紙の本
多くの人に読んでもらいたい
2022/11/06 20:12
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投稿者:けんけん - この投稿者のレビュー一覧を見る
世間を俯瞰することはなかなか難しいが、それをやってのけた1冊。筆者自身の体験や感性を、多様な参考文献が支えており、偏屈な私でも「確かに・・・」と思うことの連続だった。
我々が住みやすい街にするためにどれだけのコストを払っているのか、社会に適合できない人がだめ、悪いのではなく、適合する人間を選別する社会に問題があるのではないか。などなど様々なことを考えさせられた。
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本書の長いタイトルにある通り、著者は現代日本を、健康的で、清潔で、秩序維持も図られている、そのような社会が相当程度実現した時代と捉えている。
著者は、昭和の時代と令和の時代の対比をラフスケッチで描きながら、何が、どのように変わってきたかを説いていく。
はみ出しっ子がADHDやASDと診断され、医療や福祉のサポートの対象となってくる、喫煙がかつては格好良かったのに、今では忌み嫌われるようになってしまうなど、健康が何よりもの価値とされる、子育ては地域の中で行われていたし、なにより子供に寛容だったのに、今では子供が悪いことや迷惑をかけないかに心配で、子育てがリスクに感じられるようになってきたことなどなど、私たちは一見快適な社会に暮らしていると思っているが、それは、誰にとっての、どのような条件の下でのものなのかを、著者は具体的に明らかにしていく。
かつてソフトな管理ということが言われた時代があったが、今やインターネットやSNSで、私たちはいつ、誰とでもつながれる自由を得たように思える一方、プラットフォームに制約されている。
橋の下で寝る自由が無くなってしまったことを、どう考えるべきなのか、具体的な方向性が示されている訳ではないが、現代社会を考える上で、示唆に富む一冊だと思う。
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・元々ブログをよく読んでおり賛同できる意見が多かったのと参考文献の多さと面白さに興味が出たので購入。最近読んだ学術系の本よりもより共感しやすい。
・社会が健康や正しいとする価値観に向かってあらゆる行動が環境、規則の両面から方向付けされ、そこから外れた生活ができなくなっている、閉塞感について書いた本。
医療や行政が現代の価値観に沿った生活ができることを目指しているのは単純にあるべきサービスで歓迎していたけれど、そうした価値観の再生産に寄与している、いうのは納得。ここは筆者の専門領域なのでもっと掘り下げて読んでみたかった。健康が純粋な自然科学の世界を超えて今では社会的に優越した個人を顕示する手段となっている、というのも、健康でマウンティングしてくる人種をよく見ているので実感できる。あれは快活さを善とする価値観とも相まって社会でのランク付けや出世に効いてきてると思う。現代の価値観を突き詰めれば出産育児は選択できないというのも深い実感がある。
・一方で昭和を美化しすぎているように見える。昭和が多様な生き方を許容していたのかは三十代で年配者層の営業ノリで疲弊した自分としてはどうにも実感しがたい。個人主義が欧米と比べて社会に根付く前に社会制度だけ出来上がってしまった事を一因としているが、そこも欧米との比較待ち。
・これに何か対策を示しているわけではないけれど、生きづらさを個人の問題に矮小化せず社会に対して問題提起をしていく必要があるのでは、という最終章のまとめには前半の観点から深く納得できた。
・『いかにして民主主義は失われていくのか』を大きく参考にした、と紹介されていたので、そちらを読んでから本書を読んでみたのだが、考察の射程を新自由主義から社会の多様な秩序に広げておりかつ生活で実感できるさまざまな事例が散りばめられており(*)、視野の広さと落とし込み具合に感嘆した。前述の参考書籍を読んだ時には自分にはこんなに違う観点からは考えられなかった。中身の是非は置いておいてもそれだけで発見だった。
(*)政治思想の学術書とブロガーとしての社会学的な意見、という大きな違いがあり勿論どちらの本が良いとかいう話では無い(前者が個人的につまらなかったのは事実だが)
・ただこのラノベみたいなタイトルはどうにかならんかったのか、、妻にそんなタイトルの本買って恥ずかしくならない?とか言われた泣。いえ、内容に沿っている時点でタイトル詐欺の本よりはましです。
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現代では、社会に参加して活躍するために必要なコミュニケーション力などのスペックが、数10年前に比べても急激に高度になってきており、そのために、生得的にスペックの低い人は、社会に参加できず、また、日本の、特に東京などの都会では、社会構造や物理的な空間設計などにより、かつてのように、社会からドロップ・アウトして生きる余地も狭まってきており、社会福祉に組み込まれる以外の選択肢は極めて限られている。というのが、主な主張。
直感的には、そうかな、とも思わせるのだが、肝心な根拠があまり確かではない。
数値的な分析が難しい内容なので、新規の研究に基づくデータの提出が困難なのは、致し方ないかもしれないが、もうちょっと客観的なエビデンスがほしいと思った。特に、SNSの影響に関しては、著者の思い込みに基づく記述が目立つように思われる。
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今の生活に感じる違和感を、歴史、社会史などを交えながら詳細に紐解いていく内容。感覚的に感じていた事に光が当たり、ハッキリとしていくような感覚。
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学生時代に(近代史で)よく読んだポストモダン本だなあと思いつつ、この切り口が現代日本にここまで当て嵌まるかと、前半は膝を打ちながら読んだ。
しかし後半の衛生の章に差し掛かり、外見やサブカルチャーがこんがらがってくる辺りから首を傾げる所が…
