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地獄の季節 「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所

  • 出版社:新潮社
  • サイズ:16cm/346p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-10-130431-9

地獄の季節 「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所 (新潮文庫)

高山 文彦 (著)

  • 全体の評価 3.55件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:58016pt
  • 発行年月:2001.5
  • 発送可能日:購入できません

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ユーザーレビュー- 「地獄の季節 「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所」

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3.5
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2001/08/01 17:37

地獄の季節

投稿者:hiro(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 今はもうマスコミでもほとんど取り上げられることのなくなった、神戸児童連続殺傷事件のルポルタージュとしては出色の作品だ。あれだけセンセーショナルな事件だっただけに、それを扱った出版物だけでもかなりの数だったように思う。その中で実際に読んだ作品は僅かではあるが、著者自身の人生をも踏まえてかなり深くコミットしているという点で、群を抜いているという印象がある。
 事件その物が如何様であったのかという事にとどまらず、事件が起きた背景の様相を明確にすることで、事件その物の細部を照らしていくというアプローチの仕方は、例えば社会学という大きな枠組みで事件を読み解いた宮台真司氏の著作等がある。一方、少年Aの個人史、家族の歴史(或いはそれを含み込む地域の歴史)といった視点から、事件に近づいているのがこの「地獄の季節」だ。
 犯人である少年Aの特異とも思える行動や思考を追いながら、そこに至るまでの父母から祖父母まで遡って家族の歴史を追っていく。その丹念な調査に跡付けられた少年Aと家族の歴史は、詰まるところ地域社会・地域共同体の崩壊から家族そのものの喪失へと至る歴史に他ならず、新興住宅団地の異様さを浮かび上がらせている。これはこの事件以後にも続く少年犯罪に通底する背景であり、とりもなおさず現代が抱える病巣そのものであると言えるだろう。
 何よりも、事件そのものの残忍さや猟奇性ばかりがクローズアップされた当時のマスコミによる多くの刹那的な報道と、それを受け取る大衆としての自分自身について、改めて反省させられる、そんな労作がこの「地獄の季節」だと思う。

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2003/09/01 16:13

結局、誰にもわからない

投稿者:もくりん(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 僕も御多分に漏れず、思春期があった。現実からの逃避として「死」についても考えた。『エヴァ』のシンジくんも悩んでた。そして、あの酒鬼薔薇くんもきっと悩んでいたに違いない。

 著者は事件の原因を全て抽象的な「死」のせいにするつもりは無いとしながら、「死」というものを重要視する。そして、酒鬼薔薇くんの視点で事件の現場である北須磨団地や、両親と深く関係している沖永良部島に行き、そこで「死」の風景を目撃する。
 生きる事だけを考えて作られたニュータウンには墓地が無く、「死」に対する免疫を持っていなかった。そんな「若い」町で育った、酒鬼薔薇くんは阪神大震災や祖母の死という唐突に現れた「死」に直面する事になる……。
 
 彼の中で何が起きたのかは、本人も含めて誰にも分からないのかもしれない。が、町の開拓者にして自治会町のおじさんは、「墓をつくるのが、わしの最後の仕事になる。墓が大事や」と著者に語った。

 「人はなぜ生まれて、なぜ死ぬのか? 人間なら誰しも悩む事。だが、大人になっても悩んでいるのはタダの暇人。思春期に悩めば充分」。あるアニメのキャラクターの台詞だ。僕もそろそろ、酒鬼薔薇くんの幻影を振り払い、「悩む」権利を次の人達に渡すためにも、この本を踏み台にして次のステージに進まなければいけないのかもしれない。

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2003/07/18 13:44

勇気ある「失敗作」を読む

投稿者:1969(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 また、凄惨な事件が起こってしまった。
 「誰かに責任をとってもらいたい」が社会全体に蔓延する。犯人に? その親に? 少年法に? 彼を育んだ地域に? そしてこの国のシステムに?
 しかし、誰のせいにしたところで死者は還らず、犯人の少年のリビドーは不明のまま。たとえ動機が解明されたとしても、遺族にも、加害者の家族にも、地域住民にも、そして事件に関心をよせる全ての人のなかにも、喪失感と虚しさが残るだけ。そして、犯人の顔写真がメールで出回り、ネット社会は犯罪すら消費してしまう。

 本書は「神戸連続児童殺傷事件」を追ったノンフィクションである。著者の高山が事件発生直後から現場に入り、月刊誌「新潮45」に1997年8月号から4回に亘って連載した「ドキュメント『地獄の季節』」に加筆・修正を加えて発刊したものだ。
 単行本発刊当時からその存在を知ってはいたものの、今まで読むことをしなかったのは、事件があまりにも生々し過ぎたからだ。前代未聞といわれ、その残虐的犯行手口と、14歳の少年が実行犯であった衝撃。(僕は事件の第一報を、行きつけのお好み焼き屋で知った。店の客全員が、夕刊と7時のニュースにくぎ付けになって食事どころではなかった当時の店の雰囲気を、そのまま再現することだって出来るほどだ)
 たまたま書店の文庫の棚で、本書と再会したのが3週間ほど前。「もうそろそろいいか」と思い読み始めると、止まらなかった。
 
