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玩具修理者(角川ホラー文庫)

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

小林 泰三 (著)

  • 全体の評価 4.57件のユーザーレビュー
  • あなたの評価 この商品を評価して本棚に反映 評価しました! ×
  • 税込価格:50014pt
  • 発行年月:1999.4
  • 発送可能日:1~3日
  • 文庫

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商品説明- 「玩具修理者」

【日本ホラー小説大賞短編賞(第2回)】【「TRC MARC」の商品解説】

収録作品一覧- 「玩具修理者」

玩具修理者 5-42
酔歩する男 43-213

ユーザーレビュー- 「玩具修理者」

全体の評価
4.5
評価内訳 全て(7件)
★★★★★(1件)
★★★★☆(5件)
★★★☆☆(0件)
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★☆☆☆☆(0件)

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2002/02/15 02:23

玩具修理者

投稿者:akizawa(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 玩具修理者
 ☆☆☆☆☆

 思想
 生きていることと死んでいることの違いは何か? その答えは、境界にあると示されます。読んでみれば分かります。

 内容
 どんなものでも直してくれる玩具修理者。ある日、あやまって殺してしまった弟を…。玩具修理者はどうするのか? 想像力が豊かで、心臓の悪いかたは、ご遠慮ください。

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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2003/12/23 12:09

SFとホラーは対立要素ではない

投稿者:king(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

短篇「玩具修理者」と中篇「酔歩する男」を収録している。小林泰三という作家を読むのは初めてであるが、「酔歩する男」でがっちりとSFの醍醐味を味わわされた。他も読んでみようと思わせるものがある。

「玩具修理者」は、ホラー小説大賞をとった作品で、何でも直す不思議な人物(性別、年齢、国籍不詳の謎めいた人物)「玩具修理者」のところに、誤って死なせてしまった弟を持ち込んで、なおしてもらおうとする話、である。この作品は、語り手と聞き手の関係と話の内容がちゃんとオチを構成するようになっていて、上手いできなのだが、傑作と言うほどではないと思う。これはある種の人間存在の危機、自己存在の危機をふくんだ話なのだが、ディックなどであればアンドロイドを用いるところに、生々しい臓物がでてくるところは面白い。

「玩具修理者」はディック的でもあると感じたが、「酔歩する男」ではそういったSF的な思考とも呼ぶべきものが全面的に展開されている。これはもう完全なSFといっていい。

アイデアの基本にあるのは量子論の観測問題である。ミクロな量子の世界では、例えば電子の位置を知ろうと観測すれば、エネルギーを測定できず、エネルギーを測定しようとすると、位置がわからないという奇怪な現象がある。電子の位置は確率でしか表記できず、実定的な測定はできないのである。しかし、そこでじっさいに測定を行うと、その確率が収束し、そこに電子が観測される。これが「波動関数の収束」と呼ばれる現象である(ここらへんは聞きかじり知識なので、細かくは各自調べてほしい)。
この作品の奇怪さは、その現象をマクロな領域に拡大し(ここに飛躍があるのだが)、時間移動の原理としている点である。観測を意識の介入と解釈し、その観測を行う意識に時間という「向き」を与えている器官(もちろんこれは小説の創造である)を破壊すれば、観測という時間の流れを変えて、過去に行くことができる、という理論が登場する。
なんだか訳がわからないが、そこらへんは読んでいけばなんとか理解できる。
もともと、量子論そのものが世界の変革をわれわれにもたらすような不思議な理論だった。昔、相対性理論や量子論やらの本をわからないなりに読んでいたときの、あの世界観の変貌、それこそがわたしにとってのSFである。科学的な方法論や、思考、知見が、いかに現実を世界を違ったものにしてしまうか、という面白さである。
「酔歩する男」もまた、認識の枠組みそのものを改変しようと試みる。それは時間の連続性であり、意識の連続性への懐疑である。それが、ホラーとしての体裁をも彼の小説に与えているのであるが、基本にあるのはSF的な思考であるように思う。
「酔歩する男」には、「貸金庫」などのグレッグ・イーガンのの諸篇が思い浮かぶ。ディック、イーガンと続く、アイデンティティクライシスへの関心が、彼らにはある。わたしが、わたしであることの不思議さへの関心である。
「酔歩する男」の二人の男の数奇な運命をたどってきた読み手は、なにか不安にさいなまれる瞬間を味わうのではないだろうか。おそらくそれが、わたしがSFに求めてきたものであり、その意味で小林泰三のこの作品はわたしにとって優れたSFなのである。そしてまた、この恐怖、不安の要素はディックも併せ持っている物であり、優れた小説がもたらす日常の「当然」への解体が持つ効果でもある。

