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睡魔

  • 出版社:幻冬舎
  • サイズ:20cm/446p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-344-00063-3

睡魔

梁 石日 (著)

  • 全体の評価 46件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,89054pt
  • 発行年月:2001.4
  • 発送可能日:購入できません

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商品説明- 「睡魔」

人はなぜマルチ商法にだまされるのか? 金に目がくらんだ男女を狂わせる完璧なシステムと巧妙なマインドコントロール。自らの体験をもとに人間の欲望の本質を暴く長編小説。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「睡魔」

梁 石日

略歴
〈梁石日〉1936年大阪府生まれ。「血と骨」で第11回山本周五郎賞を受賞。他の著書に「夜を賭けて」「Z」「断層海流」などがある。

ユーザーレビュー- 「睡魔」

全体の評価
4.0
評価内訳 全て(6件)
★★★★★(2件)
★★★★☆(1件)
★★★☆☆(1件)
★★☆☆☆(1件)
★☆☆☆☆(0件)

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2002/02/27 14:46

マルチのヤツらはいいこと言うのだ

投稿者:Snake Hole(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 主人公の趙奉三は大阪で事業に失敗,東京に逃げて来てタクシーの運転手をしていたが,交通事故で続けられなくなり失業。自分の体験を元に小説を出版するも思うようには売れず……ってこの辺,著者自身の体験らしいが,悪友の誘いに乗って健康マットのマルチ商法に突っ込んで行く。
 この健康マットのセールス・トークには大笑いした。いわく,大気中にはニンゲンの健康にいい「磁気」が一定量ある。これがなければ生物は生きていけない。なぜかというと赤血球にはプラスとマイナスがあり,互いに反発することで血液の流れが促進されているからである。ところが現代人は磁気を発している土をアスファルで覆ってしまい,この磁気を吸収できない。この健康マットは表面の突起の下に強力な磁石を多数縫い込んであって不足しがちな磁気を補給できるスグレものである……あんた,アスファルトやコンクリートで磁気が遮られるなら,例えばオレの部屋でコンパスが北を指すのは何故ですか (笑) 。
 いやしかし,このマルチの会社「ジャパン・エース」(もちろん架空の会社である) が二泊三日で行う研修会に参加したみなさんは欲と二人連れだ,この説明をすんなりと受け入れてしまうのである。実際,ああニンゲンというのはこのように洗脳されてしまうのか,うぬぬ,この雰囲気の中に叩き込まれたらオレも危ないかもなと思うくらい,この研修会のシーンはスゴい。
 一個だけ紹介しておこう。見知らぬ同士の参加者にペアを組ませ,一人を壁に向かって立たせる。そしてペアの人を信じて後ろにそのまま倒れろというのだ。そう言われて棒のように倒れられるニンゲンは少ない。すると指導員が「なんで相手を信じないんだ! 他者を信じなければ自分も信じてもらえませんよ! 受け止めてもらえなくてもいいぢゃないですか,受け止めてくれなかった相手は倒れた相手を本当に信頼しますよ! 信じあうことは素晴らしいことなんです!」と叱咤する。
 なかなかいいこと言うぢゃないかと思うヒトもいるかも知れない。が,誰がやってるかを忘れちゃいけない,こういう演出で疑いを持つことに対する罪悪感を植え付けて行くのである。いやはや,小説としても面白いが,今後の人生こういうモンに騙されないための参考書としても有用な一冊と言えよう,掛け値なしにオススメしたい。

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2001/05/18 14:24

みんな目先のお金にせっぱ詰まって生きている

投稿者:ゲレゲレ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 人は目先のお金に困った時に勧誘されると,ねずみ講とわかっていても手を出す。親類,友達を販路にするねずみ講にはまりこむと,自分だけ抜け出すわけにはいかない。楽をしてもうかるはずの親になっても,実際はそうはならない。さらに子が倒れれば共倒れ。勧誘者は,自己実現を話していたのに,いつの間にか我欲の実現に変わっていく説得術のウソなど,フィクションの小説だが内容は非常にリアルだ。この本からヤンソギルにはまりました。

