虚無への供物 (講談社文庫)
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- 税込価格:980円(27pt)
- 発行年月:1979
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ユーザーレビュー- 「虚無への供物」
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2004/04/04 17:16
反世界
投稿者:明けの明星(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
『虚無への供物』を読んだときの興奮は忘れられない。そこにはなにか異常な魅力があった。最初の1行を読んだときから、読者は「反世界」に飲みこまれる。探偵小説の定番である密室や推理談義も、この「反世界」ではなにか別種のものに変容し、不思議な意味合いを持ちはじめる。中井英夫の「反世界」━━あらゆる日常的なものを転倒させた世界では、探偵小説の要素も、薔薇も、不動も、あるいは風呂場やアパートでさえ、なにか一種異様なものに見えてくる。そこでは日常的なものが、もっとも奇怪異様に見える。……中井英夫は乱歩や戦前の日本の探偵作家たちの血を受け継いでいるのだ。
この本がアンチ・ミステリーだといわれる意味は、最後になって分かる。それはまさに「アンチ」である。だが読者はそんなことを言われてもピンとこないだろう。その種の「犯罪」は至るところで行われている。それは罪悪感の伴わない無邪気な罪だ。━━そこに大きな問題を見て、立ち止まって反省するか、それとも無邪気に「あー、おもしろかった」と言うかは、結局読者の自由だろう。
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2001/03/29 10:12
暗黒の混沌
投稿者:桐矢(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めて読んだのは、18才の頃だった。その頃一人暮らしをしていたのを幸いに、ご飯も食べずに、13時間ぶっつづけで読み通した連続最長読書記録を作ったのがこの本である。
題名からして、ぞくぞくしてきませんか?
舞台は、昭和29年の下町、とあるゲイバア(男色酒場)。サロメを踊る少年が観客の男性に、黄色い薔薇を投げる…ところから始まる。
まず、氷沼家の次男が背中に十文字の鞭の跡を残した裸のまま殺される。そしてその一番の容疑者と思われていた叔父が密室の中で殺される。
登場人物たちがそれぞれ独自の推理を順番に披露していくのだが、その合間にもつぎの殺人事件が起こる。交錯する推理ゲーム。五色不動伝説。氷沼家の色の部屋と、色彩学。アイヌ奇譚。流れるシャンソン。不思議の国のアリス。存在しない薔薇。すみずみまで、読者を惹きつけ、放さない仕掛けに満ちているのだ。
それでいて、精緻なミステリーではない。…破綻しているのだ。おどろおどろしさと、大阪弁。リアルな地理感や猥雑な風俗と現実離れしたわざとらしさ。混沌とした一切合切、…が得体のしれないめくるめくような暗黒の世界を作り出している。
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2001/06/10 01:19
文学史としても面白い
投稿者:呑如来(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリーの構造を逆手にとった、幅の広いエンターテイメントとなっている。
ホームズを筆頭とした内外の推理小説作家への言及や、当時の世相を反映した背景描写も興味をそそる。しかし中井英夫の短篇を知ってしまっている人には、この作品の冗漫さはちょっと鼻につくかもしれぬ。
「虚無への供物」が「ミステリへの供物=本作品」の暗喩と考えれば、確かに巧妙な小説には違いない。