物語の発端の青春小説じみた三角関係が次第に狂いだし、しまいには能力者の絶望的な孤独という展開にまで至る破天荒さは、ある種のB級っぽさとあわせて、この作家がSFというジャンクとも見なされるジャンルの末裔であることを思い出させる。

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1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2004/05/24 21:01

中編「酔歩する男」。ディックの作品に通じる味わいがあって、これ、面白かったです。

投稿者:風(kaze)(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

小林泰三(こばやし やすみ)さんの作品を初めて読みました。ここでの書評を始め、ネットの書評を見ていたら、収録されている「酔歩する男」がなんか面白そうだぞと興味を持ったから。本を手にして、「玩具修理者」と「酔歩する男」の収録作品を早速読んでみました。

最初の短編「玩具修理者」は、正直なところ、面白くありませんでした。ラヴクラフトのクトゥルフ神話を思い起こさせるホラー小説。おにぎりを食べながら読んだのもマイナスに働いたんでしょう、気持ち悪くなりました。話のオチも途中でなんとなく見当がついてしまったし、話の中の描写もげーっ、気持ち悪ぅ〜てな感じで、これはいまいちでした。

しかし、次の「酔歩する男」はとても面白かった! 最初のうちは、スチャラカ、チャカポコ、『ドグラ・マグラ』を読んだ時のようなぐるぐる感、めまい感に襲われて、訳分かんねーぞーという気持ちでした。そこをこらえて読んでいくうちに、「まるでこりゃあ、ディックみたいじゃないか。現実と夢とが混沌、朦朧として溶け合うようなフィリップ・K・ディックの作品。読み手を不安感に誘っていく手際なんざ、なかなか見事じゃないか。うん、これは面白いね」と、いつの間にか話の中にずるずると引きずり込まれていました。

主な登場人物は三人。小竹田丈夫と血沼壮士のふたりの男と、菟原手児奈という女。紹介した順に、しのだ・たけお、ちぬ・そうじ、うない・てこな と読みます。この三人がA、B、Cであっても、おそらく問題はないでしょう。ともあれ、この三人をめぐる話です。

ある日、気の合う仲間と飲みに来た店で、ひとり残ってタクシーを待っていたわたしこと血沼が、ふとしたことから店にいた小竹田という男と会話する。そこから、妙ちきりんな話が始まっていきます。ふたりの噛み合わない会話を読んでいるうちに、めまいがしてきました。そしてこの辺からすでに、「この現実というものが本当に、あなたが考えているとおりのものなのか? もしかしたら気づいていないだけで、それは全く別の世界なのではないか?」という作品の世界観に、からめとられていたのかもしれません。これはまさに、昔ハマったディックの作品を彷彿とさせる味わい。話の途中、「シュレディンガーの猫」といった量子力学の理論が引き合いに出されたりしますが、そこんところはあまり理解できませんでした。「ふーん、なるほどー。いかにもって感じもするけれど…」と、まあ、分からないなりに面白がって読んでいきました。

で、話はいよいよ迷宮を彷徨うかの如く、とんでもない方向に進んでいきます。この「とんでもなさ」「迷宮感」「不安感」というのがまさにディック・ワールドを思わせるもので、久しぶりにめまいを覚えるおもろい話を堪能させてもらった気がしました。日常見慣れている景色がぐにゃりと歪むような、あるいは底の見えない穴に落ち込んだみたいな、そんな不安感にとらわれました。