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2001/04/14 16:57

金ができたのが縁の切れ目

投稿者:上六次郎(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 金とは不思議なものである。きれいな金もあれば汚い金もある。金のおかげで物事や人間関係が順調に進むこともあればうまくいかないこともある。金に振り回される人もいれば、うまく使うことのできる人もいる。

 主人公の趙奉三は大阪で事業に失敗し東京へ出てきたが、苦しい生活が続いていた。そんな折、悪友の李南玉から健康マット販売のマルチ商法に誘われる。当初は懐疑的であった趙奉三も金が手に入り、所長の肩書きを得ることによってこのマルチ商法にはまっていく。順調に進んでいたかのように見えた商売ではあったが、当然のことながらやがて限界を迎えることになる。そして在庫商品の盗難事件をきっかけにいっきに破綻に進んでいく。

 本書の中心として研修会と称する洗脳方法が詳細に書かれている。健康マットの販売から新興宗教の教祖になる男の話も出てくるが、システムとして両者に違いはほとんどないのではなかろうか。健康マットを売るか神を売るのかの違いであり、また金が欲しいものが集まるか信仰という名の精神安定剤を求める人たちが集まるかの差だけであろう。文字として冷静に読むとなんとくだらないと思えることが実際にはまかり通ってしまう。

 研修会の記述にも興味を惹かれれたが、個人的には結末の趙奉三と妻のやり取りが圧巻であった。大金を手に入れた趙奉三に対して妻は過去の借金の清算を迫る。そして別れることを切り出し慰謝料をせしめる。金がない間はひたすら耐え、辛抱してきた妻が金ができたことで離婚を決意する。「金の切れ目が縁の切れ目」とはよくいうが「金ができたのが縁の切れ目」にもなるのである。

 金は人と人を結び付けもすれば、引き裂きもする。やはり金は魔物である。

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2001/08/06 00:03

マルチ商法と闘う男たち

投稿者:格 (男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 主人公は趙泰三。大阪から東京へ逃げてきた44歳の在日朝鮮人。タクシー運転手を事故で辞めて、細々と暮らす男。友人の友人から誘われて、いやいやながらも講習会、研修会と参加して、ついに健康マットを売るシステムに巻き込まれる。

 1枚13万円。これを家族、親戚、友人、知人に売り、その売った人間をシステムに巻き込み、売る側に付け、その家族、親戚、友人、知人にまた売っていく。その売上も自分の成績にカウントされ、月商800万を2か月続けると、昇格し、マージンが大きくなる。仕入れが70%から50%になるらしい。もっとも一段階の店子までのシステムは分かるのだが、二段階以降は何パーセント取れるのか分からない。こんな階層性が何段階も成り立つはずはないのだが、そのあたりは説明されない。実際にもそのあたりはいい加減になっているのか。それでも企業は年商1000億になり、趙自身も月商800万をクリアする。このくらいは、こんな商品、システムでもできてしまう、ということなのか。

 講習会、研修会の内容は『カリスマ』に描かれる新興宗教のそれと似ているが、迫力はずっと小さい。こんなもので、簡単に参ってしまうとは到底思えないのだが、その場に参加していると違うのか。

 友人のいい加減に徹している李南玉は分かりやすいのだが、しっかりしているのか、醒めているのか、それともいい加減なのかよく分からない主人公の趙泰三は面白い。ラストも期待を見事に裏切ってくれる。

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2002/03/12 03:05

実録マルチビジネス

投稿者:marikun(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 著者の半自伝的な(?)物語。元タクシー運転手で売れない作家の主人公が、大阪時代の同胞の友人に誘われて「ねずみ講」ビジネスに足を踏み入れる。そのビジネスの隆盛を綴ったものです。
 ねずみ講とかマルチ商法、その実体を著者はものすごく冷めた眼で見つめているので、関心がある人には実体を知るという意味で面白いかも知れません。文学的な新堂冬樹というと、少しはわかりやすいでしょうか? ただ私にはこの著者、もう一つ何かが足りないんですよね… 。

