幻影シネマ館

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我が愛しの佐々木譲の手になる、この世に存在しない空想による架空の映画ばかり３６本を、紙上公開した極上の逸品です。

しかも、表紙カバーと本文の全体２１１頁の中で４０頁に及んで、私の好きな宇野亜喜良のイラストがちりばめられていて、いっそうこの本を魅力的なものにしています。

これは作家の余技で出来るような、ちょっと片手間な内職みたいなものじゃあけっしてなく、本当に映画が好きで好きでしょうがない性分が書かせた妄想映画館。

どこにもない作られたことのない映画を妄想幻視するなどということは、でも映画好きなら一度や二度くらいは経験したことがあるかも知れませんね、たとえ口外しなくても自分だけでほくそ笑んだりして。

読み進むうちに、それで、うん、あ～面白そう、これ見てみたい、もう一度題名を確認したりして・・・、あっそうか、これって実在しないんだっけ、と我に返る場面が何度もありました。

それほど、よくもまあこんな見てきたような大嘘をつけるものだわ、と呆れるほどのディテールの確かさ精密さには驚かされました。さすが当代一のほら吹き男爵！

しかも・・・・・・・・・・

　▼第一部▼
日本映画の奇妙な影響
ゴードン・ダグラス「ハード・ノーベンバー」
トニー・リチャードマン「汝等の誓約」

呪われた映画についての証言
デヴィッド・リーン「季節風の下のジャワ」
カルロ・ポンティ「ラダメス」

青春群像映画の系譜
ケビン・コスナー「サマー・デイズ」
ブルース・ウィルス「サムナー・トレイン」

性表現の大冒険
ケン・ラッセル「エカテリーナ」

私立探偵の溜め息
ハリソン・フォード「ザ・バッド・コントラクト」

フランス映画の口惜しい欠落
ジョアンナ・シムカス「夏のソナチネ」
ジャン＝ピエール・メルヴィル「夜のバラ」

遥かなる西部の呼び声
クリント・エーストウッド「グレイブル」
スティーヴ・マックィーン「弾丸と明日」

世界を魅了する中国男
ジョン・ローン「再見」
チョウ・ユンファ「飛龍風雲」

スピルバーグにも負けないＳＦＸ映画
クリストファー・ロイド「ダイノルーシー」
ジーナ・デイヴィス「フローズン・シップ」

発見された幻の映画
ロマン・ポランスキー「疑惑」
ミケランジェロ・アントニオーニ「キープ・アップ」

心躍るミュージカル
アン・マーグレット「アーニャ・イン・ニューヨーク」
ジャック・ドミー「シンギング・ビューティ」

　▼第二部▼
痛快な爆撃機映画
Ｊ・リー・トンプソン「東京ワンウエイ・エクスプレス」

美少女ハードコア
ウィノラ・ライダー「ハニーハウス92」

美意識に貫かれた三角関係の物語
ベルナルド・ベルトリッチ「戦争は始まっていない」

サスペンス、二重の衝撃
ミシェル・ファイファー「ルーシー・ルーシー」

「グロリア」の男女逆バージョン
ダニー・デヴィッド��リスポンシプル・マン」

オールスター・パニック映画
ジョン・フランケンハイマー「エマージェンシー・シックス」

シンガポール陥落前夜を描くスペクタル映画
リチャード・ブルックス「シニスター・トワイライト」

コンピュータ上の決闘
キヌア・リーヴス「ザ・マウス」

オカルティズム映画のカルト的傑作
ビル・マクラクラン「ザ・シークレット・タワー」

Ｏ・Ｊ・シンプソン事件を先取りした現代のオセロ
オリヴァー・ストーン「トリビューン」

愛憎の大河兄弟ドラマ
ロバート・レッドフォード「ザ・リバー」

マディソン郡の橋の先行類似作品
イヴ・モンタン「セーヌ・エ・オワーズの鉄橋」
ヴィットリオ・デ・シーカ「ベネベンタの塔」

十字軍映画の逸品
リチャード・レスター「キャッスル・オブ・イーグル」

超大作古代ローマ史劇
マイケル・ダグラス「スパルタカス2」

あの「冒険者たち」のリメイク
リュック・ベッソン「ザ・フォーカス・ポイント」

・・・というように、多岐にわたるテーマで展覧する凄腕・辣腕ぶりは、映画プロデューサーとしての才能もあるんじゃないかと感嘆してしまいました。