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2005/01/06 13:52

まさしく現代の“怪談”ではないかと。

投稿者:purple28(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 “グロい”という噂を聞きつけ(どこから?)手に取ってみましたが、思ったよりグロくなかったです。多分、綾辻の方がもっとグロい(表紙の目玉が綾辻を思い起こさせました)。

 少し読んだだけで、結末も簡単に分かってしまうし。でも、面白くないわけではない。いや、面白いのです。なぜかというと、語りが上手いのですね。

 “ホラー”というと、もうでき上がった小説ですから、物語の善し悪し、内容はもちろん構成や展開のさせ方ですね、それが問題になるのですが、“怪談”といったら、やはり基本は語り口なんだと思います。ホラーではあるけれど、やっぱりこれは怪談ですよ。その辺りがきっと第2回日本ホラー小説大賞短篇小受賞なのかな。

 といいつつも、実は同時収録の中編「酔歩する男」の方が好き。表題作はその事象、事柄、起こったことが怖いのですが、「酔歩する男」は、心理的に恐ろしい。じわじわと真綿で首を絞められるように、読めば読むほど徐々に背筋が冷たくなっていく、そんな感じ。書評などを見ていると、やはりこちらの方が評価が高いようです。


紫微の乱読部屋

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2002/07/28 13:23

独特の世界観がすごい!

投稿者:marikun(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

第ニ回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。
ものすごく力があります!独特の世界を既にデビュー作から作り上げています!本書は、デビュー作の
「玩具修理者」と中編「酔歩する男」を収録しています。
「玩具〜」は、生っ粋のホラーでスプラッタ。もうドロドロなのですが(笑)、ラストには「えっ?!」と
いうオチも用意されていて、一気読みなのです。「酔歩〜」はSFな設定なのですが、使われている理論
も、作品中で分かりやすく解説されていてSFが苦手な人も多分大丈夫なはず…。
こちらもうならされる作品でした。
解説は、異形コレクションでお馴染みの、井上雅彦氏。マニアな褒め方が楽しめますよ〜(笑)

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2000/09/02 07:53

あなたは何者?

投稿者:Kyowya(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 壊れてしまった道雄を直してもらうため、わたしは玩具修理者の所へ行った…。
 性別も、年齢も、国籍も、何も分からない玩具修理者。分かっているのは直してくれる事。おもちゃでも、死んでしまった猫でも、何でも。一緒に並べて、バラバラにして、組み立てて。
 “人間”と言われるモノの条件は何か。脳が、骨が、肉が脂肪が血がある事。思考と感情がある事。それが条件なら、フランケンシュタインは人間か?否、“怪物”だ。では、“修理された人間”は?“人間”なのか?

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2002/07/23 19:24

「常識」への揺さぶり

投稿者:scarecrow(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 玩具修理者は何でも直してくれる。独楽でも、凧でも、ラジコンカーでも……死んだ猫だって。ある日、私は弟を過って死なせてしまう。親に知られぬうちになんとかしなければ。私は弟を玩具修理者の所へ持って行く……(『玩具修理者』)。
 その見知らぬ男は、俺の親友だと名乗った。事実、男は俺の学生時代の事実を次々と言い当てる。しかし、俺には男の記憶はない。男はいったい何者なのか。なぜか男の話を聞いていると嫌な予感がする、だが聞かなければ。自分が正常だと言う事を確認するために……(『酔歩する男』)。

 『玩具修理者』にしろ、『酔歩する男』にしろ、シチュエーションは昼間の喫茶店で話を聞いたり、夜の居酒屋で話を聞いたりといった、ごくありふれたものである。だが、読む進めていくうちに、読者はなんとなく居心地の悪さを感じるかもしれない。それは、これらの作品が、私たちが生まれたときから常識だと信じて疑わなかった事柄に関して、本当はそうではないかもしれない、と言う疑念を突き付けて来るからである。恐怖とは、古来から人魂にしろ幽霊にしろ、自分では理解できない何かと遭遇したときにおこる感情である。とするならば、今まで築き上げてきた現実が現実でなくなってしまう事ほど怖いことはないのではないだろうか……。

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