各々の場所にイメージとして置いていくのだ。それが人の名前や数字であったとしても、同様である。要は、記憶に残りにくい情報を、心が惹きつけられる視覚映像に変換して、頭の中の宮殿に配置していくということなのだ。このようなトレーニングを積んだ人にとっては、仮に思い出せないことがあったとしたら、それは記憶の不備ではなく、認知の不備に原因があるということになる。例えば、卵という言葉を思い出せなかった時には、白い壁のところに置いたために、背景に溶け込んでしまって見落としたなどということが、本当にあるらしい。
そして、このような記述を目にして疑問に思うのが、この種の記憶術が、なぜ現在では主流でなくなってしまったのかということである。はるか昔、記憶はあらゆる文化の源であったのだ。人類が洞窟の壁に頭の中のことを描き残すようになってから様相が変わり始め、印刷機の登場により事態は急変する。そして、現在のクラウド化によって、記憶を外部に預けるということが、手の平の上で、瞬く間に出来るようになったというのはご存じの通りだ。その過程を経る中で、博学であるということは、内部に情報を保有しているということから、外部記憶という迷宮のどこで情報を手に入れられるか知っているということに変化していったのである。
本書を通して著者が投げかけているのも、現代における記憶力の持つ意味、そのものである。その問いに対する著者の答えは、「私たちの実態は、記憶のネットワークである」というものだ。面白いものを見つける、複数の概念を結びつける、新しいアイデアを生み出す、文化を伝える、そういった行為において記憶力は必要条件であり、基盤となるものでもあるという。記憶と想像は、コインの表と裏のようなものなのだ。この主張、著者の実体験が伴っているだけに説得力がある。
一方でこの問いを、外部記憶としてのWebサービスが今後どのようにあるべきかという問題に置きかえて考えても、示唆に富む内容となる。能動的、線形的にアクセスする現在のあり方から、溢れるような受動性と無秩序なアクセスという、実際の記憶に近いあり方へ変化させるのだ。この変化が創発的な思索を生み出すようになれば、外部記憶は新たなブレークスルーの時を迎えることができるのかもしれない。
表題には「ごく平凡な記憶力の私が」とあるが、著者がジャーナリストとして有能であるということに疑う余地はない。本書には、『ザ・マインドマップ』でおなじみのトニー・ブザンや、『僕には数字が風景に見える』のダニエル・タメットといった著名人も登場するのだが、彼らとのエピソードや、その人物評を読むだけで、それがよく分かる。
記憶力のメカニズムと歴史的背景の解説、全米記憶力選手権への挑戦、記憶力の意味を投げかける論考と、扱っている範囲は実に幅広く、一冊で三冊分くらいのオトク感があると思う。忘れることなく、ぜひ手に取っていただきたい一冊である。
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記憶術というと、「覚えたいものごとを映像化しろ」とか「別のものとの連想で覚えろ」などが良く言われるが、本書で出てくる記憶術もそういった類のものである。ただ、予想を裏切ったのは、僕は今までそういった記憶術というものは、単なるコツや心がけのようなものだと思っていたが、そうではなく、著者のような長時間の訓練によって、鍛えられる能力であるという点だ。
この本には、筆者がいわゆる「共感覚」による記憶術を訓練によって鍛え、全米記憶力チャンピオンにまで上り詰めた試行錯誤の過程が細かに書かれている。
例えば、「プラトー状態」についての内容は、僕にとって新しい発見だった。プラトー状態というのは、何かを訓練する過程で、そこそこ上達すると、脳が意識的に論理思考している状態を脱して、自動操縦モードに移ってしまうという状態である。この状態になると、そこで上達は止まってしまう。本書ではこの状態を回避するための方法として、「意識的に失敗してみる」という方法を提案している。同じレベルのトレージングを続けても、上達は止まってしまう。常に「自分はプラトー状態になってないか」を自問し、難易度をコントロールすることが重要と説いている。
このような、筆者の経験から示唆される実践的なチップスは、記憶術以外でも、何かを訓練する上で有益なものだと思う。
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記憶力選手権に興味をもった記者が実際に選手となり、全米1位になるまでのストーリー。実話で主人公が一人称で語っていく形式の物語だけど、記憶についての心理学な考察が入るので面白かった。
記憶術についての基礎はキケロの時代から基本は変わっていないというのは驚きだな。記憶の宮殿という概念は聞いたことあったけどこう使えるのか。
記憶の秘訣はある程度の塊で印象的(下劣、魅力的、非日常的)なイメージにし、、思い出しやすいストーリーを作るとよさそう。
