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紙の本
李欧 (講談社文庫)
著者 高村 薫 (著)
李歐よ君は大陸の覇者になれぼくは君の夢を見るから――惚れたって言えよ――。美貌の殺し屋は言った。その名は李歐。平凡なアルバイト学生だった吉田一彰は、その日、運命に出会った...
李欧 (講談社文庫)
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商品説明
李歐よ君は大陸の覇者になれぼくは君の夢を見るから――
惚れたって言えよ――。美貌の殺し屋は言った。その名は李歐。平凡なアルバイト学生だった吉田一彰は、その日、運命に出会った。ともに22歳。しかし、2人が見た大陸の夢は遠く厳しく、15年の月日が2つの魂をひきさいた。
『わが手に拳銃を』を下敷にしてあらたに書き下ろす美しく壮大な青春の物語。
とめどなく広がっていく夢想のどこかに、その夜は壮大な気分と絶望の両方が根を下ろしているのを感じながら、一彰は普段は滅多にしないのに、久々に声に出して李歐の名を呼んでみた。それは、たっぷり震えてかすれ、まるで初めて恋人の名を呼んだみたいだと、自分でも可笑しかった。――本文より【商品解説】
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紙の本
男の友情とはかくも美しく、強くあるものなのか
2002/09/20 00:23
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:礒崎 礼 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人である主人公と、中国人である李欧との出会い、そして別れ。
わずかな時間しか共有できず、しかし強い絆で結ばれた2人はそれぞれがお互いを想いながら別の人生を歩み、長い年月を得て存在を認め合う。他の誰でも代わりにはなれない、絶対的な存在感。まるで恋のようなその感情を巧みに表現している。クライマックスも素晴らしい。
作者の旧作「我が手に拳銃を」をベースに、大幅な加筆・変更を加えたこの作品。
ハードボイルドが際立った旧作に比べ、香港マフィアの殺し屋李欧を妖しい魅力たっぷりの鼻持ちならない美男子に仕立て上げたところに作者の狙いがあったように感じられる。
読者はまんまとその罠にひっかかり、李欧の人生、一挙一動に知らずともがな惹きつけられるはず。
紙の本
一歩間違えばとんでも本なのかもしれないけど、これは傑作
2002/07/26 08:08
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カレン - この投稿者のレビュー一覧を見る
華やかできまぐれ、まれに見る整った顔立ち、殺し屋であり、フィリピンでは反政府軍の指導者でもあった季欧。まるで少女マンガの主人公のよう。
対照的にとても高村薫的な一彰は、寡黙でしんぼう強い。
これがなんと再会シーンで李欧は一彰にルージュをひくと耳元でなにかささやくのだ。それで「惚れたって言えよ」なんだから、なんて奇怪な本なんだ、としばしページを閉じて唖然とした。
しかしこの世界にあってはそのぶっとびぶりも気にならなくなって、自然に感じられるようになるから不思議。
恐るべし、高村薫。
油まみれの旋盤工場で働くコリアンや中国人の男たち、反共、親共、拳銃と汗臭い、男くさい世界と、白い面が妖しくも美しい李欧と、みなを狂わせる工場の桜のなまめかしいコントラストが見事。
紙の本
夢のすがた
2001/02/04 18:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ほし - この投稿者のレビュー一覧を見る
出会って、別れて、再び出会う。ただそれだけの話なのに、磁石のように引きつけて離さない不思議な魅力のある本だ。
高村薫は、どの作品を読んでもハズレなしという化け物作家なのだが、ただし、作風は、良く言えば重厚、悪く言えば重苦しい。
本書は、従来の作品とは異なり、春で始まり春で終わる明るい色彩が特徴だ。
文庫という手に取りやすいスタイルでもあることだし、初心者には、本書か短編集の「地を這う虫」をすすめたい。
ちなみに、本書は、「わが手に拳銃を」という作品を文庫化する際に、作者がこのままでは文庫化できないと判断し、元の文章をただの一行も使わずに全て書き下ろし、タイトルまで変更した、という曰く付きの代物である。下敷きとなった「わが手に拳銃を」と読み比べてみるのも楽しい。
