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テロリストのパラソル(講談社文庫)

  • 出版社:講談社
  • レーベル:講談社文庫
  • サイズ:15cm/387p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-06-263817-7

テロリストのパラソル (講談社文庫)

藤原 伊織 (著)

  • 全体の評価 49件のユーザーレビュー
  • あなたの評価 この商品を評価して本棚に反映 評価しました! ×
  • 税込価格:65018pt
  • 発行年月:1998.7
  • 発送可能日:24時間
  • 文庫

国内送料無料

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商品説明- 「テロリストのパラソル」

【直木賞(114(1995下半期))】【江戸川乱歩賞(第41回)】【「TRC MARC」の商品解説】

ユーザーレビュー- 「テロリストのパラソル」

全体の評価
4.0
評価内訳 全て(9件)
★★★★★(3件)
★★★★☆(3件)
★★★☆☆(3件)
★★☆☆☆(0件)
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3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2005/06/15 16:32

氏の新作『シリウスの道』が発刊された。氏は食道ガンで闘病中と聞く。氏の早期回復を祈りつつこの代表作を再読した。

投稿者:よっちゃん(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

空には轟音をたてて旋回するヘリコプター。屋上から降りそそぐ火焔ビン、投石。粉塵や地上からの催涙ガスと放水で周囲は白煙にけぶっていた。1969年東大安田講堂。会社に入ってようやく3年がたとうとする頃だった。ここまでいっちまったのか、と市街戦さながらのテレビ映像をくいいるように見ていた。
1995年、この作品を読んだときには20数年前のこんな記憶にとらわれてしまったから、「時の流れにあっても残されるものの重み」が印象に残る名作だったとの思い入れだけで、傑作ミステリーとしてのポイントなど全く気にとめることがなかった。最近になって藤原伊織氏が生存率20%の食道ガン発症で闘病中だと耳にしたことから、10年たってこの代表作を改めて味わってみたいと思った。十年ひと昔と言うがふた昔ほどもまえの作品だと勘違いをしていて「携帯電話」が使われるところで、アレッと、勘違いに気がついた。この十年は二十年に匹敵する密度があったからだろう。
島村圭介、新宿の場末のバーテン、飲んでいなければ手のふるえる重度のアル中、ときに西口地下道のホームレスと寝食を共にする<私>がウィスキーを飲みながら昼寝していた中央公園で無差別の爆破犯行に遭遇する。死者17名、負傷者46名の大惨事だった。死者の中には警察庁現職の幹部が含まれていた。なぜかその晩にはヤクザものの襲撃を受ける。
全共闘闘争の生き残り、1971年に起きた車爆弾事件で殺人罪、爆破物取締罰則違反の容疑者として指名手配された逃亡者<私>にさらにこの犯行に関する捜査の手が及ぶのは明らかだった。園堂優子、死者の中には姓が変わったが当時共に闘い、同棲していた女性が含まれていることを知る。さらに桑野誠、同じ容疑から逃避行をつづけていた親友の名もあった。あのときの三人が22年を経てその瞬間の中央公園に居合わせたのは偶然だったのだろうか。
読者を充分にワクワクさせる謎の提示であり、追いつ追われつのスリリングな展開、そして結末の意外性と、
申し分ない傑作のミステリーだった。
「私はくたびれた中年のアル中にすぎない、あの時代は変色した写真のようなものだ。どこかにずっと眠っていた。それを引っ張り出す気になったことはない。けれどもいま、ふたりの死者がそれを揺り動かしている」
だから昨日までの逃亡者のままでは生きている資格はなくなった。
二人の死者の墓標としてどこかにケジメだけはつけてやる。
またこれは第1級のハードボイルドでもあった。
そして結局、初読の印象そのものがこの作品の本物の値打ちであったと言いたい。
「思考が一瞬停止し、それからいちどきにすべての光景が甦ってきた。私たち三人がすごした日々。それはなにかの痛みに似ていた。目を射る光のような痛みであり、懐かしい痛みのようでもあった。歳月は水のように流れた。私の無知をたどり、二十年以上を流れたのだ。」
そしてホームレスのタツ、ハカセやヤクザの浅井などの脇役、ラストで姿を現す敵役の個性が際だつ。<私>たち三人とそれぞれの登場人物の過去と現在がたどられ、今があるその人生観がこの物語を深いところで完成させている。
「たしかに時がたてば人は変わる。しかしそう言ったこの男こそ、それはいちばん似つかわしくないように思えた」だれもが「この男」にあてはまる人たちである。
それぞれにとっての人生だった。夕日に背を向けて歩いている。足下から自分の長い影が目の前にあってそれから目をそらすことはできない人たちなのだ。と私には思える。
読者の中に、自分にも似たような感傷があるなぁと、一瞬、ページをくる手が休むことになれば、この作品は単にエンターテインメントの傑作ミステリーにとどまらず、その人の記憶にいつまでも残る名作としてちょっと格上げしてもいいだろう。