勝負の秘訣は洋題の通り、Moonwalking with Einstein,♠4♡K♦3。映画化が楽しみだ。
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これは、記憶術ハウツー本ではない。
筆者が、記憶術と出会い全米チャンピオンになるまでの道程を軸に、記憶について様々な角度から語りつくした本である。
特に、、筆者が「プラトー状態」(いわゆる伸び悩み、またはスランプ)を克服したプロセスは興味深い。「プラトー状態にならないための最善の策。それは実際に失敗してみること」だとの教えは記憶のみならずあらゆる分野に応用可能だろう。
ハウツー本ではないが、私たちの潜在能力を開花させるための示唆を与えてくれる価値のある一冊である。
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記憶力のノウハウ本と間違うけど、そうではないす。確かに本文中に記憶術の歴史や記憶術の具体的事例が掲げられています。それは、著者がそれらを駆使し、学び、練習して全米一の記憶力チャンピオンになったからです。著者が、自分の経験だけでなく、サバン症候群の記憶の天才や記憶の著名な研究者に直接取材して、記憶がその人を作っている、記憶の重要性を示しているところに、何でも機械のメモリーに頼る現代人へ警告する所にこの本の意義があります。
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アイ・エス・エス・インスティテュート翻訳者養成コースの修了生で、現在は医薬関連の翻訳を中心に活躍されている梶浦真美さんによる翻訳作品です。
原題は、"Moonwalking with Einstein - The Art and Science of Remembering Everything" (アインシュタインとムーンウォークする)で、ジャーナリストのジョシュア・フォア氏が、古代ギリシャで知識人の必須のツールであった「記憶術」と、最先端の脳科学や一流のプロたちの技術習得の秘訣を学び、全米記憶力選手権で優勝するまでの1年を書いた話題作です。ジョシュア・フォア氏のデビュー作となる本書は、2011年3月にアメリカで発売後、たちまちベストセラーとなりました。
なぜ熟練したウェイターは客の注文をメモしないで覚えていられるのか?世界的なヴァイオリニストはなぜ、初めてみるスコア(総譜)をいとも簡単に記憶してしまうのか?ロンドンのタクシー・ドライバーはどうやってロンドン中の道を覚えるのか?
「驚異的な記憶力は生まれるのではなく作られるもの」という考え方にたった研究から生まれたメソッドを利用して、まさしく驚異的な記憶力を手に入れられたら、外国語の単語も文章も楽に覚えられるはず。もちろん、本書の記憶術についての説明や、著者が記憶術を習得して記憶力を向上させる過程は読みごたえがありますが、本書の魅力はそれだけにとどまりません。
IT技術の発達で、本来どれだけの記憶をもっているかが知性のバロメーターのひとつだった時代の価値観と異なり、どれだけの外部記憶を活用できるかが重要視される昨今、本書はもう一度「記憶力」の意味を問い直してみるよいきっかけを与えてくれます。
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ここ3カ月で一番良かった本です。
ブログに詳しく感想を書いています。
http://ameblo.jp/bule801/entry-11034800876.html
http://ameblo.jp/bule801/entry-11040761619.html
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シモニデスが生み出した暗記術・・・それは場所法と呼ばれるものであった。そして、それが中世ヨーロッパの基本的な学問術でもあった。
以上のことは最近勉強を始めた「修辞学」の概説で学んだ。修辞学においても暗記というものは重要な技術のひとつであった。
その歴史から概観を始めている点に好感がもてる本。タイトルは「あ、ばったもんくせー」って感じだけど、本屋で手にとってざっくりと目を通したとき、クインティリアヌスとかシモニデスとかきちんと語っていそうなので購入。そして、一気に読んだ。
マインドマップで有名なトニー・ブザンも「暗記術」の復活に貢献した人物である。そして、それは彼が中世ヨーロッパに伝わる「暗記術」に根本をおいて生み出したことも説明されている。そして、それを補強するためにマインドマップも生み出されたのだ。
そのようなつながりも面白い。ジャーナリスティックな視点を失っていない。サヴァン症候群についてもしっかりと取材している。なので、人間の「記憶」と「記憶術」の歴史について、そして、学校の教育システムについても概観できる。
よい本です。
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記憶の宮殿を用意する。そこに覚えたいことを配置する。