 労働組合がつくり、墓所も警察も歓楽施設もない清潔な「顔のない街」ニュータウン、過熱する事件報道、象徴的な「タンク山」、少年の両親が育った南の島とその因習、少年の家族の形。それらのトポロジーについて考察し、また高山自身の少年時代に少年Aを照らし合わせ、一見特殊に見える少年を取り巻く環境や心象が、実は僕達の身の回りに散見することができる事象ないし兆候であることを提示して見せる。「特殊性」という言葉の、数々の欺瞞を暴こうと高山は果敢に事件に挑む。途中、加害者両親の事件に対する態度を痛烈に批判するところが鼻に付くことを含めて、迫真のドキュメントといえるかもしれない。
 しかし、残念ながら本書は「失敗作」である。最大の原因は肝腎の少年Aの人物像を描ききれていないこと、そしてそれを普遍化できていないことだ。勿論少年に直接取材することはできないし、周辺取材にしても事件後間もなかったこともあって、十分ではない。しかし、(不謹慎な言い方を許して頂ければ)この本は面白いのだ。高山が深く深く水底の迷宮に潜っていく。息切れと方向感覚の麻痺に見舞われながら、高山の「迷い」と「揺らぎ」だけが水面に浮遊し、読者である僕達はそれを注意深く手ですくって、再検証することを要求される。
 
読後感を一言で言えば、「藻に絡まって抜け出せない」というのが正直なところだった。事件は陰惨で救いがなく、学ぶべき教訓を導き出すことすら不可能に近い。でも、僕達はこの勇気ある「失敗作」を、今読む必要があると思う。長崎や沖縄の事件を、本書を読んだことで単純になぞるのは愚かな行為だが、なり振り構わず高山のように迷宮に飛び込んで行く勇気だけは持とうと思う。

 高山は本書の約半年後、『「少年A」14歳の肖像』(新潮文庫)として再びこの迷宮に入っている。

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2002/01/27 00:11

いろいろな角度から見てみるとわかってくることもある

投稿者:りさこ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 もう神戸のあの事件からずいぶん時間が経ってしまった。犯罪は毎日どんどん増えていく。しかし、その中の一つとして見過ごせないのがこの事件ではないだろうか。私がこの事件に関する本を読むのは、『「少年A」この子を生んで』という本に続いて二冊目となる。こちらは第三者から見て、調べあげた本だ。

 人間にはだれにだった親がいて、夏休みの訪ねるような故郷があり、学校には友達がいる。ルーツであり、環境であり、いろいろな周りのものが人間を形成していくのに重要な役割を持っている。少年が犯罪者となってしまったその原因を探すために作者は彼の短い人生をひもとく旅を始める。

 最初は興味本位で読んでいるのだが、だんだん怖くなってくる。なぜか。それは作者が何かを見つけてしまいそうなんだ。自分が犯罪者になってしまった場合、こうしてこの人は私のルーツを調べあげてしまうかと思うと、とてもこわいのだ。なにもかも丸裸にしてしまい、自分でさえ気づかなかった何かを見つけてしまいそうなのだ。

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2002/05/11 23:10

ゲームの始まり…

投稿者:ゴンス(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 あのセンセーショナル事件から、何年が経っただろう。日本中を震撼させ、「うちの子も隣の子ももしかして……」と疑念を抱かせた神戸連続児童殺傷事件から、何年が経っただろうか。
 本書の著者、高山文彦氏は知る人ぞ知る気鋭のノンフィクションライターである。連続児童殺傷事件の記憶がまだ生々しい頃、フリーランスの物書きはこぞってこの事件のおぞましさ、異常さを謳った。が、しかし、今でもそのとき書いた文章に責任を持っているライターがはたして何人いるだろうか。高山文彦氏と社会学者の宮台真司氏だけであろう。
 高山氏は「想像力」と「自分の足」でこの事件の解明にあった。とりわけ事件そのもの対するアプローチではなく、「背景」に迫った点は類型の作品の中でも群を抜いている。
 少年Aの家族の実家を訪ね、その地域の歴史から少年Aが起こした事件の「動機」に迫るという短絡的な方法ではなく、脈々と受け継がれている家族の「歴史」から事件の本質を浮かび上がらせた方法は見事である。関係者の方はさぞかし嫌な思いをしただろう。だが、そこまで執拗に「背景」にこだわった点にこそ高山氏のライターたる所以があることもまた事実である。結局、少年Aに会うことは出来ない。だから距離を遠ざけるしかない、そのボーダレスの苛々は実は高山氏にとってのものではなく、少年Aにとってのものだといういうことを本書は示唆しているのである。

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