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資源物理学入門(NHKブックス)

資源物理学入門 (NHKブックス)

槌田 敦 (著)

  • 全体の評価 51件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:96627pt
  • 発行年月:1982.9
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3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/11/04 00:34

核廃棄物とエントロピー

投稿者:みどりのひかり(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

エントロピーについて簡単に説明しておきましょう。

 丸いお盆があります。真ん中に線を引くと右側と左側ができます。今、大豆2個と小豆2個をこのお盆に乗せてお盆を揺すり続けます。そのうちに「右側に小豆全部が来て、左側に大豆全部が来る」ということはありそうな現象です。揺すっているうちに、たまたま偶然にそのようになることは充分ありそうなことです。では3個づつではどうでしょうか? これも右側だけに小豆全部が来るという場面は比較的早く訪れそうです。では100個づつではどうでしょうか。これは右側に小豆100個がたまたま偶然に全部集まるということはなかなか起こりそうにありません。1億年くらい揺すり続けても起きないかも知れません。お盆でなくてコップでもいいです。コップに水を90g、エタノールを90g入れます。水分子の数は3×10の24乗個あります。エタノールの分子も10の24乗個くらいあります。コップは常温では空気の分子が外からぶつかっているのでお盆を揺らしているのと同じです。水とエタノールの分子がランダムに動いていて、たまたま偶然にある日ある時コップの右半分にだけ全ての水分子が来るなんていうことがあるでしょうか。宇宙の年齢150億年が経ってもそういうことは起こりそうもありません。一番おこりそうなのは両者が均等に混ざり合った状態です。で一番均等に混ざり合った状態がエントロピーが最も大きい状態です。右半分のエタノール濃度が左半分と等しい状態です。これが右半分のエタノール濃度が左半分の2倍だとか3倍だという状態であればそれは、半々の時に比べてエントロピーが小さい状態にあるということになります。

この資源物理学入門はいろんな種類の大事なことが書かれています。
番号をつけて引用又は紹介をします。

1、エントロピー増大の法則(熱力学の第二法則)は、物事がどの方向に変化するかを示す物理学の法則である。この法則に逆行するような変化は物理現象に限らず、生物でも社会でもありえない。

2、物理学者シュレディンガーは、この法則を適用して生命の本質を説明しようとした。

3、経済学者ボールディングは「生産は、高いエントロピーをもつ屑を生みだすという代償をまぎれもなくなく払って、低いエントロピーの製品をつくりあげる」と指摘した(1960年)

4、廃物は一般にエントロピーが大きく扱いにくい。したがって、それを用いて製品を作るには、回収、分別、最精錬するのに大量のエントロピーを発生させてしまう。そのエントロピーの吸収剤として大量の低エントロピー資源(石油、水など)が消費される。したがって廃物の利用が省資源か、それとも原鉱を用いる方が省資源かは、にわかには断定できない。


著者は原子力発電の電力の算出と、発電し維持する投入の電力の算出を行なっている。その上で次のように述べている。

5、原子力発電は、経済エネルギーを算出するどころか、大量に呑み込んでしまう怪物なのである。つまり、原子力の経済効果というのは原子力から経済エネルギーをつくることではなくて、電力や原子力産業という産業を振興することだけが目標になってしまっている。エネルギー収支が負であっても、電力会社が儲かる機構になっている。つまり、補助金や電気料金制度に支えられた虚構と言うべきだろう。
 原子力の平和利用は今から25年前(この本の出版が1982年ですので1957年頃?)に国際的に解禁された。これをエネルギー問題だと誤解している人が多い。しかし実は軍事問題だったのである。 戦後アメリカとソ連の核開発競争によって、1956年までに合計4万発の核兵器がつくられた。こうなるとこれ以上核兵器を生産しても無意味であった。当時の見通しでは1964年にはアメリカのウラン工場の40%が操業短縮、1966年には60%が遊休することになったという。しかし、それではアメリカの核軍事力は低下してしまう。そこで濃縮ウランの消費先をつくり濃縮工場を操短しないですむようにした。それが原子力発電によるウランの利用なのである。アメリカは原子炉とウラン燃料をダンピングして市場を開拓した。これが原子力は安いという神話をつくったのである。原子力の平和利用と言っているけれどもアメリカの軍事能力を維持しつづけるための平和利用ということになる。

6、このせっぱ詰まった事情のため、原発に伴う種々の問題を見切り発車してしまった。たとえば原子炉事故もそのひとつである。
(佐藤栄佐久著、「知事抹殺」。まさにこの問題と福島県知事、佐藤栄佐久は戦った。)
その中でも最大のものは、放射能のあと始末である

7、また原子力発電はエネルギー収支が成り立つかどうかもわからない。
 
8、日本も原子力発電所を多数作り、ウラン濃縮工場とプルトニウム生産のための再処理工場を建設しようとしている。これはいつでも核兵器に切り換えられる。

9、核融合などという絵空事は議論するにも値しない。これは、水爆や中性子爆弾としてのみ意味があるのである。

以上1、から9、のこと以外にもいろいろ書いているのですが、著者は、原子力発電により発生する放射能の廃棄物をエントロピーの面からも考察しています。

 後戻りしない日本の原子力発電。何だか戦争に突き進んだ昭和の過去を思わされます。いったい誰がこれを止めるのでしょうか。核廃棄物の処理方法なんて全く解決してないのですから。
 たぶん日本政府の誰かが原爆が欲しかったのでしょう。原爆を持つ必要があると考えたのでしょう。でも、猛烈な反対があるから表だってそれは言えないので原子力発電でその準備をしているのかも知れません。

 原子力発電所をミサイルで攻撃されたり、サリンをまいて職員を殺しておいて原子力発電所を爆発されるなんてことになったら大変です。

 そのための防衛に必要な費用まで考えれば、石炭や石油の火力発電所の方がはるかに安く上がるのではないでしょうか。

そんなことを考えさせられる「資源物理学入門」なのです。


参考図書

マックスウェルの悪魔

なおこの「資源物理学入門」の著者は、「マックスウェルの悪魔」の著者のエントロピーに対する考え方を批判しております。


あなたはコンピュータを理解していますか
情報理論で使われるエントロピー関数が出て来ます。


不落樽号の旅
これは熱力学の第二法則に逆らって生まれた陰陽師などが出てきたりする戯曲とも小説ともつかぬ作品です。
理系文系を問わずお勧めします。

知事抹殺_つくられた福島県汚職事件

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