幻想の未来 (角川文庫)
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- 税込価格:441円(12pt)
- 発行年月:1979
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ユーザーレビュー- 「幻想の未来」
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2011/10/16 09:51
文明が崩壊し、変貌していく地球。地上最後の生命体の言葉が胸を打つ。
投稿者:銀の皿(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者自体はそれほど好きでもないのだが、なぜか強く記憶に刻まれてしまっている、そんな作品がある。これもその一つ。最初に購入した一冊を紛失し(おそらく引越しのときだろう、整理したのかもしれない)読み返したくて「二度買い」した。初版が昭和46年。そのころ買った文庫本はもっと派手なカバーだった記憶だが、手元にある第44版は黒一色。こちらも味のあるカバーである。
表題作のほかにも短編が幾つか収録されているが、表題作がとにかく印象に残る。核汚染で文明が崩壊し、変貌していく地球の未来を描いた作品である。
ヒトも変異をくり返す。これでもか、と変わっていく姿の描写もすごいが、「思念が残る」という発想も加わって描かれる億年単位の変化を描いた著者の想像力に圧倒されてしまう。部分的に出てくる、著者特有の、句読点なしで延々と続く文章も効果をあげている。
地上最後の一つとなった生命体が、宇宙を廻っているという生命体と交わす静かで心のこもった会話がある。「この宇宙で意味のないことなんて何ひとつない」。
年齢のせいもあるのだろうが、この言葉に「ああ、そう思うことは究極の心の平安なのかもしれない。」と思う。どんな生き方であっても、何かの意味があると思わなければ不安だというのは誰もが持つ心理ではないだろうか。こう考えることで自分自身を納得させているだけなのかもしれないけれど、こういうところに宗教の発生につながるものがある。世界の変貌を超えてきた生きものの言葉として語られるだけに、この言葉が胸を打つ。
二つの生命体の間の、ひそやかだが暖かい愛情表現も心に残るものである。その暖かさが、一つの生命世界が滅んでいく情景を悲惨なものにならないよう、柔らかく包んでくれている。
必ず死ぬ運命の生命体がなぜ存在を始めたのだろうか。そしてその生命体の中で「死ぬこと」を理解できる人間とはなんだろうか。人類が考え続けてきた問いであろう。それを一つの物語のかたちで考えさせてくれる作品である。
全集にも必ず収録されている作品だと思う。是非一度読んでみて欲しい。なにかしら心に残るものがあると思う。







