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商品説明
近代化の開始に伴い「脱亜」を志向した日本は、1930〜40年代の危機、戦争の時代と積極的に「アジア」を語るが、それは脱亜論の裏返しとしてのオリエンタリズム的他者像でしかない。近代日本のアジア認識を徹底的に検証。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
子安 宣邦
- 略歴
- 〈子安宣邦〉1933年川崎市生まれ。東京大学大学院博士課程修了。横浜国立大学助教授、筑波女子大学教授などを経て、現在大阪大学名誉教授。著書に「本居宣長」「江戸思想史講義」など。
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紙の本
現代でもアジアの人々を見下していないか、反省
2003/09/23 19:48
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これまで現代思想史といったような分野の本は、読んだことがなかった。視野が広がったような、気がする。幕末から大東亜戦争敗戦までの間の、東アジアおよび東南アジアに対し、日本がどのような見方をし、どのような対応をしてきたかが、分析されている。世界の趨勢から遅れて帝国主義の時代にはいった日本が、近隣の国々をどう見ていて、それらの国々に対する自分の行動を、いかに正当化したきたか、その思想史が述べられている。軍部の一部だけでなく、当時の知識人達が先に欧米化した日本が、遅れたアジアの国を指導する権利と義務があると信じ、それを正当化するための理論化をいかに行っていたか、初めて知ったことが多い。工業および経済面で優位に立っていることから、現代でもアジアの人々を見下していないか、反省する視点が持てるようになった、と思う。
紙の本
気になる「文化左翼」的なバイアス
2003/09/28 11:10
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:梶谷懐 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の知識人のアジアに対するまなざしへの批判として、有名なところでは竹内好のものがある。竹内は、日本の知識人が西洋の文明や学問を器用に受け入れすぎて、その結果自分達ほど「器用」ではない、中国をはじめとしたアジア諸国を否定的にとらえる傾向があることを痛烈に批判したのだった。
近代日本思想史の大家である子安さんがアジアを論じる際のスタンスも、基本的にはこの竹内の立場を受け継いだものといっていいだろう。
近代以降、日本の知識人のアジアに対する態度は、「無視する」か、その「後進性」「異質性」を強調するか、そうでなければ独善的な「アジア主義」におぼれるか、といったものだった。それらの態度は、アジアを否定的に眺めることで日本の優位性を確認する、と言う点で共通しており、特に戦前においては日本のアジア侵略を思想的に正当化する役割を担うことにもなった。子安さんによれば、そんな日本の知識人の態度は現在に至っても基本的に変わっていない。かくして彼の批判の矛先は、アジアへのまなざしを欠いた「日本一国文明史」を展開している西尾幹二の『国民の歴史』はもちろんのこと、実証研究をもとに「中国=専制国家論」を唱え、西尾本の記述にも大きな影響を与えた足立啓二や、晩年に「東亜新体制論」を提唱した廣松渉など、必ずしも右派ではない知識人たちの言説にも向けられる。
それに対し彼が推奨する態度は、「アジアの知識人の言うことに謙虚に耳を傾け、彼らから多くのことを学ぼう」という点に尽きるだろう。実際、彼の言説は、『世界』『現代思想』なんかで時々紹介されている、アジアのポストモダニストらの主張と大きく共鳴し合っているように思われる。
ただ、気になるのは、全体のトーンににいかにも「文化左翼」の人らしいバイアスが見られる点だ。具体的に言うと、一つには日本とアジアの間に横たわる現実的な側面、特に経済の論理を軽視する傾向がみられることだ。例えば、現在日本の中では中国に対して否定的な印象を持つ人々が急速に増えつつある。それは第一に、経済的な面で交流が増えビジネスマンを中心に、日中両国の「異質性」に否応なく直面せざるをえない人々が増えたからだろう。それに対して「異質性を強調するな、対話しろ」という子安さんの立場は、困難な現実に切り込むだけの力を持っているとは思えない。
もう一つの問題は、日本の現実や知識人の言説へは厳しい目を向ける反面、アジアの知識人に対する視点が甘くなっているんじゃないか、という点だ。例えば中国を例にとってみても、欧米モデルを用いて自国の後進性に警鐘を鳴らす人々、それに対抗してナショナリスティックに感情論を展開する人々、黙って実証研究に打ち込む人々などいろいろな立場の知識人がいて、その実態は日本と余り変わらないんじゃないかと思う。そんな状況を踏まえて、耳を傾けるべき点は傾け批判すべき点は批判するのがまっとうな付き合い方だと思うんだけど。
以上のような点は少なくとも、実証的な地域研究に従事している人々や、ある程度の問題意識を持ちながら現地での実務に携わっている人々にとっては自明のことであるはずだ。というわけで子安さんを始め文化左翼の人々も、アジアの知識人と同時に、日本の優れたアジア研究者の言うことにももっと耳を傾けた方がいいんじゃないだろうか。
紙の本
目次
2003/06/10 12:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:藤原書店 - この投稿者のレビュー一覧を見る
序
1 『文明論之概略』とアジア認識
2 「世界史」とアジアと日本
3 ヘーゲル「東洋」概念の呪縛
4 昭和日本と「東亜」の概念
5 何が問題なのか──廣松渉「東亜新体制」発言をめぐって
6 東洋的社会の認識
7 大いなる他者──近代日本の中国像
8 近代中国と孔子教
9 「日本一国文明史」の夢想