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商品説明
嫌米派の評論家、反米派の運動家、対米強硬派の知識人、親米派の作家もそれぞれのアメリカを探す旅に出かけた日本人だった−。第二次世界大戦後太平洋を渡った16人の日本人を描く。98年刊「戦前篇」に次ぐ「戦後篇」。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
アメリカ論早分かり
2001/03/07 13:11
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
親米派阿川尚之氏が親米・嫌米とりまぜた16人の訪米記をご紹介。戦前編もありますが、存命中の人物が多い戦後編のほうが面白い。かつて一世を風靡した都留重人、小田実も阿川氏筆で一刀両断。西部さん、どうしてそこまでアメリカが嫌いなのという疑問をお持ちの方もこの本を読めばその謎が解ける。軽妙酒脱なタッチで書かれた親米保守派の視点が幅広い読者の好感をさそう。
紙の本
アメリカという人工国家は病んでみて、淋しがってみて、そして他国に干渉し、騒ぎを起こして自国の存在意義を自己確認するのだろうか。
2003/07/12 23:06
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
米英という鬼畜と戦った後、意外にも鬼畜のプロパガンダに圧倒された日本人は、幕末や明治の先人とは異なる希望を抱いて太平洋を渡っていった。
日本という国家を背負って鎧兜に身を包んでの渡米というよりも、がむしゃらにアメリカという近代国家を自分のものとして消化したいという個人的願望をオブラートに包んでの渡米が多かったのではと推察する。針の穴からしか見えないアメリカを身体に染み込ませたいという欲望が勝っていたのではと思うが、研究者、実業家、作家、ジャーナリストなど16人が体験したアメリカがこの本には詰まっている。ここに登場する16人意外にも多数の日本人が太平洋を渡ったが、著者のアメリカ体験を交えながら冷静に評論したアメリカ論の本書は一読に値する。親米派、嫌米派、中間派が登場しているが、それぞれに自分が同じ立場だったら親米派になり、嫌米派になり、中間派になるであろうという体験が盛り込まれている。
アメリカを体験した16人が意図的なのか年代順に列記してあり、これがいみじくも日本とアメリカの外交関係の変遷を読んでいるかのようになっていて、その変化がおもしろかった。
海外渡航が満足にできない時代、親しい知人が農業研修生という名目でアメリカに渡った。送られてくるエアメールには本物の外国があり、当時は高価だったコーラが納屋に山積みで、飲み放題と書いてあるだけでアメリカの豊かさに対する憧れが炭酸のように弾けたものだった。朝がた一面の雪景色だった農場が昼には真夏の日差しになり、休みと思っていた農作業に追いまくられたなどという話は作り話としか思えなかった。
ハワイに留学していたある友人は日本からやってくる観光客から日本の硬貨をもらい、ガムの自販機に入れてアメリカ硬貨のお釣りをせしめて小遣いにしていたという。
現在の豊かな日本に出稼ぎにやってくるアジアの人々と彼らが起こす軽犯罪などに、ほんの数十年前の日本人がアメリカでやっていた事にも似たものが見えてくる。
親日派、嫌日派、中間派のアジアの人々がいるが、これから何年かしたらアジアのどこかの国で「日本が見つかりましたか」という本が出るのではないかと思った。
果たして、そのとき、日本人は病んでいるのか、淋しいのか、それとも再びアメリカのように他国に干渉してまでも自国の威力を見せつけるのか、それは分からない。
アメリカを対象にした内容だったが、ふと、戦後の日本という国の立場を振り返らせてくれるものだった。
紙の本
2001/2/4朝刊
2001/02/10 00:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
柔軟なアメリカ論で定評のある著者が、米国に渡った日本人の日記や体験記、見聞録を読み直した。ジョン・万次郎にはじまる十一人を論じた「戦前編」(九八年刊)に続く本書は、経済学者の都留重人、ソニーの盛田昭夫、「何でも見てやろう」の小田実、それに村上春樹まで十六人の多彩な顔ぶれを対象にする。
本書を読むヒントが「戦前編」のあとがきにある。「若いときアメリカへ渡った学者や作家の一部に熱烈な反米主義者が多く見られるのは、不思議な現象だ」。戦後の日本の言論をリードした米国留学経験者たちの精神の葛藤(かっとう)を探ることで、日本人の思想を浮かび上がらせようという狙いがうかがえる。
例えば、文芸評論家の江藤淳の反米姿勢の由来を、著者は留学経験に求める。『アメリカと私』にみられるプリンストン大学のみずみずしい情景描写を評価しつつ、「アメリカは自分を認めた。懐が深いではないか。そう評価したのに、実は少しも受け入れられていなかった」という江藤の失望が、後の「すさまじい情念」を生んだとみる。都合四回の著者自身の留学経験がこうした解釈の基礎にある。
ただ重苦しいだけの本ではない。親交のある安岡章太郎や石井桃子らの項は、米国の懐の深さが現れていて、温かさを感じさせる。「戦前編」と読み比べれば、さらに趣は増す。日本論の秀でた手がかりであると同時に、米国も、そこに生まれた人々や往来した人々の様々な記憶の集積であることに思いを至らせる。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000