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猿の証言

  • 出版社:新潮社
  • サイズ:16cm/643p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-10-114522-9

猿の証言 (新潮文庫)

北川 歩実 (著)

  • 全体の評価 44件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:86024pt
  • 発行年月:2000.5
  • 発送可能日:購入できません

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ユーザーレビュー- 「猿の証言」

全体の評価
4.0
評価内訳 全て(4件)
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★★★★☆(2件)
★★★☆☆(1件)
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2002/07/31 23:51

ウンチクが楽しかった

投稿者:やすみつ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

猿と人間との境界や、猿にとっての言語というあたりの蘊蓄が満載で、猿の‘証言’は信用できるかというタイトルにつながる話。ミステリとして蘊蓄がうるさいという指摘は当たっているだろう。しかし、私自身の興味はストーリーより上記の蘊蓄に向いてしまったので、結果オーライ。
NHKブックスの「言語という本能」を思い起こしたが、案の定、参考文献の最初に載っていた。

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2001/05/19 12:50

越えられない壁、どうしようもない隔たり

投稿者:春都(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ヒトとチンパンジーの遺伝子の違いはほんのわずかだ。ところが、それはいかんともしがたい「隔たり」として確かに存在し、登場人物や読者に常につきまとう。
 チンパンジーという目撃者がありながら、言語という壁にさえぎられ、すぐそこにあるかもしれない真相がみえないのが、なんとももどかしい。

 ヒトであるのか、それともヒトになるのか。チンパンジーという「ヒトでない、だが最もヒトに近いもの」をあつかい、また物語自体にも色濃くその意識をただよわせることで、読者にくりかえし問いかけてくる。
 ラストで北川歩美が示した結論は、安堵感をもたらすものではあるけれど、だからこそ哀しくツライ。

 2人の研究者が出てくるが、正反対の立場・考えをもたせて、読者に「どちらの言い分が正しいのか」を容易につかませないのも上手い。
 作者が偏った考えで物語を書いてしまった場合、ときにラストのオチが簡単に想像できてしまうことがあるのだけど、北川氏はつとめてナチュラルな視点に立とうとしているので、見事にまぬがれている。もちろん最終的にどっちつかずで終わることはなく、読者の盛り上がりにしっかりと応えてくれる。
 最後の1ページは圧巻であり、作品全体を十二分に支えうるほどの衝撃を感じた。

 場面転換がすこし唐突で、そのたびに話を把握するのが大変だったが、慣れてしまえばどうということはない。いってみればそのくらいしか瑕疵に気づかなかったのだ。
 医学的な情報を、作者がいいように捏造しているなどという書評を見かけたが、ノンフィクションではないし、北川氏自身もあとがきで断っているのだから、作品の評価には関係ないだろう。読者を納得させる物語展開にすればいいのだし、少なくとも門外漢の僕にはアラが見つからなかった。
 そもそも、そんなものを見つけたいと思って読まないだけかもしれないが。

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2000/08/19 08:15

「理系ミステリ」の新境地

投稿者:OK(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 脳神経科学の話題をとり入れた新たな「サイエンス・ミステリ」の領域を、ひとり開拓しつつある作者の野心作。いわゆる「サル学」系の話題がとりあげられる。
 チンパンジーの言語能力を研究していた異端の学者が、不審な失踪を遂げる——それが主たる事件なのは結構早くから明らかになる。あとは真相を詰めていくだけのはずなのだけど、これが一筋縄ではいかない。なにしろ唯一残された目撃者がチンパンジーなので、ここから証言を引き出せるのかがまず問題となるのだ。なんじゃそりゃ、な展開だけど実はこの問題がなかなか興味深い。結局チンパンジーの能力を知ることは、お隣の人類の臨界点を探ることにもなるのだ。作者の解説もなかなか明瞭で、とりわけ類人猿の言語実験を超能力パフォーマンスと対比させたのがうまい。主観や思い込みしだいでどちらにも解釈できそうな微妙さ。
 けれども事件の謎はさらにねじれ、チンパンジーとヒトの合いの子「チンパースン」をめぐる禁断の実験の存在をちらつかせつつ、人間とチンパンジーの境界へと踏み込んでいくことになる。そのあたりの路線もシビアで愉しいけれど、次々と新たな秘密が明かされてそのたびに真相の行方が二転三転する展開は、あくまでミステリの手法にこだわったやりかただ。サイエンスな題材をきちんとミステリの枠で消化して、新たな分野の可能性を示した注目の作品といえる。終始どろどろした展開ながら、背負い投げ的な幕切れは妙にさわやか。
 どうもこの作家は意外な展開にこだわりすぎるのか、強引すぎて自滅してしまうことが少なくないのだけれど、本作ではその点があまり目立たないのも評価できる。ただし、はっきり言って登場人物には魅力どころか人間味すら感じられないし、文章も無味乾燥。それでもおもしろいミステリはたしかに存在する、ということだ。

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2001/01/25 02:21

本編もさることながら、この本の場合、解説も秀逸!

投稿者:FAT(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 チンパンジーの言語取得能力を研究している学者が失踪する。その失踪直前の現場には、学者が研究対象としていたチンパンジーだけが残されていた。失踪した学者が隠遁生活の中で何を解明しようとしていたのか、現場に残されたチンパンジーが目撃したのは何だったのか。これらの謎を巡って、幼なじみである生物学者・TVディレクター・医師、そしてこの3人と深い因縁のある科学ジャーナリスト達が、虚々実々の駆け引きを繰り広げつつ、謎に肉迫していく。そして、もの凄く意外な結末が待っている。失踪事件の真相などは、どうでも良くなるほどの意外な結末が。
 本書の筋立てを掻い摘んでしまうと、こんな感じなのであるが、本書の場合、本編もさることながら、解説も面白い。解説の金子氏は、本書をダニエル・キースの『アルジャーノンに花束を』と比較して、次のようにコメントしている。
「アルジャーノンの場合、じわじわとやって来たものが、本書の場合は、最後まで読むとガツーンとやって来る」
 「本書の最後に到達したきに感じる。深い悲哀、これはアルジャーノン一冊を通しての『悲しみの積分値』を決して下回るものではない。」

 このコメントには、全く同感だ。本編を読んでいるときには、この類似性に全く気が付かなかったが、確かに2つの作品とも、「知性」がその「知性」の源を探求するが故の悲劇性、そういった欲望に駆り立てられる人間の悪魔性を旨く描いており、解説にも改めて感心させられた。
 さて、「知性」を構成する最も重要な要素である「言語」の起源に、極めて強い関心を持ってしまった人間の愚行が本書のモチーフとなっているのであるが、違ったアプローチではあるものの同種の「とんでもない愚行」を試みるマッド・サイエンティストが出てくる作品として、ロバート・J・ソウヤーの「フレームシフト」がある。こちらに出てくるマッド・サイエンティストの方が、本書に出てくる学者よりも、狂っているだろう。ただし、こちらの作品の方が、物語の終わり方には救いがあると言えるかもしれない。皆さんは、どちらの作品に軍配を挙げるのだろう?

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