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商品説明
生きるための本走に入る明後日より抗癌剤の点滴変はる 寝ながら庭の桜木見上ぐ二枝が揺れそのめぐりのみ揺れゐるを 2010年8月に亡くなった著者の遺歌集。【「TRC MARC」の商品解説】
稀代の女流歌人、河野裕子の死の前日までの427首を収録。自らの死とそして家族と、どう向い合ったか。
日本一行詩大賞【商品解説】
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紙の本
河野裕子さんが聴いた八月の蝉
2012/05/17 18:27
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人は誰だって死ぬ。それは動かしようのない事実です。
だから、どう死んだとてそれは同じことで、大事なのは、どう生きたかということ。
どんな世界で息をし、どんな人たちと出合い、どのように喜びまた悲しんだか、そういう誕生から死にいたるまでの日々、すべてがかけがえのない時間であれば、それを大事にしないでどうなるというのでしょう。
本書は2010年8月に亡くなった歌人河野裕子さんの最終歌集です。
癌の再発という辛い病床で、「子規の時代にこんなケアがあつたなら子規をあはれにはるかに恃む」という歌のように病床六尺で生きた正岡子規に想いを馳せつつ、筆力が弱まる手で歌を詠み、最後には家族の口述筆記をうけながらも、河野さんは最後まで歌人であり続けました。
河野さんの歌の素晴らしさは、歌人でありつつ妻であり母であったことでしょう。どちらが前とか後ろとかでなく、河野さんはみごとにそれらを一体とした人だったといえます。
最後の方でこんな歌があります。
「さみしくてあたたかかりきこの世にて会ひ得しことを幸せと思ふ」。
河野さんがこの世界で出会ったのは、夫であり家族でした。そのことを死の間際に「幸せ」とあらためて思う。それは河野さんの「幸せ」であり、そんな妻、母をもった人たちの「幸せ」でしょう。
そして、歌を通じて愛する人への思い、家族への愛を感じることができる私たち読者の「幸せ」というほかありません。
人を愛することができたなら、その日々を生きることができたなら、どんなに「幸せ」でしょうか。
河野さんの歌は、私たちにそのことを教えてくれます。
河野さんの最後の歌、「手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が」こそ慟哭の一首といっていいでしょうが、それでもそれは美しい悲しみであり、吐息のでるような愛の姿です。
河野さんが聴いた八月の蝉の声から、もうすぐ二年が経とうとしています。
紙の本
真の歌人として終わる
2022/02/08 00:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:帛門臣昂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これからも永く語り継がれるであろう真の歌人・河野裕子の最終歌集。最後まで歌人として生をまっとうした彼女の歌たちは紙の上で凄まじいエネルギーを放っている。時を経ても歌人の魂を感じ取れる歌集がこの国に一冊でも残ることの幸せを噛み締めている。