かわいい最強説の様な話は眉唾もので、フェミニズム/ジェンダー論的な切り口から再検証が必要なのではと感じた。
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普段の生活の中で、子育てを通じて、ここ15年くらい息苦しさを感じていたものの正体を、ハッキリと体系的に自覚させてくれた。
マイノリティの視点で、今の社会への気付きを与えてくれるが、では自分はこれからどう生きていきたいと考えているのか、あらためて考える機会となった。違和感に蓋をして秩序ある社会の恩恵に浴していくのか、不自由さを正面から捉えて声を上げていきたいのか、しばらく答えはでない気がする。
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なかなかに尖ったタイトルの本書だが、題名から既に近頃考えていた問いに対して1つの指針であったと感じたため、間髪入れずに購入。精神科医の書ということで、個人的には身近に感じながら読むことができた。
清潔や健康といった価値観が無条件に良いものとされ、それが窮屈感に繋がっているという論には納得だった。都内住宅街ではまさにそうなのだろう。私が住んでいる郊外にも10年前に比べて随分と街が綺麗になったように感じる。
だが、この本は問いを提示しただけであり、その経過を観察しつつ私たちがどう行動していくかは自分自身に問わねばならない。
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今の日本人は世の中の秩序を重んじるばかり、子供を産み育てるということを、究極のリスクファクターと捉えるようになってしまった。
子供は社会のマナーや常識を身につけるまでは、人様に迷惑をかけるというリスクを持つ。怪我をしたり病気になるリスクをもつ。落伍者や犯罪者に育つというリスクを持つ。最も秩序から離れた存在だ。
個人の「不快にならない」という権利が強調されすぎて、今の世の中は秩序から外れた人間を受け入れる要素は持っていない。もちろん子供だけに留まらず、所謂「社会不適合者」も受け入れようとはしない。
かつての日本は、ちょっとばかり不潔でも、鈍臭くても、なんやかんや社会に居場所はあったはずだ。
だからといって人権の軽視を良しとしたり、昭和の共同体社会へ回帰することを求めるのは短絡的すぎる。現代人を昭和の社会通念に放り込んだらたちまち心が折れるだろう。我々はある意味この息苦しい秩序に助けられてもいる。
秩序にがんじがらめにされた社会の閉塞感を打ち破るには、他人の迷惑を許し、主張を受け入れる度量を持ったうえで、自分の迷惑を許してもらい、主張を聞いてもらうことが肝要だと思う。
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「つまり、現代社会の多様性や社会参加は、清潔で行儀が良く、落ち着きがあってコミュニケーション能力があり、効率的かつ持続的に経済活動ができる自立した個人を基本としているのではないか。」
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主張には概ね同意するのに今の私にはあまり響かなかった。あんまり知的興奮がやって来なかった。
私が中国オモロイ!大陸にいると体の底から生き生きする!と思っているのは、中国がまだ「健康的で清潔で道徳的で秩序ある社会」ではないため、人々がまだ「より敏感、より不安、より不寛容」ではないから。気を付けなければいけないことが日本社会より圧倒的に少ないから。であることは確か。
またいつか読み返したい。
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現代において当たり前のものとされ、もはや個々人に内面化されてしまった様々な通念が、果たして本当に所与のものであり、逃れられないものなのか。
読後は価値観がアップデートされる感覚があった。
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現代日本社会におけるモヤモヤを、はっきりと文章化したこの書籍は、「繰り返しの部分いらないんじゃ...」「このロジックは本当かなあ」と思った部分を差し引いてもなお、もう一度読み返したいと思える良著だと感じた。
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今まで良いとされて来たものやことが、一気に変化してしまうことになるのかなぁと思う。個と社会の均衡がどこになるのか、考えさせられた。
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タイトルの通り健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会である日本。でも、幸福度ランキングはとても低い。なぜか。その理由がこの本から見えたと思う。
健康的で清潔で道徳的でないと社会的に認められない世の中では、認められる自己実現の手段があまりにも狭められているのではないだろうか。
例えば、不健康で不潔なおじさんの幸福は社会的に認められないのがいまの日本なのではないだろうか。
その文脈で、かわいいが語られることは面白いと思った。ただルッキズムが、と批判するより日本におけるかわいいの存在価値について考えた上でルッキズムを批判した方が面白い。
そのほかには、ADHDの話やIQと炎上、建築と道徳の話がとても面白かった。建築様式から社会を見るのも面白いもんだな。
でも、読んでいて精神科医だからこそみえる具体例のディテールなど超個人的な話のようなものが出てこなくて、ずっと一般化された話を読んでいたので飽きてしまったのと、昔はいいぞ〜ていうおじさんの話を聞かされてる気分にもなった。
きになったのは、子育てについてで、多様性を本書では目指してるはずなのに誰しも子育てはしなきゃいけないみたいな考えに感じてそこは違和感。
じゃあこういう日本でどーしたらもっと幸福度が、生きやすさが増すんだろうな。
この本からその答えはあんまし見えてこなかった。
でも面白かった〜