高村薫には改稿癖があるので、ハードカバー版と文庫版の中身がまったくの別物ということが珍しくない。中には「神の火」のように改稿前の作品が絶版になった例もあるので、ファンならば両方買い揃えておくことを老婆心から忠告しておく。
紙の本
真剣勝負
2002/07/20 13:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あさの - この投稿者のレビュー一覧を見る
参った。
そうなるだろうと思ったから、刊行されてから二年も待ったのに。
読み終わって二日たった今でも恋狂いにでもなったかのように頭の中からラストの桜のイメージがまといついて離れない。どうしてこんなに苦しいのかと思う。読み進むことがもったいなくて、一日に二十ページほどを読み進んではやめ、自宅でこの本を開いたことはなかった。そうして四週間ほど手元に置いておいたのだけれど、ついに一昨日、意を決して最終章を一気に読んだ。
刊行されてから一年近く購入を控えていた。
『わが手に拳銃を』のリメイクだということもひっかかっていたのだと思う(結果的には杞憂だったけれども。すくなくとも表面上は)。五年を経て、作者が書かなければならなかった物語はその前身とはすっかり別のものになっていた。淡々と年が進む。より深く、身の内にもぐり込むような静謐さ、鮮やかさがたまらない。こんな物語を書く人が憎いと思う一方で、書き終えた瞬間にやはり小説は作者を、そして読者をも置き去りにするのだとぼんやりと思う。
高村作品を読むのは一種の真剣勝負だ。
へとへとになる、そして魂ごと、もっていかれてしまう。
紙の本
ベターハーフとの出会い
2001/09/13 12:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちょこらんたん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「大陸」というキーワードがこの本には散りばめられている。偶然に出会った一彰と李歐。平凡なアルバイト学生と美貌の殺し屋が、どうしてこんなにも強く惹かれあうのか。二人が共に夢見た壮大な「大陸」での生活。出会い、すれ違い、そしてまたひきつけられて、十五年の月日は二人の魂を芳醇なものに変えていく。十五年という歳月は決して回り道ではない。「時を数えるな。今から李歐が時計だ」。そうして待ち続けた一彰の元に李歐は帰ってくる。互いの心臓に代わる代わる接吻をし、とうの昔に見つけた生涯の伴侶とやっと抱き合えた二人だった。
紙の本
再会を求めて
2003/05/20 21:48
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:木こり - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルの‘李歐’とは美貌の殺し屋の名前。彼にふさわしい、美しい名前だ。しかし李歐が実際に登場するシーンはごくわずか。大部分は主人公一彰が“李歐と離れている”時間が描かれている。本当に気が遠くなるくらい長い時間、相手を待ち、あるいは待たせる。それこそ、読んでいるほうがもどかしくなるほどに。
二人は友達か、恋人か。その関係をカテゴライズするのは難しいし、あまり意味がない。あえていうならば作中にある‘心肝=特別な人’という表現が一番しっくり来るように思う。出会ったときから特別で、それは年月を経ても変わることがなかった。変えなかった、変えさせなかったというほうが正確かもしれない。離れている間も李歐は時々ふと影を覗かせる。その影がまた、強烈で美しいのだ。だからたとえ一彰が李歐への想いを変えたくても、なくしたくても、きっとできなかっただろう。
物語は一彰の視点で綴られているため、李歐の心情を察することはほとんどできない。ただでさえつかみ所のない人物だし(そこが魅力的なのだが)、とにかく登場場面が少ない。それだけに二人の別れのシーンは印象的だった。突然、激情をあらわにする李歐に胸が苦しくなる。
別れたその瞬間から、私は二人の再会を待ち望むようになってしまったのだ。
紙の本
五千本の桜
2001/12/11 00:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:TAIRA - この投稿者のレビュー一覧を見る
「李欧。いつか大陸へ連れ出してくれ。約束してくれ。」
スパイ、ギャング、実業家、殺し屋。様々な顔を持つ李欧。彼に出会った時、吉田一彰の運命は大きく動き出した。政治と歴史に呑み込まれ、15年という時が二人を引き裂いてもなお、お互いの存在は絶対だった。