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1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2003/11/10 01:22

拳より傷が深い掌。我慢と解放、巻き込まれ型エンタメ王道。

投稿者:3307(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

我慢できないものを我慢し、戦えない戦いを引き受ける、島村。
最後の逃避行。時限爆弾が奏でる、淡いレクイエム。

流浪を運命づけられた愚直を抱える島村。彼は何にも向かない。
強いていえば、「島村」にしか成れない。

■ 「私は、欠陥品はやくざにしかなれないんだと思ってたよ」
■ 「おれなら、あんただけは絶対やくざにゃスカウトしねえな。
■ 教会の牧師に転職をすすめるくらい意味ない」
■(——P196)

——と、「奇妙なやくざ」の浅井は言う。

逃亡生活。あの日、友と恋人と自分をなくした。
以来20年、友情に殉じた。最後の戦いは、大切なものを
ゆっくりと手放す時間。

唯一の不満はヒロイン。「天気予報」のエピソードは
心に残るけれど、魅力的な要素は十分に備わっているけれど、
なぜか体温を感じない。

おそらく、描写力の欠如ではない。
そもそも極限下で人間味を求めることが間違いなのか、
あるいは見せ場を作りにくいのか。
いずれにせよ、魅力的な男たちと並べば、薄さを隠せない影。

しかし、それは枝葉末節。本書の主眼は島村の生き方。
妥協しない背骨を羨み、震え、どう賞味するか。

冷めて見せようとメッキした心。
それでも隠せない「熱さ」は、島村の不幸。

■ ひとつしかない窓からは隣のビルに手が届く。だが、空はみえる。
■ ビルの輪郭にうすく切り取られた空にすぎないが、目に染みる
■ 青さが久しぶりだった。
■(——P007)

もう、間に合わない。
損なわれたものも、日々も戻らない。分かり合えない。
だからせめて、堪えてきた思いだけは、そっと楽にさせてやりたい。

失った友と恋人とあの日の自分に、そっと献花する一冊。

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2001/03/30 01:42

絶望のにおいがする作品

投稿者:すの(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 全共闘。なぜか、この作品と同時期に宮崎学氏の「突破者」を読み、そのころ読んだ小林よしのり氏の作品にも全共闘の記述があった。

 それは情報でしかないので自分にとっては知りたいとも思わない歴史の一片だ。大学解体といいながらレポートを書いて卒業する大学生。数で無理を通す無責任な人々。結局大人になっても変に燃え尽きてしまっていて、今の戦後社会の根底を作った世代。

