紙の本
韓国現代小説に興味がある方には初めての一冊に良い
2020/04/25 00:43
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投稿者:Totto - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本では、まだまだ韓国現代小説があまり読まれていないように思います。
興味がある方には初めての一冊に良いと思います。
全体的に落ち着いて静かに読めるストーリーです。
紙の本
さすがハン・ガン
2023/01/25 13:36
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
視力を失いつつあるカルチャースクールで古典ギリシャ語を教える男と、声を失ったカルチャースクールで古典ギリシャ語を学ぶ女。繊細かつ哲学的な作品はさすがハン・ガンというより他ない。
紙の本
ギリシャ語
2019/03/25 16:11
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
言葉を失っていく少女と、視力を失っていく男。全体的に雰囲気が落ち着いているというか暗いので、ゆったり読む作品です。
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八年前に彼女が産み、今はもう育てることができなくなった子供が初めて言葉を覚えようとしていた頃、彼女は、人間のすべての言語が圧縮されたような一つの単語を夢に見たことがある。背中が汗でびっしょり濡れるほど生々しい悪夢だった。とてつもない密度と重量で堅く打ち固められた一つの単語。誰かが発音したらその瞬間に、太初の物質さながらに爆発し、膨張していくだろう。夜泣きのひどかった子供を寝かしつけながら一瞬うとうとするたび、途方もなく重いその言語の結晶が、彼女の熱い心臓に、脈打つ心室の真ん中に、冷え切った爆薬のように装填される夢を見た。
小学生のころに作った万華鏡を彼女は思い出す。鏡屋が長方形に切って持ってきた三枚の鏡面板をつなぎ合わせて三角柱を作り、その中に小さく切った色とりどりの色紙を入れた。片方の目を当てて万華鏡を揺らすたびに広がる不思議な世界に、彼女はたちどころに魅了された。
言葉をなくしてから、ときどき彼女の目の前にはあの世界が折り重なって浮かび上がることがある。今のようにくたくたになって、バスに身を任せて暗い、堅固な森のような夜の町を揺られていくとき。カルチャースクールの建物の暗く狭い階段を上がっていくとき。教室に続く長い廊下を歩いて行くとき。午後の日差しと静寂と樹木、葉ずれ、その間の黄色い模様を眺めているとき。今にも爆発しそうなネオンサインと色電球の下をとぼとぼと歩いて行くとき。
言葉をなくしてみると、それらのすべての風景はばらばらの鮮やかな破片になった。万華鏡の中でついに黙り込んだままだった無数の冷たい花びらのように、いっせいに模様を変えてみせた、あの色紙のように。
すべての事物は自らの内に自らを損なうものを持っていると論証する箇所でですね。目の炎症が目を破壊して見えなくさせ、錆が鉄を破壊して完全に粉々にしてしまうことを例にとって説明していますが、そうであれば人間の魂はなぜ、内なる愚かな、悪しき属性によって破壊されないのでしょうか?
文学を読むなんて耐えられなかった。感覚とイメージが、感情と思索とがぶざまに手を組んで揺れている、そんな世界を決して信じたくなかった。
暗闇にはイデアがない。ただの闇だ、マイナスだ。簡単にいえばゼロ以下の世界にはイデアがないんだよ。どんなに微弱でもいいから、光が必要だ。かすかな光でも存在しないところにイデアはない。ほんとうに、わからない?どんないにかすかな美しさでも崇高さでも、プラスの光がなくては成り立たないんだ。死と消滅のイデアなんて!君は今、丸い三角形について語っているんだぜ。
人間の体は悲しいものだということ。へこんだところ、やわらかいところ、傷つきやすいところでいっぱいな人間の体は。腕は。脇の下は。胸は。股は。誰かを抱きしめるために、抱きしめたいと思うように生まれついている、あの、体というものは。
あの季節が終わる前に君を、一度でいいから、壊れるぐらいに、真正面から抱きしめなくてはいけなかったのに。
それは決して僕を傷つけはしなかったろうに。
僕が倒れも、死にもしなかったろうに。
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薄緑色のデザインが美しい装丁。
読書会の課題本でした。
ある日突然
言葉を話せなくなった女。
すこしずつ視力を失っていく男。
詩的でとつとつと物語は紡がれる。
わたしには最後まで2人の、顔が見えてこなかったけど、美しくなく汚い部分も読み取っていた人もいて。
そんなに簡単なことではありませぬ。か。
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もやもやとくぐもった声で朗読するのがきこえてきそうな
どんより曇り空がひろがっていそうなイメージがたえず続く
最初は読みにくくなかなか読めずにいたけれど
言葉を失った女、視力を失う男の世界にひきこまれる