そして、李欧は再び一彰の前に姿を現す。15年前の約束を果たすために…。
『わが手に拳銃を』を下敷きに書き下ろされたものであるが、だいぶ感じが違う内容になっている。個人的には、『李欧』の方がお気に入り。『わが手に拳銃を』に比べると一彰の人生に対するやる気の無さと、李欧の色気が三割増し。一彰と李欧の妖しい会話が素敵なので見所の一つだと勝手に思っている。2冊を続けて読むのも又一興。
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主人公の孤独
2021/06/30 11:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MR1110 - この投稿者のレビュー一覧を見る
知らず知らずのうちに幼少期からアンダーグラウンドの世界が身近にあった主人公。一見その場その場で環境に適応してるように見えて常に孤独感が漂います。
紙の本
狂おしいほどの憧れの行方。
2001/06/17 21:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みやぎあや - この投稿者のレビュー一覧を見る
高村薫が『わが手に拳銃を』の文庫化として書き下ろした『李歐』。内容も全く異なり、前者がハードボイルドならば後者は青春小説、といった具合。まあ、どちらも“ミステリー”で括ればひとつなのだが。
君は大陸の覇者になれ。ぼくは君の夢を見るから…。
帯にあるこの一文が、この小説を何よりもよく物語っていると思う。『わが手〜』ではリ・オウと対等で共犯者のような関係になる一彰が、この小説では完全に待つ側に回り、李歐のことを見守って彼を迎える家族の役割を担う。その他の登場人物も名前こを同じものの、微妙に果たす役割は違う。
何より読後感がまるで違う。ラストが変わったのだから当然といえば当然ながら、読み終わって想像してみる彼らの未来がまるで違う。前作ではこれからも危ない橋を渡りながら世界中飛びまわるのだろうなと思った二人が、今作では地に足のついた穏やかな暮らしを手に入れている。どちらが良い悪いではないものの正直、落ち着いてしまった二人にどこか物足りないような印象を受けた。
余談ですが。組長…彼は一体どうしてあんなことに。。。
紙の本
高村版宝塚花組公演『李歐』
2001/05/22 22:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:螺旋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
過去の重さと分厚い閉塞感の中、世界との接点が希薄になるばかりの日々を送る一彰が、裏社会のとば口でふと邂逅した謎の殺し屋、李歐。若い人生がつかの間交錯し、自ら流れを作り出さずにはおかぬ李歐の鮮やかな軌跡が、流れに逆らわぬ一彰の頑なな心に風穴を開け、命の熱さを吹きこんでいく。憂愁に沈んだ美貌の一彰、その来し方行く末を見守るのは、ただただ満開の桜。う−ん、舞台も決まった、役者も揃った。
淀川べりに広がる工場地帯、金属切削加工の町工場の、十年一日変わらぬ日常的な光景の中にだって、誰にも気づかれずに妖しく息づく命の炎があることを、高村は、艶めかしくも淫靡に描写される金属切削加工のプロセスや、弾丸を撃ちだすその瞬間に全てを捧げる拳銃の細緻なメカニズムに潜む官能性とともに、美しくも清冽に描き出す。
『わが手に拳銃を』の文庫化にあたって、書き直しのつもりが、もとの文章は一行たりと使わず、結局、書き下ろしたという、この『李歐』。それにしても、書き直しを「書き下ろし」せずにはおかぬほど、常に完成度を求め続ける高村は欲が深い。いつでも、一人の人間の熱と、その世界を丸ごと描かずにはおれぬ程、作家としての業が深い。その透徹した目で個の内面を見据え、熱い想いで世界のありようを幻視する高村が、この作品では、従来見せたことのない浪漫的な世界を、とびっきりの美形二人に託し、思いきり楽しんでいるように思える。いわば高村版宝塚歌劇花組公演「李歐」とでもいった感じだろうか。
ノワ−ルな成長小説としての基本は前作と変わらないが、悪の匂いや狂気の質、悲劇の量には変化がみられる。エンディングの違いも好みの別れるところだろうが、この理想主義は作者が最も書き直したかったことの一つではないか。前作も今回も、どっちも私は好きだ。
LIOUはRISOUに良く似ている、中をとりもつ桜のS。
∫∬螺旋式∬∫