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2001/05/07 18:16

クールなアウトロー作家が描く人間の飽くなき欲望・・・マインドコントロール商法の甘い罠。

投稿者:橋本光恵(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

『睡魔』とは、何と暗示的なタイトルなのだろう。避けがたい心地よさに誘われてついつい眠りに陥ってしまう状況・・・このタイトルで著者がヤン・ソギルならば、一筋縄ではゆかない蟻地獄のような目眩の世界が展開されるのでは、と期待させられる。案の定、彼らしい時代を読み取ったシニカルな視線で、独特の自虐的な物語が紡がれているのだった。

 映画界では、昨年の『シュリ』大ヒット以来、韓国映画ブームが続いているが、実際、様々な分野での在日コリアンのパワーをひしひしと感じる昨今。出版界でもしかり。『死は炎のごとく』が毎日新聞社の“アジア・ノワール”シリーズ第1弾として発表される等、ヤン・ソギルの存在が最近殊にクロースアップされてきたのを感じる。大阪生まれの彼は、東京での10年間のタクシー運転手を経て、その経験を小説に綴った『タクシードライバー』シリーズで作家活動に入り、以後、在日韓国人家族の悲劇を描いた『断層海流』や、長崎の大村朝鮮人収容所を舞台にした『夜を賭けて』等数々の著作を持つが、第11回山本周五郎賞を受賞した『血と骨』(98年)が最近文庫本化されたばかり。この『睡魔』は、「ポンツーン」1999年6月号から10月号、12月号から2000年10月号に連載され、単行本化にあたり大幅に加筆・修正が加えられたものだ。冒頭で主人公の趙奉三が、本人の主観で紹介される。「俗に人生は長いようで短いというが、気が付いてみるとすでに四十七歳になっている。四十七年間、ろくな人生ではなかった。酒と女と金まみれの人生・・・出鱈目で根気がなく、熱しやすく冷めやすい性格は何ごとも風まかせで、しかもやっかいなことにくだらない虚栄心だけは人一倍強かった・・・」。多くの彼の作品の主人公に共通するキャラクターだが、彼の小説にはいつも自己の体験(ドラマティックな壮絶な半生といえる)が反映されているので、主人公が似るのは当然だろう。そして語り口はハードボイルド。まさに世の中の闇を知りつくしているアウトローだけが持つクールなニヒリズムが根底に感じられて小気味いい。さらにそれだけではなくエモーショナル(つまりアジア的とでもいうか)な血の濃さがどこかユーモアに響き、凄惨で荒んだ状況を描いていても、底に落ち切ることはなく、エネルギッシュでポジティヴな印象を受けるのも彼の小説の醍醐味の一つといえる。

 借金を抱え貧苦に喘いでいた趙は、大阪時代の悪友・李南玉に健康マット商法に誘われ、気乗りしないままにずるずると入り込んでゆく。「時計の振り子のように同じ軌道を往ったりきたり・・・じり貧状態の人間の思考を麻痺させていく。そして出口は不意に現れるのである。幻想かもしれないその出口は、しかし出口を求めている者にとって唯一の光に見えるのである」ー気がつけば商法の最前線へと突進。完璧なシステムと巧妙なマインドコントロール(ある種の新興宗教を暗示)の妖しい渦の中に飲み込まれてゆく・・・。「会場は異様な熱気に包まれている・・・熱狂している群集の中にいると一人だけ冷静にはいられないのだ。興奮の坩堝の中では理性より感情がほとばしるのだった」「これは一種の革命や。在日の組織が見落としてきた、というより見放してきたアウトローの若者が結集しようとしてるんや・・・一大コミュニティが形成されるかもしれない。日本社会になかったまったく新しいタイプの企業が誕生するのとちがうか」・・・。

 誇張されたフィクションの装いの中にリアルな核心が仄見えるのも、ヤン・ソギルの巧さといえるだろう。 (bk1ブックナビゲーター:橋本光恵/Asian Pops Mag.編集長 2001.05.08)

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