紙の本
チャーチルの第二次大戦回顧録
2015/09/06 20:29
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:historian - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次大戦中ずっとイギリスの首相を務め戦争を指導したチャーチルは、戦後ものすごく膨大な紙数を誇る『第二次大戦回顧録』を著した。これはその要約版。政治家でも歴史家でもない一般人が読むにはこっちの方が手軽でいいでしょう。
主要参戦国の最高指導者が自ら書いたというだけでも大変貴重だが、英国目線で第二次大戦の経過を簡潔明瞭に述べ、そこここに鋭い考察を入れてあり、一つの作品としても価値が高い。さらにルーズベルト米大統領とのナマのやりとりも記されたり、太平洋の戦闘にもきちんと関与していたり、山本五十六に並々ならぬ関心を持っていたりと新しい視点も見つかり、新鮮な内容もあった。
紙の本
史実の記録として、ある時代の物語として引き込まれる戦記。
2018/05/26 10:52
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:magoichi - この投稿者のレビュー一覧を見る
第2次世界大戦時の英国宰相チャーチルによる歴史書。
思わず引き込まれるのは、総崩れ状態のヨーロッパを一時期まさに孤軍奮闘で支えた大英帝国の軍人にして政治家としてのリアリティか。
ドイツ帝国がヒットラーという怪物を生み出した理由を第1次世界大戦の戦後処理に求める視点は説得力十分であり、敵国のドイツ軍司令官の実力、人物を敵国でありながら高く評価する客観性、装飾を排除し抑制された文書など、本書の高い評価に納得させられる。
一方、連合国側の主戦力として戦い、一時期ドーバー海峡まで敵国の迫ったヨーロッパ戦線に比べて、目的が植民地権益の防衛であり米国軍の補完的役割であったアジア太平洋戦線の記述は少し喰い足りなく残念。
名文家にして近代史に残る稀代のリーダーによる向こう側から見た日本の評価をもっと知りたかった。
とはいえ、日本側の指導者や日本軍の作戦計画の論評であったり、当初破竹の勢いであった日本軍を情報戦で制し、最後は米国の国力で押し切る様は現在においても通用する戦争の根幹を示しており、その貴重さが失われるものでは無い。
「歴史は勝者が作る」勝者の矛盾が皆無ではないが、それを差し引いても久しぶりに原文で読めない自分を残念に思う一冊。
せめてこの抄本を入口に、いつの日か全文通読してみたい。
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深井さんから執筆の依頼をいただき、簡単に受けてしまったことを、後悔した。
本棚には、一冊も、ビジネス書がなかったのだ。
そこでやっと思い出した。
数年前決めたのだった、ビジネス書を残さないことにしたことを。それ以後読んだものは、人にあげるか、会社の本棚に入れてしまっていた。
どうしてそのように決めたのか思い出せないのだけど。
今週担当させていただく、事業部山口です。よろしくお願いします。
で、何とか残っている本で、ひねり出したのが「『鄧小平政治的伝記』『第二次大戦回顧録』の二冊です。
この二冊は、それをそのまま、『読んで見てください』とお勧めするのではなく、本から何を読み取るのか、についての考察例としてとして、選びました。
まず、政治的背景はありません。僕の興味の対象は、鄧小平とウィンストン・チャーチルという、『個人のありよう』、にありました。
二冊とも、読んだのは15年前ぐらいだと思います。
その興味の対象は、両者とも数度の失脚ににもかかわらず、そのつど復権を果たし、困難な時期に、国を指導したという点にありました。
その信念、ねばり、柔軟さ、くじけない心、はどんなものなのか、そして、両者とも、ウィットにとんだ人物で、それが出てくる背景はどんなものなのか、などを知りたかったからです。
本の内容の紹介はさておくとして、そこから当時、私が、二人共通に、感じたことで、思い出せるものを表記してみました、
『思考的柔軟さを構成する何らかのものは、別角度で見ると恐ろしいまでのしたたかさを構成するものと、よく似ている』と感じたこと。
『当然ベースの能力が高く、なおかつ、賢いこと(勉強がよくできるとかではなく)。敵対勢力からも、その能力を惜しまれたこと』
『自ら積極的に復権した部分もあるけど、どちらかというと、難局にあたり、状況が、それぞれの人物を、表舞台に立たせたような感じがするところ』
『真の賢さを背景にした、ユーモアとウィットによって、どこか憎めないキャラを演出し(もしくは地?)、徹底的に叩きのめされなかったのではないか(想像)』
などなど、色々考えた次第です。
仕事を含めた生き方を考えるにあたり、本は有用ですよね。『読書は生き様に影響を与え』『生き様は、仕事に現れる』と思います。
本を読むということは、そこに書いてあることを覚えるのではなく(そういうこともあるけど)、なにをそこから感じ取るか、汲み取るかだと思います。
若いうちにたくさん本を読んで、感じる力、汲み取る力を身につけましょう。我々の仕事はそういう一面を有しています。
…何とか体裁を保ったかしら?
