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祈りの海

  • 出版社:早川書房
  • サイズ:16cm/464p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-15-011337-8

祈りの海 (ハヤカワ文庫 SF)

グレッグ・イーガン (著), 山岸 真 (編・訳)

  • 全体の評価 4.57件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,00828pt
  • 発行年月:2000.12
  • 発送可能日:1~3日
  • 文庫

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商品説明- 「祈りの海」

【星雲賞海外短編部門(第32回)】【「TRC MARC」の商品解説】

収録作品一覧- 「祈りの海」

貸金庫 7-42
キューティ 43-66
ぼくになることを 67-96

ユーザーレビュー- 「祈りの海」

全体の評価
4.5
評価内訳 全て(7件)
★★★★★(3件)
★★★★☆(3件)
★★★☆☆(0件)
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★☆☆☆☆(0件)

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2001/04/24 21:42

不死社会の中の死?

投稿者:キュバン(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 これは中短編集だが中でも特に「ぼくになるために」に焦点をあてる。

 脳の情報をそっくり全てコンピューターや他の脳に写すことで肉体は死んでも意識の不死性を獲得する、という設定のSFは数多い。だがこれは真の不死性の獲得だろうか?

 生き残るのはあくまでもコピーであり、自分自身の意識ではないことは明らかに思える。−−−命題1

 一方この技術が実現し普及した社会を考えてみよう。本体が死んだ後に生き残ったコピーにとって自分は本体が物心ついてからの全ての記憶を持つ本体自身としか感じられない。そしてその記憶には死んだはずなのに生き返った経験も含まれている。このコピーにとってはもう一度死んで別のコピーが生き残ることは真の不死としか感じられないだろう。まして他人にとってはコピーと死んだ本人の区別はできない。
 結果として命題1を正しいと考える人はいなくなり、この技術は不死を実現する素晴らしい科学の勝利ということになり、この社会は存続する。その影で何億もの意識が殺されていることは誰にもわからない。本体が死ぬのが寿命なら良いが「本体の性能が落ちる前に」処置されるとなると事は深刻である。

 この状況は相当リアルで深刻な恐怖だが、命題1の恐怖を正面切って描いたSFを私が読んだのは本書「ぼくになるために」が初めてである。他の作家がよほど脳天気なのか?イーガンが鋭いのか?
 本作品は一応はハッピーエンド?なのだが。

 実は脳のハードウェアを少しずつ置き換えた場合を想定すると命題1も必ずしも正しくないかも知れない点は付記しておこう。

 他の作品にも触れると、「キューティ」「繭」は社会派作品と言えるが極近未来に、いやもう既に実現しうる状況を描いている点で衝撃が大きい。この2作は既に未来小説ではなく現代小説である。
 「誘拐」も考えさせられる作品だ。見方によっては人形に魂を感じる感性は昔からあるじゃないかとも言えるのだが。
 「イェユーカ」は社会悪との対決の物語でラストは感動的。奇しくも現実の世界でもエイズ治療薬のゾロ品問題が起きたが。
 「祈りの海」のテーマは「月があばただらけの岩の塊とわかったらロマンがなくなるのでは?」というのと同じテーマに思えて新鮮味は感じない。設定された社会と人々の描写はおもしろく読める。

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2001/09/30 04:48

新鮮な驚きに満ちあふれた短篇集

投稿者:トリフィド(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 イーガンの作品には、SFというものは、本来みんなこうでなくてはいかんのではないかと思わせるところがある。
 イーガンの作品に触れて驚嘆した時、イーガン最高! イーガン素晴らしい! とイーガンをたたえるだけでなく、ほかのSF作家たちもこういうところまで突っ込んで書いてほしいと思ってしまうのだ。
 イーガンは、現実に私たちが将来見ることになりそうな世界を描く。そこに登場するテクノロジーは、現在のテクノロジーの延長線上にあるオーソドックスなものであり、その世界は、私たちの進路の真正面にある世界なのである。
 そしてそこで登場人物たちが遭遇するシチュエーションというのも、別に読者をあっと言わせる超絶的なプロットの妙技によるものではない。「あ、そういうことになるのか」と思わせる順当なもの、ほとんどその前提から導かれる必然とでもいうべきものだ。だがそれがなんと驚くべきヴィジョンを繰り広げてくれることか。
 オーソドックスなテクノロジーの先にある異様な状況と驚くべき結果を、つまりわれわれの進路の真正面にあるこの驚異を、イーガンほどまっすぐに正面から見据えて、突っ込んで考察し描く人は少ないのではないだろうか。
 というわけで、本書は、ここ何年かでもっとも驚きに満ちた、もっとも素晴らしい短篇集である。SF者は全員読め級である。
 「SFなんて読み飽きたなあ、現実の方がSF的だよ」とぼやいている最近倦怠期を迎えた古くからのSFファンにもおすすめだ。ねぼけまなこがぱっちりしてしまうような新鮮な驚きに満ち満ちた本である。

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2001/08/17 20:02

壮大な自分探し

投稿者:猫 (男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 最新の物理理論などを駆使しているそうだが、そのあたりの良し悪しはわからない。共感できるのは、自分自身への懐疑と世界への漠然とした不安を、丁寧に描いているから。最先端のSFと評価されているようだが、半端な作品よりよほど読みやすい。

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2002/01/13 23:24

新感覚SF、これは科学?それとも宗教?

