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言わなければよかったのに日記(中公文庫)

  • 出版社:中央公論社
  • レーベル:中公文庫
  • サイズ:16cm/269p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-12-201466-2

言わなければよかったのに日記 (中公文庫)

深沢 七郎 (著)

  • 全体の評価 4.52件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:66018pt
  • 発行年月:1987.11
  • 発送可能日:購入できません
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収録作品一覧- 「言わなければよかったのに日記」

言わなければよかったのに日記 11−53
とてもじゃないけど日記 54−95
銘木さがし 96−108

ユーザーレビュー- 「言わなければよかったのに日記」

全体の評価
4.5
評価内訳 全て(2件)
★★★★★(1件)
★★★★☆(1件)
★★★☆☆(0件)
★★☆☆☆(0件)
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2004/12/13 15:04

君を、ずっと待っていたんだ。

投稿者:ツキ カオリ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 このところ、物理的制約が重なり、なかなか書評を書くことができなかった。その間に、我々「鉄人の使命」(?!)について、つらつらと考えてみた。

 「鉄人の使命」は、シンプルにただ一つ。
 良書を紹介すること。
 これに尽きると思う。

 決して「いいと思った率」や「はい、いいえボタンをクリックした回数」を競うことではない。というよりも、良書がそれなりの形で紹介されていれば、多少の上下はあったとしても「率」が極端に悪くなる訳がなく、自ずと評価は付いてくるはずである。

 我々「鉄人」の努力は、良書をなるべく最適の形で紹介するために書評を磨き上げる、前向きなものにこそ、払われるべきではないのか。

 などと考えているうちに、出会ってしまったのが、この本である。

 この本は何年も前から、ずっと探していた。品切れで古本屋にすらなかったのだ。噂が噂を呼び、期待と妄想が膨らんでいた。ところが奥付を見ると、既に2003年8月に復刊しているではないか。「一年以上も気付かなくって、ごめんね、深沢君」の心境である。

 この『言わなければ良かったのに日記』は、あの『楢山節考』を書いた深沢七郎のエッセイである。深沢は、デビュー作の『楢山節考』が、三島由紀夫等に高く評価されたお陰で、いきなり時の人となり、一流の文壇の人達と交流する機会をたくさん得る。その人達と交じわる時でも、決して、えらぶらず、我が道を行くのが、深沢君なのである。

 深沢君はある時、山梨県石和の自宅にある月見草を、石坂洋次郎先生のお宅の庭に植えてもらいたいと、お屋敷まで持参してきた。だが、入り口までやって来て、深沢君は、急に不安になる。果たして喜んでもらえるのだろうか、厚かましくないだろうか、とでも考えたのだろう。

 玄関の前に立ったが(こんなものを持って来てしまった)と思うと気がひけてしまった。

 と、ご当人も正直に告白している。

 さて、問題だ。
 深沢君は、この後、どういう行動を取ったのだろうか?

 この部分も含めて、深沢君の面白さ、凄さは、ここに、これ以上書いてしまっては半減してしまう。ぜひ本書を手に取って、確認してほしい。
 ついで、と言っては何だが、『楢山節考』を未読で、ご興味がある方はぜひ併せて読んでみてほしい。文庫が出ているが、『東京のプリンスたち』という小粋な短編も掲載されている。

 かつて日本には、このような、優秀なのに謙虚でユーモラスな人、がいたのだなあ。 この『日記』を手にして、しみじみそう思う。
 こういう人達の足跡を辿ることができるから、やはり本を読むことを止められない。そういう本、すなわちいい出会いがあった時には、微力ながら、紹介したい。
 紹介するのには、まだまだ努力不足なので、さらに沢山の本を読まねばならないのである。

 古き良き時代の日本がわかる1册である。

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7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2005/05/29 00:58

ナンセンス文学のはじまり

投稿者:北祭(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

・『楢山節考』の著者・深沢七郎の随筆集。表題の日記は、正宗白鳥、石坂洋次郎、武田泰淳、伊藤整、井伏鱒二らとの思い出ばなしで、一読すれば苦い笑いが止まない。<これはとほうもなく鋭い、ナンセンス文学のはじまりかも知れない>といったのは開高健であった。まったくおっしゃるとおりである。

<ボクは文壇事情を知らないから時々失敗してしまうのだ>、日記はこう始まる。まさか、第一回中央公論新人賞を受賞した作家が何も知らないわけがないよ。。。こう考えてしまうと、深沢七郎を甘く見ることになる。

・深沢七郎が正宗白鳥宅をはじめて訪れたときのこと。家のお庭に池がないことに「変だな?」と思いながら<白鳥の好きな人だとばかり思っていたのに>などとつぶやきつつ、あとを続ける。

<椅子に腰かけて話をして下さるのを聞いているうちに気がついたのは、銘酒で有名な菊正宗の本家の跡取り息子にでも生まれた人ではないかと思った。そんなふうな、大家の家柄の生れの人だと気がついた。そう思えば先生の生まれた家には白鳥が住んでいるような池があるような気がしてきた。念のために、
「先生は酒の・・・、菊正宗の・・・?」
と伺うと、
「ボクはそんな家とは何の関係もないよ」
とおっしゃった。今、考えても、まずいことを云っちゃって、と悔やんでいる>

・ああ、言わなければよかったのに。でも、確かに、正宗白鳥なんていう名前は変テコではある。ほんとうに、まっすぐ聞いてしまうところが深沢七郎の凄いところである。

・深沢七郎は或る変な雑誌にのっていた切りぬきを持ち歩いていた。「作家小唄」という歌である。どこへ行ってもポケットから出して見せるのだ。伊藤整宅を訪れたときのこと。

<伊藤先生にも「作家小唄」の切りぬきをご覧に入れた。

〜ハア・・・
いやだいやだよ ホンヤクものは
雨も降らんのに 傘を貸す
アラ ホラさのさ ゝ

目は通したらしいが読んだりはしないのだ。
「なんですか? これは?」
ときかれて、歌の意味を質問されたのだとボクは勘違いしてしまって、
「雨も降らんのに傘を貸すということは、濡れぎぬを着せられるという意味らしいですよ」
と説明してしまったのである。
「いや、この、切りぬきの歌は、なんの雑誌にあったのですか?」
と云われた。(まずかったなあ、こんなもの出してしまって)と思うと、恥ずかしくなって、クシャクシャにまるめてポケットの中へ押し込んでしまった>

・ああ、よりによって。。。言わなければよかったのに。

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