- 出版社:早川書房
- サイズ:16cm/396p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-15-172551-2
フェニモア先生、墓を掘る (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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- 税込価格:798円(22pt)
- 発行年月:2001.5
- 発送可能日:7~21日
- 本 文庫
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ユーザーレビュー- 「フェニモア先生、墓を掘る」
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2001/07/15 20:51
探偵が副業、のほほん系開業医
投稿者:川原 いづみ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
開業医ながら副業で探偵もやってのけるフェニモア先生。それほどタフなわけでも、とびぬけて有能なわけでも、自らの存在について深い悩みを抱えているわけでもありません。事件に巻き込まれてしばしば痛い思いをさせられたりして、探偵にしてはちょっと抜けている感じ。読み手が肩の力を抜いて読めるミステリです。
殺されたのはアメリカ先住民の女性。容疑者はその婚約者、兄、結婚に反対していた婚約者の親族、親友などなど。おりおりに先住民についての記述などありますが、妙にペダンティックになるわけでもなく、さらりと読めるのではないでしょうか。
アガサ賞、マリス・ドメスティック・コンテスト最優秀作ダブル受賞作品。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2002/05/08 18:28
昔気質の開業医……もう一つのお仕事は素人探偵
投稿者:キイスミアキ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
お金もうけとは無縁の小さな診療所で開業しているフェニモア先生。昔気質の医師である彼には、医師の他にもう一つの仕事があった。チャンドラーをはじめとするミステリ作品が大好きな彼は、実際の事件に探偵として関わることがあるのだ。ある日先生は、アメリカ先住民の墓地に飼い猫を埋めようとしている少年に出会い、警官から彼を救ってやる。そして、彼を手伝い、墓を掘っていたところ、地面の中からは先住民の埋葬法で葬られた若い女性の死体が……。
推理小説的な捜査手法と医師としての専門知識を生かして捜査を進めていくフェニモア先生が活躍する新シリーズ、第一弾。
フェニモア先生がにわか探偵として活躍する舞台は、現代のアメリカ。この作品でハサウェイは、ヒスパニッシュ系の少年ホレイショや、アメリカ先住民ホナ‐ラナピ族の末裔たちなど、社会的なマイノリティを登場させている。そうすることで、現代のアメリカを描き、その問題の深さやおそろしく単純な様を、フェニモア先生のキャラクターとグロテスクではない殺人事件を通して、明るく提示している。
作中で描かれている、先住民たちが強いられている悲しい現状は、今やどのようにも解決することが出来ない、非常に困難なものだということがよくわかる。それは、すでに変わってしまったものは、如何様にも戻せないというもどかしさを読者に感じさせる。いくら政府が今となってから聖なる土地を先住民たちに返還したとしても、征服し略奪したという事実はあまりにも深く、根本的な解決がなんであるのかすら想像も出来ない。さらに悲しいことは、先住民たちが未だに強く差別されていること。フェニモア先生は古いタイプの医師だけれど、人種などといった古い感覚を嫌う感性の持ち主であることが、この問題を扱う上で細やかな救いになっている。あまり際立った人物の形成が成されているというわけでもなさそうだが、精神的にバランスがとれている人物ということは出来るだろう。人間性が良いのだ。
先住民の墓地から発見された、若いの女性の死体。先住民の末裔である彼女は、心臓病を患っていた。ミステリとしてこの作品が扱っている最大の謎は彼女の死因。フェニモア先生によって発見された死体に外傷はなく、様々な死因が考えられる。まず問題となるのは死因。持病、食中毒、毒物といった多くの可能性が考えられる。次には、死の理由がなんであるのか。自殺、他殺、病死、事故といった可能性が考えられる。最後は、誰が彼女を殺したのか。
特に理由を追及していく推理の過程が面白い。フェニモア先生は、医師としての専門的な知識を生かしつつ、古き良きとの冠が付くようなハードボイルドに登場する私立探偵のような捜査活動を展開して、ホレイショ少年に協力を仰ぎつつ、危ない橋をどたばたと音を立てながら渡って真相に近づいていく。もちろん、不器用に音を立ててしまっているのだから、犯人から手痛いしっぺ返しをくらってしまうこともある。これは、私立探偵としては当然の成り行き──パロディ──なのだから、暴漢に襲われたフェニモア先生も濃いミステリファンとして、きっと本望なのだろう。
ホナ‐ラナピ族の青年と、白人の青年との対立を描き、現代のアメリカに未だとして存在している対立や格差などの社会的な構造を、よくまとめられたプロットによって明確に提示していることが素晴らしい。謎解きに主眼を置いたミステリとしても、論理のアクロバットや大掛かりなトリックなどの存在こそないものの、安定した推理が展開されていて、冒頭にさらされた謎に対する興味が十分に最後まで持続して飽きることなく楽しむことが出来た。







