- 出版社:東京創元社
- サイズ:19cm/277p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-488-01629-4
隠し部屋を査察して (海外文学セレクション)
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- 税込価格:1,995円(57pt)
- 発行年月:2000.7
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商品説明- 「隠し部屋を査察して」
不可解な現象による大騒動の顚末を語る「刈り跡」、全体主義国家のもと、想像力の罪で「隠し部屋」に収容された人々を描く表題作等、ユーモアとグロテスク、謎と奇想に満ちた「語り」と「騙り」の短編集。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧- 「隠し部屋を査察して」
| 隠し部屋を査察して | 9-30 | |
|---|---|---|
| 断片 | 31-36 | |
| パタゴニアの悲しい物語 | 37-50 |
著者紹介- 「隠し部屋を査察して」
エリック・マコーマック
- 略歴
- 〈マコーマック〉1940年スコットランド生まれ。グラスゴー大学卒業後、66年カナダ移住。カレッジで教鞭を取るかたわら創作活動に入る。著書に「パラダイス・モーテル」がある。
ユーザーレビュー- 「隠し部屋を査察して」
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2011/03/26 20:41
ドライでグロテスクな奇想小説
投稿者:king(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
マコーマックはカナダ在住のスコットランド生まれの作家で、これはデビュー作。マコーマックは基本的にグロテスクといっていい奇想を得意とする作家で、本書もそうした奇想を核とした長くても20頁程度の短篇が収められている。
表題作の「隠し部屋を査察して」は、地下牢に閉じこめられた人間を査察する人間を語り手にしつつ、それぞれの部屋の住人がそこに閉じこめられたいきさつを語っていくもので、一人は何千ヘクタールもの人工の森とグロテスクな人工の動物たちを作り上げ、一人は発明の天才だけれども作り上げた自動機械が動物だけでなく彼の妻の友人までをも殺してしまったため密告され、一人は森の中に実物大の軍艦を建造した農夫という具合に、多彩な人物が紹介されていくショウケースのような短篇だ。
解説には全体主義体制下、「想像力の罪」で収監されている、というようなことが書いてあるけれども、登山家や発明家、農夫、魔女など、「クリエイター」あるいは、単純に「遊び」と言いたくなるような行動も出てくる。ひっくるめて言うと、ある秩序の外に出てしまうもの、秩序を惑乱させてしまうもの、というのがここで収監されている。
これにはもちろん、嘘をつく、フィクションを書くことも含まれ、その意味でこの短篇はメタフィクションの趣をも持っていて、ラストの部分はそれを示唆しているようにも取れる。
話はそれるけれど、ちょっと前に青少年健全育成法案関連で、ある参事が「小説は読む人によって様々な理解がある。その点、漫画やアニメは誰が見ても読んでも同じで一つの理解しかできないから」ということを漫画が規制される理由として挙げたことがあった。
開いた口がふさがらないとはこのことで、単一の理解しかできない創作物など原理的にあり得るのだろうか。どんなシンプルなものでも、その人の経験、資質がそれぞれ異なる以上、見る人それぞれの別様の解釈を導き出す。
ここまで圧倒的に間違っているというのは、これは事実を述べているのではなく、「我々はただひとつの理解しか認めない」ということを宣言しているとみるべきだろう。それ以外の理解はつまり、この短篇のように想像力の罪を犯して「隠し部屋」行きだ、ということ。
この参事は芸術にかんする見識がないのではなく(単に「ない」だけなのではなく)そうした「政治」の語法で語っている。現実的に考えれば、この言明は結論が決まっている上での後付の理屈でしかないだろうとはいえ、ここまで見事な全体主義の論理を見ることができたことには感動を覚える。
マコーマックに戻るけれど、いろんな人がいっているように、この人の奇想はやけに乾いていて冷たいところがある。エロティックなもの、グロテスクなものも多いのだけれど、人の負の感情をドライブさせようとするところが見られなくて、ずいぶんあっさりした感触だ。扇情的でないグロテスクさというか、こういう突き放した感覚はなかなか良い。
これは「隠し部屋」のように、本質的には短い掌編的アイデアを次々とみせていくように繋いでいる構成のせいもあるだろう。ひとつひとつを掘り下げず、どんどん次へ行く。
そういう意味でも典型的なのが、もうひとつこの本のなかでもよく取り上げられる短篇「刈り跡」だ。奇想小説のお手本みたいな鮮やかな短篇で、教訓、意味など知ったことかといわんばかりに無意味に通り過ぎていく<刈り跡>が格好良い。
こういう感触はどこかで味わったことがあるな、と思っていたら、最後の短篇でのエピグラフにフリオ・コルタサルが出てきて非常に納得がいった。その「フーガ」はコルタサルの「続いている公園」を思わせる。コルタサルのたとえば「南部高速道路」なんかは「刈り跡」あたりと似たタイプの短篇だとは言えるかも知れない。マコーマック、この作風ならそりゃあコルタサルは好きだろうなと。
というわけで、非常に久し振りにこういう快作の奇想小説を読めてとっても満足した。
Close to the Wall
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2000/10/05 00:15
ブラック・ユーモア臭の強い幻想譚が多い
投稿者:安原顕(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
柴田元幸が「解説」を書いているので読む気になった。彼によれば、スティーヴン・ミルハウザー、バリー・ユアグロー、レベッカ・ブラウンといった作家たちは本国より日本での方が人気が高いらしいが、このマコーマックもその一人のようだ。エリック・マコーマックは1940年、スコットランド生まれだが、1966年からはカナダに移住。70年代よりカレッジで教鞭取るかたわら創作活動を開始、1987年、47歳の時、初の短篇集『隠し部屋を捜査して』でデビュー。87年には長篇小説『パラダイス・モーテル』(増田訳、東京創元社)を世に問い、他にも『The Mysterium 』(92 年)、『The First Blast of the Trumpet Against the Monstrous Regiment of Women』(97 年)などがある。本書には標題作から「フーガ」まで、20本の短篇が収録されているが、例えば「刈り跡」などは、この作家の特色がよく現われているので以下に紹介しておこう。 あれがはじまったのは一年前の今日のこと、7月7日、日曜日、午前6時、カナダのトレンプという町でだった。暁光が東の空を染めはじめた時、霧に覆われた大草原の表面に亀裂が走り始めた。それは西を目指し、時速1600キロという猛スピードで疾走、それが通過した後には幅100 メートル、深さ30メートルの巨大な溝が残り、溝の側面、底面は大理石のようになめらかだった。<刈り跡>は西へ西へと伸び、23台の小型トラック、79台の自家用車の眼前で、ハイウェイがすぱっと削り取られもした。<刈り跡>は日本にも及び、神社仏閣や日本庭園を破壊、幅100 メートルの溝が京都の中心部にもくっきりと刻まれ、10万人もの市民が煙のように消えた。生き物に関するかぎり、<刈り跡>は丸ごと消滅させるか、さもなければ何もしない。無生物に関しては<刈り跡>は容赦なく前進、断固たる進路を辿り、すべてのものを差別なく分断、消滅させるのだ。そして<刈り跡>は終息する。「オチ」が凡庸なため、せっかくの迫力ある幻想も尻すぼみ、何やら寓意、教訓めいた話にもなっているが、ブラック・ユーモア臭の強い幻想譚が多いので、この手の小説が好きな向きには薦めておきたい。







