流刑の神々 精霊物語 (岩波文庫)
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- 税込価格:630円(18pt)
- 発行年月:1980.2
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ユーザーレビュー- 「流刑の神々 精霊物語」
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2012/01/04 22:56
詩人は抗議する
投稿者:SlowBird(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
民間伝承は人のイマジネーションの宝庫であるし、魂の寄りどころでもある。それは時間とともに、また伝えられるとともに融通無碍に変化していくものでもあり、人々の心の変化を映す鏡でもある。ギリシャ神話であり、北欧神話、ケルト神話であり、それらの元になった土着の伝承があり、神話が流布した先でもまた変形していく。
神話や伝承が宗教と名を変えると、権力となり、巨大化し、体系化され、群小の神々や妖精達は異端として排除されていく。しかしその排除されていく中にも、人々の夢や希望や哀しみが詰まっている。多くの芸術作品がそこにある美を描き、共感を謳った事実は変わらずに残っている。中世から近代にかけて喪失されていったそれらの物語に、新たに光を当て直そうという論考が、このハイネによるエッセイだ。
「精霊物語」では、各地に生きる妖精、あるいは目に見えない小人といった存在に注目。人々を助けたり、いたずらをしたり、時には愛し合ったりもする彼らは、土地ごとに、エルフェ、トイフェル、その他様々な呼び名で親しまれていたが、やがて悪魔の眷属のように分類されてしまう。そして伝承の一つの形のように紹介している詩編は、実はハイネ自身の作なのだという。当時の読者の大多数はハイネの創作とは気付かずに、清純と背徳の混交したこの美しい作品に魅せられ、酔わされたことだろう。
さらに「流刑の神々」では、神話でおなじみどころか、その中心にかつてはそそり立っていた神々が、この時代にどんな扱いにまで堕ちてしまったのかが紹介される。バッカスは黒ミサもどきに祭り上げられ、アポロンは牧童となりながらも迫害され、ユピテルにいたっては北極海の小島でくじら漁をして暮らしているのだという。これらも様々な経路で聞き知ったように書いているが、落魄の哀れさの迫力は当然ハイネによる脚色によっているだろう。
失われようとする伝統についてはハイネは先人の研究を参照しているようだが、その価値を訴える表現力には爆発的なものを感じる。なにより正統的な信仰に異を唱えるというリスクを冒すためには、美を求めるという立場で、またそれを裏付ける名声の力も必要だったのだろう。グリムを初めとして土着の精神文化に再び光を当てようとするムーブメントの中で、ハイネはその立場で求められる役割を十全に果たしたのではないか。
十全どころではない。地道なフィールドワークの成果に対し、生き生きとした感情を吹き込み、人間にとっての意味を与えた、虚実入り交えての手練手管はもの凄いぜ。







