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- カテゴリ:中学生
- 発行年月:1996.12
- 出版社: 偕成社
- サイズ:31cm/30p
- 利用対象:中学生
- ISBN:4-03-963680-5
紙の本
ガドルフの百合
【小学館絵画賞(第44回)】おれの恋は、いまあの百合なのだ。いまあの百合の花なのだ。砕けるなよ。一瞬の稲妻の閃光の中、くっきりと白く浮かびあがる百合に、ガドルフは強く願う...
ガドルフの百合
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商品説明
【小学館絵画賞(第44回)】おれの恋は、いまあの百合なのだ。いまあの百合の花なのだ。砕けるなよ。一瞬の稲妻の閃光の中、くっきりと白く浮かびあがる百合に、ガドルフは強く願う。忘れがたいイメージを残す一編を、はじめて絵本化。小学館絵画賞受賞。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
宮沢 賢治
- 略歴
- 〈ささめや〉1943年東京都生まれ。ヨーロッパ遊学、ニューヨーク放浪を経て、シェルブール美術学校修了。版画家、イラストレーター。絵本に「テントの旅人」、挿絵に「エロシェンコ童話集」など。
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紙の本
心がざわざわする絵本
2000/07/28 19:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:長崎夏海 - この投稿者のレビュー一覧を見る
青白く稲光の中で浮き上がる百合。ガドルフは思う。「おれの恋は、いまあの百合の花なのだ。砕けるなよ。」そして、次に見たものは、もみあう二人の男。一人は豹の毛皮の着物、一人は鳥の王のような真っ黒くなめらかな装い。小さくなって見上げている自分・・・。
この場面が、とにかく心に焼き付いて、忘れられない。言葉も内容も難しいから、高学年から大人向け・・・なのかもしれないけれど、場面に心揺さぶられるのは、小さな子どもも同じ。いやいや子どものほうが、深く理解できるかもしれない。言葉の意味よりも言葉の音感、魂のふるえを感知するのは、子どものほうが優れてるのだから。
さて、これは、まったく不思議な話だ。冒頭の「ハックニー馬のしっぽのような、巫山戯た楊の並木と陶製の白い空との下を、みじめな旅のガドルフは、力いっぱい朝からつづけて歩いて居るりました。」というとこからしてびっくりだ。おいおいどんな道だ?と思いながら、なんとなくイメージできてしまうとこがすごい。ぶりぶり怒って歩くガドルフ(しかもその怒り方が、にわかに雲が重くなった空をみて「卑しいニッケルの粉だ。みだらな光だ。」ときてる。)の絵は、ちっとも嫌そうじゃなくてむしろうれしそうな顔をしているのだけど、「こんな感じ」と、なぜか思ってしまう。稲妻の閃光に浮かび上がる百合をいきなり「おれの恋」と言っちゃうとこも変なんだけど、変と思う前に説得力もっちゃうとこが、これまたすごい。百合はなにか、二人の男はなにか。鮮烈な恋、嫉妬、別れ、いろんな言葉があてはめられるけれど、肝心なのは言葉にならない魂のどこかが揺すぶられてざわざわする『感じ』だ。ささめやゆきの、あったかくてべたついてなくて土の匂いがしてモダンで・・・という絵が、この『感じ』を確かなものにさせている。
解読せずに、この『感じ』を味わうべき本。だから何度読んでも、新鮮! 何を発見するかは、自分だけの秘密ってやつだ。
(長崎夏海/児童文学作家)