 そしてこの作品にも、そのように批判する人と、その歴史を生き抜いた人が描かれている。両者の認識の溝は埋まらないだろうが、少し優しい認識になるかもしれない。

 登場人物が個性的でかっこよく、文章も読みやすい。それでいて、この作品の根底に流れている雰囲気が絶望そのものといった気がしてならない。

 賞は伊達じゃない。おすすめである。

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2005/04/13 15:09

「くたびれたアル中男」の内に秘めた輝きに魅せられました。

投稿者:いくら(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

文庫で出たら絶対読むぞ!と楽しみにしていた作品でした。
前評判も上々でしたし、安心して読み始めたのですが、展開がとてもスピーディーで全然飽きません。
そして、主人公、島村と周りの人間の会話が非常に魅力的です。
島村は一見すると「くたびれたアル中」という、探偵役でもあるミステリの主人公としては異例のタイプなのですが、事件を追うごとに内に秘めた輝きがキラリと光り始めます。
その魅力の見せ方がとっても自然で好感がもてます。嫌味じゃないんですよね。
いつの間にかただのアル中男が素敵なオジサマになってるの。(笑)
作品の象徴でもありますが、20代の私にとっては遠くて現実感がなかった、大学闘争の細かい描写が印象的です。読んでいるうちに安田講堂事件について詳しく知りたくなりました。
熱くて甘くて、そして破滅的な彼らの青春時代が愛おしかったです。
社会派ミステリは苦手・・・という方もすんなり読める作品だと思います。
導入的な意味でも、試しに読んでみてはいかがでしょうか。
また、社会派ゆえにテーマや背景に気をとられがちですが、本格ミステリとしての側面も充分に楽しめます。上手い具合に伏線が張られていて、読み進めるうちに「あっ!そういえばあの時・・・」と言った驚きが味わえますよ。

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2001/02/19 19:59

心に傷を持つ男達

投稿者:真 (男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 本書は乱歩賞、直木賞を同時に受賞した、ミステリーというジャンルを越えた作品。
 ミステリーとして見ると、伏線の張り方や、プロットが弱い部分があるのは事実だが、本書の魅力はそんなところにあるのではない。作者の見事な描写力によって描き出される、主人公や、周りの人々。過去に起こった事件のために、社会から脱落した、心に傷を持つ男達。
 ミステリーとしては満足できるものではないが、それを越えた何かがある貴重な作品。

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2000/11/16 20:57

こなれた会話文に思わずニヤリ

投稿者:健志(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 史上初の乱歩賞&直木賞W受賞作ということで、なにげなく冷やかし半分で読んでみたのですが、これが実に面白い! 冒頭から話に引き込まれ、一気に読み通してしまいます。

 主人公はアル中のバーテンダー。公園の一角で、バイオリ二ストを目指す少女との会話から物語は始まります。女の子が去った後は、宗教の勧誘をしている青年との粋なやりとり。
 そんな穏やかな風景が爆弾騒ぎで一転し、突如物語は重苦しい緊張感を帯びます。それまで静かに平和な暮らしをしていた主人公が背景の見えない事件に巻き込まれて、嫌がうえにも古い傷痕を穿り返され、物語は一気に加速していきます。

 こうなると読者はもう目が離せません。主人公の過去を追う者たちによって意外な事実が次々と読者に提示され、と同時に爆弾事件の謎はますます深まっていきます。
 複線は物語のあちらこちらに周到に用意され、それがラストに至る過程で一本の線に繋がっていくのも見事。もっとも、人によってはプロットが若干軟弱、もしくはラストに至るまでの流れが型にはまりすぎていると感じるかもしれませんが。

 例えば、そのラストは人によっては意外性のある衝撃的の結末とはいえるものの、あまりに定番のトリックであるために、推理小説を読み慣れている人ならば薄々感づいてしまう可能性があります。
 このあたりの感想は、各自の読書歴によって思うところも違ってくるのではないでしょうか。

 むしろこの小説の面白さは、練られたプロットもさることながら、それを表現する文章にこそあると思われます。その短く簡潔な文章を繋ぎ、語りにリズムをつけるその手法は、まさにハードボイルド小説のためのもの。タイトで息が詰まりそうなほどの文章が、物語に緊張感と流れを与えます。
 そしてなによりも会話文が巧い! 登場人物の台詞一つ一つに思わずニヤリとさせられることも多く、主役から脇役にいたるまで魅力に溢れた人物ばかりです。