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第二次大戦の当事者としてであるが、きちんと客観的立場に立つという体裁で書かれているのが印象的だった。ただいくら客観的といっても、「持てる国」だからこそ言える傲慢さが垣間見えた。今度は24巻全部読みたい。
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抜粋版とはいえ、評判通りの名文の描き手であるチャーチルを知りうる著作。
国家の重要な選択をせまられ、とんでもないぐらいにストレスにさらされたはずの当事者でありながら、歴史家目線での文章表現には、やはり偉大な人物たる証。
敗北したヒトラー、東条英機が、仮に勝利した後の同様の著作があったならば、是非とも読んで比較したくなる!とワガママな欲望を持ってしまいます。
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思っていたより時間がかかってしまった。色々と忙しかったせいもあるが…致し方ないだろう。
数年前、英國放送協會にて最も偉大な英國人と云う企画があった。英國國民が偉人を選んだ訳であるが、その一位を獲得したのが「ウィストン・チャーチル」だ。それだけ英國人にとってチャーチルは誰よりも英雄なのだ。
大戰当時英國は独逸、米國と云った國に追い上げられ、19世紀以来最大の海軍力と産業革命来の経済力で世界に君臨していた大英帝國は衰退気味となっていた。落ち込み気味の英國は独軍がポーランドに進行すると佛蘭西と共に対独宣戦するも独軍の圧倒的な力に佛蘭西は降伏。英國は単独で独逸と対戦する事になった。又太平洋では日本帝国海軍と対峙し、戦艦プリンス・オブ・ウェールズを
そんな英國を、英國國民を勝利に導いたその人である。
駅の本屋さんで發見。
抜粋版であるが読んで損なし。
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第61代英国首相ウィストンチャーチルの第二次大戦回顧録。田原総一郎も評するように確かにチャーチルの文章には勝者の驕りのようなものを伺い知ることはできない。世界中に戦線を張った英国ならではの視点と、アジア一帯のみに専念した日本帝国との視点の差はいかんともしがたいなぁ。
全滅必至の軍隊に激励を送る総指揮官の立場もなかなか辛いものがある。
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日本人の視点からすると、太平洋戦争=第二次世界大戦で、日米の戦いが中心であったように感じてしまいがちな面もあるような気がする。
本書は戦時、英国首相だったチャーチルが第一次世界大戦の終わりから第二次成果大戦に至る経緯、そして第二次世界大戦の始まりから終結までを回顧録としてまとめたものの抄本である。これを読むと、第二次大戦での欧州での戦争とアジアでの戦いは、特に欧州の国々にとっては、常にバランスを考えながら進められたものだということがよくわかる。
勝者が描いた歴史をすべて鵜呑みにするつもりはないが、異なる視点から歴史上の重大な出来事を振り返るというのは重要だと感じる。
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第二次世界大戦時に英国首相であったウィンストン・チャーチルによる『第二次世界大戦回顧録』の抄本。オリジナルは、原語版で6巻、日本語訳で24巻の大部である。チャーチルはこれによりノーベル文学賞を受賞した。
ポール・ジョンソンの『チャーチル』によれば、チャーチルは、大戦終結の直前(1945年7月)の総選挙に敗れて官邸を明け渡すにあたって、大戦中の働きに対し何の報酬も名誉も求めず、その代わりに戦時中の膨大な公文書を求めて手に入れたという。また、回顧録に役立てようと、命令や確認ごとなど何でも文書にしていたのだともいう。
英国の歴史家E.H.カーは、名著『歴史とは何か』の中で「歴史とは現在と過去との対話である」と述べ、過去の真実は一つであるにしても、それが歴史となった場合、何を取り上げるか、どのような因果関係を見出すかは、その歴史を記録した時代・人間のスタンスにより変わり得るものであることを指摘しており、本書についてもその例外ではない。
しかし(というか、だからこそ)、連合国側の最高首脳であったチャーチルが自ら著した本書は、連合国がこの戦争をどのように捉えていたのかを知る上で極めて貴重な記録であるし、更に、英国において知識階級と言われる人は必ず読んでいるとも言われることを考えれば、欧米の人々が第二次世界大戦をどのように理解しているのかを把握する上で、必読の書と言えるのではないだろうか。
(2010年12月了)
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欧州の戦勝国から見た第二次世界大戦を
知りたくて読んでみました。
抄本なのでかなり駆け足ですが
チャーチルの文才が冴えていました。
一国の長の方でここまで書ける方は
他に存在した(している)のでしょうか?
