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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2001.6
- 出版社: 白揚社
- サイズ:20cm/353p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-8269-0103-8
紙の本
不思議宇宙のトムキンス
著者 ジョージ・ガモフ (著),ラッセル・スタナード (著),青木 薫 (訳)
帰ってきたトムキンス氏の、さらに奇妙でスリリングな冒険が始まります。「不思議の国のトムキンス」と「原子の国のトムキンス」を合本改訂し、最新の研究成果を取り入れた原著の邦訳...
不思議宇宙のトムキンス
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商品説明
帰ってきたトムキンス氏の、さらに奇妙でスリリングな冒険が始まります。「不思議の国のトムキンス」と「原子の国のトムキンス」を合本改訂し、最新の研究成果を取り入れた原著の邦訳。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ジョージ・ガモフ
- 略歴
- 〈ガモフ〉1904〜68年。レニングラード大学卒業。元・ワシントン大学教授。
〈スタナード〉科学解説者。著書に「アルバートおじさんの時間と空間の旅」など。
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紙の本
装いも新たに、帰ってきた名著
2001/06/03 07:00
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:田口善弘 - この投稿者のレビュー一覧を見る
おそらく私(≒40歳)くらいの年齢で、ここ(=サイエンス・テクノロジー棚)にアクセスするような奇特な人の中で「トムキンス」の名を聴いたことも見たこともないという人は皆無ではなかろうか? そう、あのトムキンス氏が装いも新たに帰って来たのだ。僕等が子供だった頃、未来は科学の光でピカピカ輝いていて(そろそろ「公害」なんてものがその輝きをくすませ始めていたりしたものの)、そしてその中心には物理学がでんと構えていた。本書はそんな時代に子供達に科学についての夢を与えてくれた名著の一つだ。
トムキンス氏のシリーズはどれくらいあったのか僕は良く知らないが、本書の冒頭に収録されているガモフ自身の前書きからするとどうもこれは最初の2冊である「不思議の国のトムキンス」と「原子の国のトムキンス」の2冊を合本にした版の新装版のようだ。
しかし、原著者のガモフがいかに一流の科学者であったとしても、原著が半世紀以上前に書かれたというのでは、その後の科学の発展の波に洗われるのは避けがたい。で、この新装版は大幅な改訂がなされた。勿論、ガモフが生きているわけは無いから「第3者の」手による大改訂である。これほどの著名な書物の内容をいじるとなると、相当の決意がいるだろう。僕が読んでいるのは校正刷りで、改訂者の氏名は記されていない(改訂者による前書きはあるのに!)が、想像するに現職の科学者か一流のサイエンスライターなのだろう、改訂は一応、大成功と言って良いだろう。僕にはここまで無難に改訂することはできない。
例えば、インフレーション宇宙論と定常宇宙論の「論争」を型どったすばらしいオペラの場面。インフレーション宇宙論がほぼ正しいと信じられている今の時代にこれをこのまま収録するのは無理がある、が、捨てるにはあまりにも惜しい。改訂者はどうしたか?このオペラを物語中で昔のオペラのリバイバル上演として行うのである(そして、例の「教授」が今頃こんなもの上演するなんてけしからん、とプリプリ怒ると言うひねりもきかせて)。そして、なぜ、この上演が時代遅れのリバイバルに過ぎないかをトムキンス氏と教授の娘(なんと、彼女は原著にあったステレオタイプ的なファッションにしか興味無い頭空っぽのきれいな若い娘から、物理学者としての将来を嘱望されながら、現代芸術の旗手として大成したバリバリのキャリアウーマンへと変貌を遂げている!)のかけあいでしっかり説明するというおまけつきだ。なかなか洒落た「改訂版」ではなかろうか?
ま、実のところ、正直って子供の頃トムキンスを読んで物理学に目覚めた、というわけでは僕は無い。むしろ、難しくて解らなくて、速度が上がると平たくなる自転車乗りとか、壁から浸み出すビリアードの玉などの挿話を記憶したに過ぎない。後に相対論や量子力学を学んだときも「ああそうか」と納得できた、というこもない。というよりその頃には忘れていたと言った方が正しい。物理学を解りやすく解説する本がこれほど溢れている以上、もはや、トムキンス氏の物語はお勧めの啓蒙書とはいえないだろう。むしろ、物理が科学の真中できらきら輝いていた時代を懐古するという意味で読むべき本だろう。実際、トムキンス氏はコンピュータを使うわけでも、インターネットにアクセスするわけでも、携帯電話を使うわけでもない。そういう意味じゃああの「サザエさん」の世界なのだ(あれをみると明らかに現代じゃないんだけど、でも30年前という確信も持てない、と奇妙に感じるがそれと良く似ている)。
止まった時間の中で科学だけは進歩した世界。それは、情報や生物じゃなくて相変わらず物理が科学の中心に座り続けた(現実には起きなかった)いわば平行世界の物語。それがこの改訂版のトムキンス氏の住む世界である。その不思議な感覚に浸るのが本書のもっとも正しい読み方だろう。是非、この世界を楽しんで欲しい。