紙の本
医師として生涯をかけた統合失調症への理解を伝えてくれる本
2023/03/23 17:31
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投稿者:ぶんてつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
1966年にウイルス学から転向して精神科医となった中井久夫先生の神戸大学医学部での最終講義(公開講義)。
医療関係者だけでなく、知的公衆にも理解できるようにと、望まれたものであり、出版については最終講義当日に用意していて、途中まで使用した元原稿にもとづいているということで、中井先生の統合失調症(この本では分裂病)に対する取り組みが分かりやすい。
治療法自体については、『精神科治療の覚書』の方を参照してほしいと、「あとがき」にはあるが、医者でない私には本書での中井先生の取り組みを知るだけで、統合失調症についてのイメージが具体化して有益であった。
講義の部分は94ページまでで、その後は詳細な「図版と症例・解説」が付されているが、93ページの次の個所が気になったので引用させていただく。
「分裂病は伝統的に躁うつ病と対照させて眺められてきたのですが、そうでなければならない理由はありません。仮に躁うつ病の代わりに多重人格を置いて分裂病と対比しますと、分裂病には自分が唯一無二の単一人格であり続けようとする悲壮なまでの努力がありありと認められます。何を措いても責任だけはわが身に引き受けようとする努力です。あるいは、人格のユニティ(単一・統一性)の維持を優先するか、コンフリクト(葛藤)の解消を優先させるかによって、ひろく精神障害を二つの系列に分けることができるかもしれません。」
最後に、140ページから3ページにわたる「付録」として、「仕事のみならず、一般に生活再開にあたっての助言」が10個ついているが、中井先生らしい助言だと感じさせられた。
紙の本
わかりやすい
2023/09/07 11:40
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
統合失調症の治療と研究に生涯を尽くした筆者の集大成の一冊で、興味深く読むことができました。わかりやすい言葉で、素晴らしかったです
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中井久夫先生の最終講義の逐語録。先生の研究の概略が一般の人にもそれなりにわかりやすく書いてあるので、これから中井先生の本を読むという人にお勧め。
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偉大な精神医学の研究者・中井久夫氏の神戸大学退官時の講義を書籍化。その後先生は私が通う大学で研究室を開かれた。先生の授業はとても聞き応えがある上に、「昼食後は眠たい。それは体の正常な反応。アフリカンアワーと言ってね、昼寝の時間だ。だから私の授業中も寝ていて結構だよ」とか「人間が耐えるコトのできる“待ち時間”は14分まで。だからデートは15分遅れちゃダメだよ」などといった楽しくて温かい内容の講義だった。本著は統合失調症について学ぶ学生には是非一度読んでいただきたい“バイブル”とも言える一冊。
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O先生が勧めてくれた本。長いことお蔵入りだったけど、時間が出来たので取り出して読んでみた。著者は精神科領域では大変有名なDr.でして、分裂病と言う呼称こそ今では過去のものとなりましたが、この領域の疾病を持つ方々と著者の歩んできた道のりに思いを馳せました。こういう本を読むたびに「自分はなんてちっぽけなんでしょう…」と軽く凹みます(笑)
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まったく知識のない私にとって、とても面白く感じた本でした。
父の書斎で発見し母の紹介で読んだ物。父と母に感謝。
(2010.02.22)
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分裂病専門の医師・研究者である中井久夫の、大学での最終講義という儀式の講演を一冊にまとめた本である。木村敏の現象学的分裂病論に親しい自分にとって、分裂病の様々な症状と身体の経緯などの詳述は、たいへん示唆に富むものであった。やはり実際の臨床現場においては、ハイな「理念型」だけではなく、こういう風に実際的な観察をしていかないといけないんだな、ということを身にしみて僕に自覚させる一冊であった。著者は非常に、熱心な医師であり、その一生懸命さには尊敬を覚えさせるだろう。専門的な本だから、自分にとってはけっこう窮屈であったため、星2つにしてしまった。
2009.1.30-31.