投稿者:しょいかごねこ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 なにかこう、非常に妙な気分になるSFである。なんかちょっと今までになかったタイプのSFと言う意味でも、特筆すべき短編集である。
 なんというか、SFという手法を使ってはいるのだけれど、解決すべき問題はなにか別のような。いや、こういう表現だったらこれまでにもそういったSFはたくさんあったはずなんだけれど、この本はどこかベクトルが違うような。もしかしたら宗教と言う言葉が一番近いかもしれない。
 もっとも重要な作品は「祈りの海」を含む最後の2編だと思うけれど、個人的には冒頭の「貸金庫」という作品が好きです。人間の生命と言うものの幅を巧みな想像力で広げて、医療関係者らしい愛情をもって描いている。
 ごちゃごちゃ言ったけどとにかく面白い。一度読んで損はないと思う。

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2001/03/03 11:05

静かな夜明けのような読後感

投稿者:桐矢(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ヒュ—ゴー賞・ローカス賞受賞の中・短編集。
 バックアップ用の宝石を頭の中に持つようになった人類の話、はるか遠くの惑星に暮らす人類の話、仮想現実における人類の可能性の話。多彩な11篇が収録されているが、前半の短編と後半の中編では、カラーが違うように思える。
 短編は、奇想天外な設定に頭がぐるぐるするようなアイデア、そしてきっちり落ちが用意されている。それに対し中編は、はっきりした落ちがない。うねるような流れにページをめくっているうちにその世界観にどっぷり漬かってしまう。ずっしりと重量のある長編を読み終えた気分になる。だが長編といっても『宇宙消失』のめくるめくようなトリッキーな感じとも違う。
 どちらにしろ共通しているのは、「自分とは何者か」という永遠に答えのない問いかけがテーマになっているという点だ。
 帯の文句通り、ここにSFの可能性と未来を見たような気がする。

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2001/01/08 19:23

「自分」への疑いが読者を巻き込む

投稿者:OK (男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 なかなか粒揃いの好短編集。印象に残っているのは「貸金庫」(これを冒頭に持ってきているのはとてもよくわかる)「ぼくになることを」「誘拐」「無限の暗殺者」あたり。
 収録作がどれも一人称叙述の小説なのが、「自分」の認識をつねに疑う作風のひとらしい。作中の問題は必ずこの「語り手」を切実な当事者として巻き込みながら展開していく。基本的にどの作品もSFならではの切り口で、たえず「自分の認識」や「自由な意思決定」の臨界点を問いかけるような哲学的で普遍的なたとえ話になっているから、たとえ僕みたいな門外漢の読者でも充分に興味深く、自分にはねかえってくるような意識で読み進めることができる。
 あえていえば『宇宙消失』のような尖鋭さやねじくれた論理世界の暴走する魅力なんかはさほど感じられなかったけれど、読みやすいし初めての人に薦めるのには適していると思う。

from: http://www.geocities.co.jp/Bookend/1079/

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2000/12/04 05:33

センス・オブ・ワンダーのきらめきが

投稿者:こじましゅういち(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 いやぁ、短編だろうが長編だろうが、やっぱりイーガンの作品は面白い!
 この本は、『宇宙消失』『順列都市』などの作品でSF界の話題をさらった新鋭、グレッグ・イーガンの短編集。表題作の『祈りの海』をはじめ、イーガンの持ち味にあふれた短篇を11篇収録している。
 イーガンの作品の魅力は、なんといってもそのアイデアの力強さ。一つのアイデアを核として、こちらの想像を超えた世界をごりごりと構築していくその作風は、他の作家にはない新鮮さにあふれてる。そんなイーガンの作風は、この本に収録されている短篇でもしっかり健在。未来からの通信を扱った『百光年ダイアリー』や、人類共通の祖先イヴ探求の顛末を描いた『ミトコンドリア・イヴ』では、相変わらずの剛直な理論展開が堪能できるし、『放浪者の軌跡』や『無限の暗殺者』といった短篇の中の世界は、もはや一言では言い表せないくらいのぶっ飛んだ状態である。いやはや。
 また、アイデアを冷徹なまでに突き詰めていくその作風は、時として読み手をぞっとさせることも。どうしても子供が欲しい男の話『キューティ』、宿主の人格を模倣する<宝石>の話『ぼくになることを』、バイオテクノロジー企業の事故を調査する男が直面した真実『繭』などの短篇は、作品が訴えてくる内容に落ち着かない気分にさせられる。一方、『貸金庫』『祈りの海』など、叙情的と言ってもいいくらいの作品も存在する。
 そして、これらの作品全てに、長編と変わらぬセンス・オブ・ワンダーのきらめきが見えるのだ。どの作品も、読んだ後できっと満足できるはず。
 少しでもこの本に興味があるのならば、迷うことはない。読むべし!

(こじましゅういち/ライター http://www.na.rim.or.jp/~majio/)

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