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死の泉

  • 出版社:早川書房
  • サイズ:20cm/435p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-15-208114-7

死の泉 (ハヤカワ・ミステリワールド)

皆川 博子 (著)

  • 全体の評価 4.52件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:2,10060pt
  • 発行年月:1997.10
  • 発送可能日:購入できません

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商品説明- 「死の泉」

【吉川英治文学賞(第32回)】第二次世界大戦下のドイツ。ナチの狂気が生んだ悲劇は、15年後の凄惨な復讐劇の発端にすぎなかった−。双頭の去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、様々な題材と騙りとを孕んだ、美と悪と愛の黙示録。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「死の泉」

皆川 博子

略歴
〈皆川博子〉1930年京城生まれ。東京女子大学英文科中退。72年「海と十字架」でデビュー。「壁−旅芝居殺人事件」で日本推理作家協会賞、「恋紅」で直木賞など受賞。他に「花櫓」「笑い姫」等多数。

ユーザーレビュー- 「死の泉」

全体の評価
4.5
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2001/03/29 11:09

圧倒的な読後感…

投稿者:桐矢(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ページを開くと音楽が聞こえてくる。変声前の澄んだ声を持つカストラート、去勢された男性歌手。美しい双子の姉妹。古城の地下に広がる岩塩の洞窟。それらが、多重に絡まり合って幻想的な物語を紡ぐ。そして、ナチスによって行われた忌まわしい人体実験の記憶。
 舞台は、大戦中と、その後のドイツ。激動する運命に翻弄されるマルガレーテ。そして、ナチスの医師クラウスに、美声を愛された少年、エーリヒ。戦争というあまりにも大きな流れの前に良心も善人も悪人も飲み込まれていく。
 マルガレーテが、少しずつ狂っていく様子が、哀しい。美しく幻想的な物語でありながら、緻密に構成されている。
 惜しむらくは、この物語は、ドイツ人作の小説を翻訳したという形式になっているのだが、そのあとがきのほんの数ページで、今まで緻密に組み立てられて来た全てが読者を嘲笑うかのように、崩れてしまう。読者を混沌と恐怖の内に陥れるのが目的なら、立派にはたしたといえるのだろうが、個人的好みとしては、気持ちの悪い、居心地の悪さが残った。それでも、ページを閉じた後も、頭の中の音楽は鳴り止まなかった。

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2001/04/26 01:09

蜘蛛の糸が幾重にも織り込まれた物語

投稿者:ころび(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 穏やかな陽光、集うのは金髪碧眼の姉弟と見まがう3人と1人の幼子。マルガレーテは二十歳、フランツは十歳、エーリヒは七歳になっていただろうか。幼いミヒャエルはまだ何も知らない。ひとときの絵、オーバーザルツベルク。

 ここは、第二次大戦時のドイツ、私生児を生むため若い妊婦が集まり、見目よい小児を選別しSS将校に提供するナチの施設レーベンスボルン−生命の泉−。すべてはここから始まり、そして還る。
 前線へ向かうまでのひととき、若い戦士達は女達と遊ぶ。「生めよ増やせよ」とドイツでも奨励されたわけです。彼らの遊びも遊びではなく、国策に沿った行動となるそうな。マルガレーテもそんな中妊娠するが、爆撃により住居と職を失う。行く当てもなく、噂に聞くレーベンスボルンで子供達の世話をしながら子を産み、我が子を飢餓と混乱から遠ざけるため所長と結婚をする。そして外地から寄せ集められた「よきアーリアン」であるフランツと美声を持つエーリヒを引き取り、混沌に向かう外界から切り離された生活に安住していく。何よりも、誰よりもこの子のために…。そして所長である夫クラウスは、狂気を内包した研究者でありカストラートを信奉する。世俗的倫理がなんだ、ナチ政権の行方がなんだ…。

 思い返せば少ない人物による物語。そして、蜘蛛の糸が幾重にも織り込まれた物語が展開していく。

 かなり凝った構成になっていて表紙→目次と開いていった先にあるのは、またも表紙である(文庫が出たようですが、この辺りどうなっているのだろうか?)。本書は翻訳小説の形を借り、訳者が著者を訪ねるあとがきまでが、一つの形の小説なのです。翻訳形式部分は3章に別れ「I」が一貫して「わたし」マルガレーテの手記・敗戦まで、「II」「III」が敗戦15年後であちこち描写する場所が変わる。そして訳者あとがき。…そして著者皆川博子のあとがきで終わる。

 非常に美しく幻想的な小説。静かで少々変化に乏しいかもしれない「I」ではあるけれど、これがなければ15年後はあり得ない。まこと騙し絵のような…。ラスト近くで思わず「騙されたぁ〜」と声が出るほど、うまく騙してもらえて嬉しい読書でした。中心となる人々にいろいろ思うことはありますが、何を書いてもネタばれしそうなので割愛。小道具は不気味なものを取りそろえているのですが、最後まで表面上の「美」で覆われて気になりませんでした。というか欲を言えば、もっと地底のおどろおどろしさを出してもらってもよかったかなぁ。
 第二時大戦をドイツの側から見る不思議さ。日本のいわゆる庶民感覚を全面に努力忍耐を押し出したものを考えると新鮮でした。ビジュアル的印象は萩尾望都。

 どうも、今少し後に残るものがなかったですね。思い返して絶対的に不足するのは、登場人物の迫力ではないかと。執念、偏執さが足りない。それは、手記でない部分は誰が書いたのか、を考えると「故意に」省いたのかもしれないけれど不満になってしまう。戦後編は動きがあって、読みやすかった。

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