陳述記憶と非陳述記憶。僕が小学生のとき覚えた円周率は、非陳述記憶だったことがわかった。陳述側で再チャレンジ。
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これさえ読めば今から司法試験勉強して39歳の印刷会社社長兼弁護士って新たなステージに上れるのではと欲出しまるで読み始めましたが、結論、まあ何と言うか、ん~、やっぱり今の仕事一本でがんばりますって感じです。
『記憶の宮殿』ってのがキーワードなんですが、そう、『宮殿』なんですよ、『宮殿』。自分の頭に中に宮殿を作って記憶したものをそこに放り込んでおく、そして必要な時にその宮殿へ行き必要な記憶を取りだす、、、全て自分の頭に中での動きですよ、これ。ん~なもん、できるかボケ!って、まあ冗談で、確かに言ってる事は分かるんです。ただ、このやり方は受験勉強にはあまり使えないかな、いや、使えない事はないんですが、私自身『宮殿』は持っていなかったんですけど、一つの方法論としてはこのやり方を使っていたなあとプチ実感^^
で、その『記憶の宮殿』内に記憶したい物を格納する場合には、その場所でそういった濃密なイメージを作り、今までに見た事がない、印象に残る情景として描く、そのイメージの描き方は、下品な発想が役に立ち、進化の過程で私達の脳はジョークとセックスの二つの事柄をとりわけ面白く感じ、記憶に残すようにプログラミングされているんだと、、、つまり、日本史の年号を覚えるには”下ネタ”が最高っつーことなんですよ、どうですか皆さん!!
ですから私もここでは言えないくらいの恥ずかしいゴロ合わせで年号を覚えたからこそ、今があると思ってるんですが、それプラス馬鹿デカイ『記憶の宮殿』を自分の頭の中に作って上手く格納する事が出来ていれば、こんなとこでブックレビュー書いている暇はなかったんですよ!奥さん!
因みに宮殿と言いながら、大げさに考えず自分の家でいいんですよ。例えばこの本にもあったのですが、15項目のまとまりのない物を覚える時に、自分の玄関にAがあるのをまずイメージし、扉を開けるとBがぶら下がっているのをまたイメージし、普段見慣れた家具などを利用してそこに記憶したい物に下品な情景をプラスして当て嵌めて行くって感じで15項目覚えちゃうんですよね~意外と出来ますよお前ら。
結局、作者が訴えたかった事は記憶とはテクニックであって、練習によって”記憶術”はアップするが、それは”記憶力コンテスト”用であって実用性はないと言うております。ん~残念ですね~俺涙目wwwwww
って、注意しなければならないのは、この本はハウツー本でなく、作者さんの実話を元に記憶に関するオモロイ人などを紹介しながら、淡々と優勝までの道程を語り継ぐ内容ですので、あまり期待しない方がよろしいかと、、、
という事で、未だに人の名前を覚えるのが苦手な私は、これから出会う人達に対してはこっそり下品なイメージを作って勝手に記憶する為に舐めるように女性を見ますが、そこんとこ宜しくお願い致します。
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記憶が人格を作るとは至言。
映画化も予定されているらしいこの本。ドキュメンタリーとして楽しめる。タイトルは原題に戻すべき。Moon walking with Einstein。
自信が取材対象の記憶の知的競技者となり全米チャンピオンになるまでを、三年書けてかかれただけある。著者と一緒に一年間の旅を終えたような気分にさせる。
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第1章 世界で一番頭がいい人間を捜すのは難しい
第2章 記憶力のよすぎる人間
第3章 熟達化のプロセスから学ぶ
第4章 世界で一番忘れっぽい人間
第5章 記憶の宮殿
第6章 詩を覚える
第7章 記憶の終焉
第8章 プラトー状態
第9章 才能ある10分の1
第10章 私たちの中の小さなレインマン
第11章 全米記憶力選手権
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若いジャーナリストの実践ジャーナリズムだけに、やや散漫なイメージはあるけれど、エリクソンの熟達研究の話が想定外のところで紹介されていて勉強になりました。
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ジャーナリストが全米記憶力チャンピオンになるまでの物語。その中には、記憶のテクニックがいくつか紹介されている。この本を物語として楽しむか、記憶術を学ぶ啓発本ととらえるかは読者次第だと思う。私は、後者のつもりで読んでいたので、物語の部分は少々不要だった。そういう方は、5章と8章だけ読んでもいいと思う。私も記憶の宮殿を用意しておこうと思う。★4つとしたいところだけど、5,8章以外は読むことないだろうから厳しめに★3つ。