紙の本
幸せになりたいんだけどなり切れない人たち
2024/02/01 10:36
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
韓国の小説が面白いということに気が付いたのはほんの2.3年前、遅すぎる。「ショウコの微笑」を含む7作品は「カステラ」のパク・ミンギュや「82年生まれ、キムジオン」のチョ・ナムジュといった作品に比べると派手さはない、というよりはっきり言うと地味、でもそこがいいのだ。表題の「ショウコの微笑」は韓国にやって来た留学生とホストファミリーのお話、ハッピーエンドではないラストがいい、最後までショウコは心を開かない、「シンチャオ、シンチャオ」はドイツに住んでいた韓国人とベトナム人のお話、仲よくしていたけどタブーになっているあの戦争のことが話題になってしまい・・・、他の5作品も地味だけど心に残る作品、幸せになりたいんだけどなり切れない人たちが描かれている。ある韓国の評論家が是枝監督の映画を見ているようだと表現したらしいが。まさにその通りだ
紙の本
まなざし
2022/02/20 17:02
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投稿者:Louise - この投稿者のレビュー一覧を見る
社会の隅々に眼差しを向ける作者のやさしさ、女性の生きづらさへの応援みたいなものが感じられて、あたたかさがじんわりと心に広がる短編集だった。
国や歴史を越えた物語の数々は韓国文学の豊かさを示唆する。特に「オンニ、私の小さな、スネオンニ」、「シンチャオ、シンチャオ」が素晴らしかった。
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同じ国の小説だからと言ってみながみな似た雰囲気のはずはないだが、それにしても、今まで何点か読んできた韓国の小説と、どうもこれは印象が異なる。
まず、静かだ。淡々としてると言っていいかもしれない。展開も人物たちも。泣いたり怒号が飛び交ったりという人物もあまりいないし、感情の振り幅も激しくない。
それでいてじんわりくる。
どれもとてもよかった。
特に『ショウコの微笑』『オンニ、わたしの小さな、オンニ』『ハンジとヨンジュ』『ミカエラ』◎
その中でも、『シンチャオ、シンチャオ』が素晴らしい。後に残る余韻が。短篇なのに、長いドラマを見たようでもある。
家族でも恋人でも友人でも、心が繋がったと感じる瞬間もあれば、繋がりたいのにそしてその努力をしているのに報われることなく繋がらないこともある。また、一度は繋がったのに、何かのきっかけや誤解で離れてしまうこともある。
離れてしまった心の切なさに胸が掻きむしられるようであり、わずかでも繋がったと感じられるとポッと火が灯るようでもあり。
人間て、生きていると、少なくない出会いがあるのに、別れもあるなあ、と今更のように思う。
そして、ベトナム戦争、光州事件やセウェオル事件なども、個人の物語に無理なく紡がれ、日常の中でのリアリティがますます重く感じられる。
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感じてはいるのにうまく言葉にできない気持ちを代わりに書いてくれているようで読み終わるとホロホロこころが溶けていく
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人の気持ちを全て理解することはできないというもどかしさと、取り返しのつかない喪失に直面した時の切なさ、でもそれが人生。
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短編集7編
どの短編の主人公たちも傷つきやすく繊細で社会や慣習、男たちによって生きにくくされている。でもそれに負けないしなやかな強さが感じられた。「シンチャオ、シンチャオ」が本当に良かった。
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きっと、一生記憶に一番残る韓国作品かと思う。
胸を鷲掴みされる作品。
「ショウコの微笑」を含む短編集。
日本人も出てくれば、次の短編ではベトナム人も出てくる。
韓国人からすると、日本人とベトナム人は複雑な関係だと勝手に想像しています。
それ以外の短編も、全て深い内容でした。
素晴らしいの一言。
こういう、重すぎない、でも深い韓国作品をもっともっと読んでいきたいです。
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親しかった友達との仲がこじれてしまったこと。家族の愛情と期待を重荷に感じていたこと。大人達の話に口を挟んで取り返しのつかない破局を招いてしまったこと。学業で挫折したこと。おばあちゃんっ子だったこと。あらゆる登場人物と人間関係と語られる心情に憶えがあり、身近すぎてとても平静を保てなかった。こんな読書は初めて。