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神戸大学医学部退官時の講義のために準備した文章が元となっている。
94ページまでがその時の文章で、残りは図表と解説になっている。
統合失調症に関する知識の増加を狙って読むというのではあまり期待できない。
知識の増加という意味では、下痢などの身体症状が出るのは回復の兆しだという事を知る事ができた。
科学が一回性の現象や一つしかないものも扱うという言及は、世間の「理系的知に対する批判」の多くと違い同意できるものだった。斎藤環の著作に「恋はこの私のこの相手に対する現象だから恋愛の科学はありえない」というような事を言っていたが、それなら、「特定の山の雪崩に関する知識は他の山の雪崩に関する知識として使えない」というような事になるのでは、というような事が思いつく。
自らの症状をまとまった言葉で語る事ができるのは、症状を対象化している状態だから、少し症状がおさまってきた状態だというのも同意できる。
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医療という名の人間との対話だなぁ。
こういった症例を間近で見たことが無いもので何処か遠くの話に聞こえてくることは否定できないが、まぎれもない現実であり、関わる方々全ての苦闘は当方の想像もつかないものであることが良く分かる。
それにしても本棚にあった本書を再び手に取ってみたのですが、その昔何をきっかけにしてこの本を手にしたんだろう?しかも新刊で購入している模様。
特別この分野に関心がある訳でもなく、まさに偶然の出会いだったんだろうな、と感慨に耽っております。
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最終講義―分裂病私見
(和書)2009年01月27日 23:11
1998 みすず書房 中井 久夫
分裂病(統合失調症)に対する姿勢がとてもよく現れていました。患者に対する医者としての姿勢などとても明確に書かれていて精神科医を目指す人には参考になると思いました。
患者(統失患者)に対する分析又は批判(吟味)はとても詳細に(繊細に)されていて病気として成立する理論的根拠などに対する根本的批判(吟味)の姿勢が存在しています。そこが読んでいて救いになると感じました。
この本では患者ではない人(所謂健常者)に対する姿勢に触れられていませんでした。
自己同一性の幻想に固執するという分裂病者への指摘などありましたが、非分裂病者はどういった精神的姿勢をしているのだろうか?木村敏のアンテ・フェストゥムを指摘してしましたがそれが病気として成立するためにはどういった囲い込みがされるのだろうかなどが面白いところだろうと思います。
柄谷行人は自己同一性の幻想が失われると深刻な病(統合失調症)になると指摘している。彼は事後の立場に立つことと事前の立場に立つことを同時に指摘している。私は自己同一性の幻想を事後の立場から立って見てしまうことが統失になる理由の一つだろうと感じている。それを事前の立場に立ってみることができればそれは反省的又は自由・倫理という言葉で表すことができる存在になるのではないかと感じました。
木村敏のアンテ・フェストゥムによれば事前の立場に立つことは分裂病(統合失調症)の精神的姿勢と言うことになるけれどそこを分裂病者(病気として囲い込まれた者又は病気として成立する理論的根拠を適用された者)と非分裂病者との違いは何処にあるのかが追求されれば面白いところだろうと思った。分裂病(統失)親和性と言われる姿勢を持った人とそうでない人との違いなど面白い指摘が幾つもありました。
そこら辺をこれから追求してみようと思いました。
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https://ameblo.jp/yasuryokei/entry-12778143569.html
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100分で名著で説明されている本である。本文を番組では朗読しているが、それだけではなく、患者が書いた絵の説明が丁寧であり、さらに患者の状態を説明したグラフが丁寧に解説している。
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2023年5月
少し前まで治らないと思われていた統合失調症(分裂病)について、治ると表明し、治るまでのイメージを示す。
20年前、この本の「最終講義」がなされた頃、大学でわたしの受けた心理学の講義では統合失調症は予後不良であると習った。
あの頃は過渡期だったのだろう。治ると言う人はいるが、治ったという元患者を見たことがない、みたいな。
治るという案外地味な過程を丁寧に語り、治療者にイメージさせる。患者にとっても治療者にとっても光のような本だと思った。
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著者のエッセイで精神科医としての仕事ぶりも垣間見てはいたが、こちらはより生々しくその様子が伝わる。個々の症例にある回復までの長い道のり、または予後の悪かった患者たち
昨日、たまたま電車で隣に意味不明の独り言を繰り返す男性と乗り合わせた。あれもこうした困難を抱えている人なのだろうか。もしそうだとして、中井のような救いの手は差し伸べられているのだろうか
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・色々なところで名前を聞くからすごい人なんだろうな〜と思って、なんとなく手に取ってみる。という生半可な理由からでも読んだ自分を褒めたい。後半は添付資料(図)なので、実際の文章は半分ほどの100ページくらい。だけど濃い。無駄がない。
・特に刺さったのは以下の文。
ーー分裂病のどこかに「ふるえるような、いたいたしいほどのやわらかさ」を全く感じない人は治療にたずさわるべきでしょうか、どうでしょうか。実際患者であろうと医者であろうと「心の生ぶ毛がすり切れた人」は本人も不幸ではありますが、周囲の人もそういう人とつき合いたいでしょうか。ーー
読者(受講者)に投げかけてるのはこの部分だけだけど、だからこそ筆者の強いメッセージを感じてしまう。
・相手のしんどさを理解するだけじゃなくて、第三者にもわかるようにするのがプロなんだと思うけど、そういう意味で中井先生は本当にすごい。分裂病のしんどさが「なんか分かるかも」ってなる。