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読みやすい物語ではない。語り手も時間も場面もあちこちにとぶ。散文詩とまでは言わないがそれに近いところもある。ただ、作者の語りたいことや思いは一貫しているので、それにのることができれば、読み心地は悪くない。
ふたりの登場人物はどちらも、生々しい事物が言葉(不確かな意味)をまとった現実の世界との関わりに苦しんでいる。女は、生身の世界をゆがめながら増幅する自らの言葉を怖れている。心がハウリングを起こすことを怖れている。男は、形而上の言葉の世界に拠り所を求めるが、それと生身の世界との乖離に苦しむ。ふたりが抱える困難は、失明・失語症そのものというより、それを契機に向き合わざるをえなくなった、自分と他者、自分と世界との折り合いのつけ方だろう。
その途上でふたりを結びつける役割を果たしているのが、今は誰も日常的に使うことのない、生身の世界をすでに失った、古典ギリシャ語だ。古典ギリシャ語とギリシャ哲学に関する挿話が、ふたりの世界との格闘の中に効果的に織り込まれている。
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目が見えなくなっていく遺伝的な病気を抱えたギリシャ語講師の男性と、言葉を話せなくなり古代ギリシア語(死滅した言語)を習いに来た女性。それぞれの過去と、お互いなくしてきたものから少しずつ何かが生まれそうな気配。
途中から夢中になって読みました。静かだけれど余韻の残る話。
숲 スプ(森)主人公の好きな文字。
ラストにまた出てきてその余韻を残す。
そしてラストから話の始まりにつながる…そうしてゆったりと2人は少しずつ深いところから出られるようになるといいな…と思えるラストでした。
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3年ほど前、韓国文学にハマるきっかけになった一冊。主要登場人物のこれまでの人生やエピソードひとつひとつの場面が映像のように目に浮かび、(ギリシャ語はもちろん)韓国語の知識などまったくないのに、ふたりの切実な“声”が聞こえてくるようで、心が震えた。翻訳の斎藤美奈子さんによるあとがきも必読。読書会課題本のため再読。
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最初から最後まで納得がいかなかったし、読み返せば読み返すほどにイライラする。
そもそも心因性で声が出ないという主人公に対し「言葉を失っている」という書き方はあまりに雑ではないか。
書くことも読むことも聞くことも、ひいては「著者が書いている」通りに「言葉で思考している」にもかかわらず。
そこに対してのエクスキューズも一切ない。エクスキューズがないのは良いとしても、ただ単に設定として利用していたのだろうなという印象。確かに声の出せない女と目の見えない男性のプラトニックで詩的な関係はロマンティックだものね。
「しゃべることができない」だけでは「言葉を失った」ことにはならないだろう。言葉を失っている状況を言葉で描写するという試みがされているわけでもない。
そうなってくるとボルヘスの使われ方も癪に障るというものだ。中動態に関してもそう。たんなる盛り上げ装置かよという印象。カラオケのタンバリンか。
静かに呼気を抑えた筆致は結構好きで、『菜食主義』も面白く読んだけれど、なんか中身スカスカなのでは疑惑があるので、もう読みません。
でもこの本に対するもやもやというか納得のいかなさをどうにかしたくて、失語症と中動態に関する本を買い、そちらは楽しめているので良かったことにする。
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うーん、韓国文学って初めて読んだんですが、またテンポ?ってーか雰囲気ってーか・・・ちょっと違うんだな・・・
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世界観は好きですがどうにも難しい
何度も読み返し先に進む感じが、今の気分と違って読めない
図書館で借りたので返却日も気になりつつ、、、、。
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ひっそりとした小説だ。沈黙、声、雪、薄闇、夜、顔、暗闇、闇の中の対話、黒点、深海の森。これが章題のすべて。ソウルのカルチャースクールのギリシャ語講師と受講生の僕と彼女には名前がない。章ごとに視点を入れ替えながら語られるのは二人の過去。読者はカウンセラーのように二人に寄り添っていくことになる。あなた、おまえ、君の二人称の章が時折り挟まり、わずかな会話にはカギかっこもなく情景に溶け込んでいく。視力を失いつつある男と声を忘れた女があるできごとをきっかけに触れ合い、彼・彼女として語られる終章間際では、いよいよ詩に近づく。
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読んでいる間、知的な空間を浮遊している不思議な感覚にとらわれる。あとから知ったが、作者は詩人でもあるとのこと。それも納得感がある。朝鮮語はわからないけど、読みやすくて静謐な雰囲気を感じさせる素敵な翻訳。
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言葉を話せなくなった女性と
目が見えなくなる男性。
傷つき、何かが欠落した孤独な人々、
そんな魂が出会うことを愛おしく思うのです。