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外交 上

  • 出版社:日本経済新聞社
  • サイズ:20cm/603p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-532-16189-4

外交 上

ヘンリー・A・キッシンジャー (著), 岡崎 久彦 (監訳)

  • 全体の評価 51件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:2,95784pt
  • 発行年月:1996.6
  • 発送可能日:7~21日

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商品説明- 「外交 上」

政治家は避け難い変動をいかに賢く処理したか。いかに上手に平和を守ったか。世界秩序の問題をいかに処理したか。リシュリュー、ビスマルクから現代まで、為政者達の思想を通して近現代外交の全貌を描く。【「TRC MARC」の商品解説】

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ユーザーレビュー- 「外交 上」

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9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/02/09 07:45

アメリカ外交の特異性とその本質

投稿者:dimple(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書「外交」 は、ヘンリー・A・キッシンジャーによるヨーロッパ外交の理論書である。キッシンジャーは、国際政治学者にして合衆国・国務長官を務めた人物として表記される場合が多い。

しかし、本書を読んでみて、彼は「国際政治学者」というよりはむしろ、「戦略理論家」と呼ぶ方がふさわしいように思えた。ちょうどニコロ・マキャヴェッリがフィレンツェ共和国第二書記として対フランス外交を取り仕切ったように、である。

上巻は、17世紀の30年戦争から20世紀の第2次世界大戦終結までを600頁にわたって詳述する。キッシンジャーはヨーロッパ外交政策の2大潮流として、(1)バランス・オブ・パワーを重視する伝統的なパワー・ポリティクスと、(2)外交に個人と同じレベルの道徳・倫理基準を要求するウィルソン主義を挙げる。

バランス・オブ・パワー理論は、レゾン・デタ(=国家理性)という標語を掲げて神聖ローマ帝国の勢力を抑えることに成功した、フランスのリシュリュー枢機卿によって編み出された。リシュリューは、バランス・オブ・パワーのためなら異教徒のオスマン帝国と結ぶことも辞さなかったのである。

そして、このバランス・オブ・パワー理論は、プロイセンのビスマルク公爵の「リアル・ポリティーク」によって洗練の極みに達するのである。ビスマルク公は、複雑極まる19世紀ヨーロッパの国際政治において、多彩な軍事同盟・条約を駆使することで必要最小限度の戦争でもってドイツ統一を成し遂げた。

キッシンジャーは、バランス・オブ・パワー外交を実現した代表的な政治家として、リシュリュー枢機卿(フランス)、メッテルニヒ公爵(オーストリア)、ビスマルク公爵(プロイセン)、スターリン(ソ連)を挙げる。また、イギリスは19世紀後半にいたるまで、一貫としてヨーロッパ政治におけるバランサーであり続けたとする(「光栄ある孤立」)。

他方、アメリカ合衆国に起源をもつウィルソン主義は、バランス・オブ・パワー理論を正面から否定する外交理論である。外交にも倫理的な基準を要求するため、勢力均衡を目的として仮想敵国を想定した軍事同盟を認めない。まして、勢力均衡を目的とした強国同士による勢力範囲の策定や領土分割をすることは断じて許されないとする。

ウィルソン主義は軍事同盟を認めない代わりに多国間の安全保障システムを提唱する。しかし、多国間の安全保障は、戦争を未然に防ぐということは少なく、むしろ戦争が起こってしまった後の対処法に過ぎないというのが本書の主張である。

ウィルソン合衆国大統領は、第1次世界大戦後のベルサイユ講和会議において民族自決主義を援用しながら、この外交理論を最大限に活用した。その結果、オーストリア=ハンガリー帝国が滅亡した跡の東ヨーロッパに多数の小国が濫立することになり、ヨーロッパの地政学的なバランスが著しく害されることになった。

すなわち、ドイツの東部国境が手薄になることにより、西部国境と東部国境への二正面作戦を遂行したいというドイツの野心を絶ちがたい状況を作り出してしまったのである。こうしてベルサイユ体制は崩壊することになった。

本書が一貫して論じていることは、バランス・オブ・パワーが働かない状況が生じたとき、ヨーロッパは常に大きな戦禍に見舞われてきた、というものである。バランス・オブ・パワーは、ある国が領土的野心を容易に実行できないような状況を作り出しておくところにその本質的な意味があるとするのである。

バランス・オブ・パワーは21世紀においても重要な問題である。例えば、今世紀最初の大戦争であるイラク戦争においては、イラクが崩壊したことにより結果的に中東の地政学的なバランスに変化が生じたとはいえないだろうか?つまり、イランのプレゼンスが大きくなることによって、イランの野心が危険水域にまで達するのではないか、ということである。このように、本書は現代の外交を考える上でも重要な指針を与えてくれる名著である。

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