- 出版社:学習院総務部広報課
- サイズ:18cm/216,2p
- 利用対象:一般
テムズとともに 英国の二年間 (学習院教養新書)
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- 発行年月:1993
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ユーザーレビュー- 「テムズとともに 英国の二年間」
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2010/08/22 01:27
我が国次期天皇の文章を吟味してみる。
投稿者:クーニー(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
ふっと読みたくなる本である。その、ふっと、が10年以上後に起こることもある。そんな、気になる本である。学習院とも皇室とも縁の無い者にとって、皇太子、かつてのヒロノミヤの文章を拝読する機会とはどれだけあるのだろうか。本著は、当時、某百貨店の英国フェアで見つけて、確か700円から1,000円ぐらいの書籍として真っ当な値段で入手したと記憶している。だが、本自体には値段が記載されていない。どうも、本来は非売品らしい。次期天皇の記したモノに値段をつけるなんてけしからん!という配慮なのか不明だが、人に無理矢理に薦めて貸したら、返却されず音信不通のまま現在に至り、再入手してみた。
真面目で誠実なお人柄が滲み出ており、少々、論文調な文体も好感が持てる。無駄が無く、すっきりとしているので読み易い。特殊な皇室言葉が出てくるかと思いきや、現代の標準語で記されており、留学後、数年経ってからの執筆ではあるが、当時の資料や写真も見直しながらの丁寧な構成である。これだけ詳細な留学記を、立場上、明かして構わないのだろうか?当時の護衛官は、交代制だが、常に1人で寮の隣室に居た、とか、留学中はヨーロッパ諸国の要人の邸宅にステイし交流を深めたり、と伯爵やらが実名入りで記されている。歴史の不運な流れで、本流にはなれなかった英国貴族の愚痴を聞く微妙な話もある。惜しいのが、プリンス・ヒロのロマンス話が載っていないことであることか。まあ、あったとしても割愛せざるを得ないのであろう。
予想していたよりも「立場」「身分」という言葉が少ないのが意外である。学生の中でも特別扱いをせずに、「ヒロ」と呼んでもらっていたそうである。街に出ても、一般の留学生というラフな格好で出歩き、銀行に両替しに行ったり、ワインを買いに行ったり、週末は寮のコインランドリーで洗濯をしたり、と留学生活を謳歌する様子が楽しげである。国際交流には、何よりも多趣味なことがプラスになっている。テニスは、すぐに学生同士の試合に呼ばれるほどの腕前だし、ヴィオラも演奏できるので音楽仲間の輪がどんどん広がる。アルコールもそこそこ飲めて、登山も趣味だそうで、留学中も列車で移動し何箇所か制覇したようである。
留学の研究テーマも、現地に行ってから決める、どこのコレッジに行くかも英国側に任せる、というスタンスで、のんびりしている感はあるが、学期前の英語の集中レッスンは、これから英語を学ぶ方には参考になるだろう。入学前の不安な気持ちも正直に記し、プリンスだからといって特別にデキル人間な訳ではないことが良く分かる。テニスのスコアのラヴとフォーティという数え方の意味など、所々に、さらっと薀蓄を語るあたりもスマートだ。国際交流どころか外交までもこなす立場の人間には、幅広い教養と世界情勢やエスプリが必要なのである。素直な性格が災いして?ストレートに感想を言い過ぎて、英国人から軽くたしなめられる場面もあり、それも人間味溢れ、微笑ましい。
思い出は1人では作れない、とプリンスがしみじみと述懐する。そして、英国で真の自由を満喫したそうである。常に護衛官と行動を供にしていても感じる事ができた、その自由とはどんなものだったのだろうか?現実には、皇室の存在には賛否両論があると思う。私も態度保留という立場は変わらないが、まずは、その存在の一部分でも知る事から始めたいと考えている。留学をさせてくれた両親への感謝は述べられているが、国民へのメッセージは記されていない。幼少の頃から帝王学を叩き込まれている身分としては、分かりきった事で、何を今更という気持ちなのかもしれないが、次期象徴天皇としての決意のようなものも読み取りたかった。