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人との出会いと別離を描いた短編集。
丹精な文章が別れに繋がる、別れで生じた摩擦を真摯に浮かび上がらせる。
特に表題作〝ショウコの微笑〟と〝シンチャオ、シンチャオ〟は素晴らしい。
最後の著者あとがき、物書きを志す人はきっと深い共感を覚えるはず。
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過去を振りかえり立ち上がってくる切ない想いを描いた話に惹かれる。それだけ過ぎ去った時間が増えたからなのか。
フッと蘇る心の奥にしまわれた記憶。鋭い痛み、後悔、哀しみ、さまざまな想いに揺れる。
二度と会う事ができない人との想い出はなおのこと切ない。
けれどその痛みは、過ぎた時間がオブラートのように包み込み、苦い想いを少しだけ呑み込みやすくしているとも感じる。
7つの話は、どれも人との出会いと別れを描いている。繊細で内省的な主人公たちが、過去を回想し静かに物語る。それは歴史や社会を揺るがす事件、時代の空気とも無縁ではない。
過去を振り返りながらも人生に向き合い真摯に生きている姿がいい。
著作『わたしに無害な人』も良かった。チェ・ウニョンはまだ30代。これから年齢を重ねたらどんな話を送り出してくれるのだろう。
とても楽しみ。
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「ショウコの微笑」:高校一年の時に、ショウコは日本から文化交流のためにやってきた。英語の上手な私がホストファミリーに選ばれた。一週間ショウコを家に泊めたが、いつもは笑ったことのない祖父が、ショウコには笑顔で日本語を話す。それにあっけにとられた私だった。ショウコの笑顔ははにかんでいるようだったが、実際は人に気を使ってそうしているように思えて違和感があった…。「シンチャオ、シンチャオ」、「オンニ、私の小さな、スネオンニ」、「ハンジとヨンジュ」、「彼方から響く歌声」、「ミカエラ」、「秘密」。「ショウコの微笑」でデビュー。「作家世界」新人賞を受賞。どの作品も胸に痛みを持った人が描かれている。
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日本、ベトナム、ナイロビ、ロシア。多くの国の人々の歴史に触れ、言葉や距離を超えて分かり合えること、身近にいるからこそ関係を続けることの難しさを真っ直ぐにとらえようとしている本。
韓国の歴史触れつつも、大元に流れる心の揺れは全世界共通のテーマ。わたしの2021年の始まりの一冊の一つ。
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遠ざかってしまった記憶を静かに悼み、弔うような短編たち。
二度と戻れない過去に自分が他者を傷つけたこと、取り返せないままここまで生きてしまったことを思い、しんと冷たく胸が凍える。
痛みは消えないし、きっと忘れもしない。忘れないまま、明日も静かに生きていく。
表題作よりも他の短編たち、なかでも「ハンジとヨンジュ」「彼方から響く歌声」「ミカエラ」が好きだった。
今となっては何が最善だったのかもわからないこと、もっとやれることがあったかもしれないこと、だけどできなかったこと、そういう体の奥に石のように沈む後悔の表象が際立つ作家だなと思う。
「作家の言葉」で、もう自分は小説で身を立てることはできないかもしれない、諦める時が来たのだと思い泣いたという記述にこっちが泣いてしまいそうになった。
この人が作家の舞台に上がることができて、日本にいながら本を手に取れること、それはただただ貴いのだと、鮮やかな表紙をゆっくり撫でる。
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とても狭い世界を描いた作品なのに、どの短編も良質な映画を観た後の静かな余韻が続く。この著者の他の作品も読んでみたい。
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タイトルのショウコの微笑のショウコは1998年日本文化が韓国に開放された年に文化交流でやってきた日本人の高校生でした。韓国の高校生ソユの家でホームステイし楽しく過ごしますが、帰国後はぷつりと連絡が途絶える。ショウコもソユも心身ともに気力に満ちたやりたいことを叶えている自分を見せられるときは相手に接近しようとし、自分がそうでないときは相手を避けてしまう。二人に同じ悲しみが訪れたとき再び、避けてあっていた時間を遡及して相手が理解できたようでした。