 冒頭からラストまで全く無駄のない構成に、誰もが一気に読んでしまうのではないでしょうか。あまりにテンポ良く話が進んでいくので、栞を挟む暇もないほどです。
 エンターテイメント小説として、これほどまでに吸引力を持つ作品もそうざらにはないでしょう。自信をもって人に勧めることの出来る一冊です。

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2002/02/24 08:35

雰囲気に酔えばそれなり読める

投稿者:かけだし読書レビュアー(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ミステリーというよりもハードボイルドっぽい。主人公はうらぶれたアル中のバーテンダーだが、これがめっぽう渋い。少なくても路地裏でゲロを吐いているタイプではない。やるときはやる、何処か昔気質の男である。物語の方はテロリストも関係しているが、陰謀や組織の全容を解明、といった類のものではなく、個性豊かな登場人物と気だるい雰囲気を楽しむような内容。ただ、主人公やインテリヤクザの浅井も含めて、頭がキレる人物が多すぎるような気がする。読み手を無視して勝手に話が進展しているような箇所が気になった。

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2001/08/22 15:13

細かいところは気にせずに……

投稿者:ダメ太郎(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 今更ながらという感もあるが、本書は江戸川乱歩賞と直木賞をダブル受賞したベストセラーである。アル中のバーテンダーである主人公が東京都心で起こった爆破事件に巻き込まれ、事件の全容を解明するという物語である。本書の解説を見てもわかるように、色々な人がこの作品を絶賛しているようなので、ここでは欠点と思われる点をいくつか上げてみる。ます、主人公を含め登場人物の全ての者の口が軽すぎる。自分のことを何から何までペラペラと喋りまくる。著者は過去を喋らせることで物語を進行させていこうとしているのだが、人生相談でもあるまいし、だれもが自分の過去を喋りまくるのは納得がいかない。次に、主人公のアル中である。私はアル中に関して詳しいわけではないが、一日中ウイスキーを飲みながら、それ以外の点では一端のヒーローのごとく振舞うことなど可能であるのか疑問である。最後に、セリフがくさすぎる。特に主人公と塔子との会話は赤面するほどである。
 と、まあ、このような欠点をあげてはみたものの、本書が「読ませる」のは事実である。ヒマな時間を楽しく過ごすには最適の一冊である。あまり細かいところは気にせずに読む本であろう。

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2000/12/27 23:10

人の昔と今、積み上げられた人の歴史。

投稿者:T2 (男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 この本を手にとってみたきっかけは単純なものです。そう、この本は受賞作品なのです。しかも、かの有名な江戸川乱歩賞と直木賞をW受賞しているというのだから読むしかないでしょう。賞を取った作品が面白いって決まっているわけじゃないけど、やっぱり作品を選ぶ要素にはなるもの。

 アル中のバーテン島村は今日も昼から酒を飲みながらベンチに座っていた。いつもの場所、いつもの時間、いつもの風景。突然の爆発の音、異質な音。彼はその音を知っていた。後にその爆発事故で彼の昔の恋人、そして仲間が死んだことがわかる。偶然過ぎる事故。そして身に降りかかるヤクザからの警告。彼のまわりが急回転で動いていた。そして彼も動き始めた。

 端的なのに繊細な描写、人物から滲み出る哀愁、扱うテーマの奥深さなど文学的側面はとても綺麗な作品というのは間違いないと思うのです。時とともに積み上げられた人の歴史と、その上に生きる今を物語全体でしっかりと描けていてそれを感じることはできたかも。会話もとてもテンポよく美しいし、まさに作品として“整っている”。

 と、それは読了後だから言えること。読んでいる最中はあまり魅力を感じることができなかった。ちょっと読むのに苦労した感じです。謎のほころばせ方も普通だし、主人公への魅力というのもそれほど感じ取れなかったのがやや残念。哀愁とくたびれた中にも凛とした芯が通った場面があっても良かったかなぁ。もっと荒削りでも良いから、グイグイと読者を引っ張る場面が欲しかった。

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