- 出版社:中央公論新社
- サイズ:16cm/214p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-12-203457-4
生きている兵隊 伏字復元版 (中公文庫)
- 全体の評価
(2件のユーザーレビュー)
- あなたの評価
この商品を評価して本棚に反映
評価しました! ×
- 税込価格:600円(17pt)
- 発行年月:1999.7
- 発送可能日:7~21日
- 本
- 今なら本も電子書籍も全て【ポイント3倍】!!
- hontoポイントスタート記念!文庫もコミックも電子書籍もCDもDVDも全てhontoポイントが3倍!
ユーザーレビュー- 「生きている兵隊 伏字復元版」
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2004/11/21 16:19
戦争の狂気、というのは、今ではありふれたモチーフなわけだけど……。
投稿者:のらねこ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
とりあえず、この作品が書かれた当時、日本はいまだ「敗戦」を経験していない。首脳部の見通しの甘さが兵站の破綻として現れはじめ、現地での略奪を日常とした様子はたしかにちょうどこの作品に書かれたとおりなのだろうなぁ、と、想像するのはたやすいわけだけど、そういう大陸方面の醜聞は建前上あまり伝わっておらず、内地的にはけっこうイケイケな主戦派世論が主流だった頃なわけで、そういうこと考えると、発禁にした当時の当局の判断は、国策上むしろ妥当なものだったと思う。
一方、この作品を上執した側に反戦とか体制批判の意識があったかというと、あったのかもしれないけど、少なくともわたしには、この作品の本文からそういう成分を読みとることはできなかった。
他国の戦地で補給も友軍との連動も稀になった状態では、周囲も誰が戦闘員か非戦闘員か容易に判断できない状況では、精神的に追い詰められて当然だし、そういう一種の極限状態を書いた作品としては、むしろ赤裸々過ぎるほどで、いささか露悪的なきらいはあるにせよ、よく書けていると思う。
たとえば、兵士以上に好戦的で、殺人に対する禁忌感がかなり薄れている従軍僧侶がでてくる。戦場での高揚状態と平時の精神状態とのギャップにとまどい続ける兵卒がでてくる。略奪や暴行に対する感覚が完全に麻痺している、本来なら善良なはずの木訥な兵士もでてくる。
そうした人物造型はたぶんに類型的で、例えば特にベトナム戦争の以後、アメリカで多く制作された厭戦的な映画とも多く共通する造型であると思う。「戦争という極限状態」を正直に描こうとすれば似たような部分が出てくるのは道理なわけだけど、だからこの作品は、新しくもなければ古くもない、「誠実な描写を心がけた作品」である、としか、いいようがないと思う。
酩酊亭亭主
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2005/06/11 17:12
生誕100年のいま注目される戦争の狂気をリアルに描いた作品
投稿者:未来自由(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
石川達三生誕100年の今年、『生きている兵隊』が注目されている。なぜこれほどに注目されているのか。
かつては、反戦小説か、そうではないのかが注目され、賛否評論があったようである。しかし、この小説のもつ価値は反戦小説かどうかには集約できない。
それは、この小説がいかに戦争と戦場、その場にいる兵の心理をリアルに描いたかにあるだろう。
南京虐殺を直接描いているわけではないが、南京占領に近づくまでの兵士の心理的変化を巧みに描いている。敵兵と市民の区別ができなくなり、人を殺すことに平気になっていく心理過程は恐ろしい。
そうなるまでに、幾多の死人を踏み越え、あるいは人を殺してきたか。南京虐殺事件までに、兵士達の人間性は麻痺していた。
解説に、昭和14年2月に作成された陸軍省秘密文書が引用されている。
「戦闘中一番嬉しいものは掠奪で、上官も第一線では見ても知らぬ振りをするから、思う存分掠奪するものもあった」
「ある中隊長は『余り問題が起こらぬように金をやるか、又は用をすましたら後は分からぬように殺しておくようにしろ』と暗に強姦を教えていた」
「戦争に参加した軍人をいちいち調べたら、皆殺人強盗強姦の犯罪者ばかりだろう」
陸軍省自身が分析した実態を、石川達三はリアルに小説にした。リアルであったがゆえに、発行禁止どころか実刑を受けたのだ。政府資料からも、『生きている兵隊』のリアルさが立証されている。
戦争は、人間を変えてしまう。それが戦争である。戦争と人間をリアルに見つめた本作品は、読み直されてしかるべきだろう。特に今の状況には・・・。
いまだに侵略行為を「正しい戦争」といい、南京虐殺事件はでっち上げだという人たちがいる。事実に目を背ける人たちのいることが悲しくてならない。
意見や考え方の違いは仕方がないとしても、事実を否定してしまっては話にならないだろう。