イタリアの影が薄かった。。
もう少し当時のイタリアについて読んでみたかったです。
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非常に名高いW・チャーチル著The Second World Warの抄訳である。
全体的に記述は抑制的で、「解説」で田原総一朗氏が指摘するように「勝者の驕り」のようなものは感じられない。手堅い訳文は名文家チャーチルの面目を確かに伝えてくれる。
しかしながら、本書は原著全巻5000ページの内容を文庫一冊300ページ弱に圧縮したものであり、いろいろと無理をしている面があるのも確かだ。歴史を扱う以上、事実の流れを追わなければならないのは当然だが、そこに紙幅が割かれた結果として、英国首相たるチャーチル自身の苦悩や決断に関わる叙述はどうも薄い。そして困ったことに読者が本書に求めるのは、まず間違いなく後者のほうである。
また、本書は第一部「ヨーロッパの戦い」、第二部「アジアの戦い」の二部からなっている。半分を日本関係の叙述にあてたのは編者による日本の読者への配慮だろうが、実際のところ太平洋戦線での連合国側の主役は言うまでもなく米国であり、特にシンガポール陥落以後、英国の影は薄い(もちろんインド洋やビルマでの戦いはあるが)。早い話が、「チャーチルの文章でミッドウェーやガダルカナルのくだりを読みたいか」ということで、僕はもっと彼が当事者として関わった局面に紙幅を割くべきだったと思う。
とはいえ、以上はないものねだりというものである。本書からでもチャーチルならではの視点というものはいくらか感受できるし、「英国から見た第二次大戦通史」という読み方もできるだろう。
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チャーチル 第二次世界大戦回顧録
チャーチルが連合国の目線で 第一次世界大戦から第二次世界大戦への流れ、ヒトラーのヨーロッパ攻撃、日本のアジア攻撃、太平洋戦争、日本敗戦までを まとめた本
7月26日に日本軍の即時無条件降服を要求する最後通牒が発せられて、8月6日に広島に原爆投下したことは 時間が短すぎる
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チャーチル畢生の大著からその要所を余すところなく抜き出してこの一冊に凝縮。ヨーロッパで、そしてアジアで、どんな決断を迫られたのか。連合国最高首脳自らが迫真の名調子で綴る第二次世界大戦史の決定版。
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チャーチルの本くらい一度は読んでおくべきかなぁ、というざっくりした気持ちで読了。
とても全文24巻は読み切れないと、毎日新聞社による抄訳を選んだのですが、エレベータートークレベルの圧縮ぶりとなるとそりゃ出来事の要旨だけになっちゃいますわな。ノーベル文学賞受賞者の受賞作らしさを感じるのはいささか無理があるかなと。
とは言え、チャーチルが歴史の瞬間それぞれにおいて、どう考えてどんな指示を出した、というのは何となく感じることができる本です。イギリス軍への指示はとにもかくにも「降伏するな、戦い抜け」という感じで、なかなか上司として頂くには厳しいトコロがありそうな(笑
文中にあった日本人論(日本語論?)は、個人的には前から聞いていたような話でしたが、出元はもしかするとチャーチルなんでしょうか?
「やっかい」で、「不正確」で、「信号通信に変えることが難しい」言葉。主語が無くても話せる言葉ですし。
「日本軍の計画は、非常に厳格だったが、計画が予定どおりに進行しないと、目的を捨ててしまうことが多かった。」という記述も、日本軍的な失敗論の出元でしょうか。
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映像の世紀を見てから、20世紀の悲惨な戦争などはどのようにして起きたのか、という点に興味があった。
第二次大戦時のイギリス首相をしてたチャーチルの回顧録を読んだ。
元々は24巻ある大著(ノーベル文学賞も受賞している)を1冊にまとめているだけあったかなりの圧縮率がある。
ただ、開戦に至った経緯や、チャーチルが枢軸国についてどのように感じていたのか、連合国の盟主たちとどのようなやりとりをしていたのかを詳細に書いており当時の全体感を知るには良い。
勝者だからといって驕った立場でのかきぶりでなく、枢軸国にたいしても尊敬の念や、どう被害を減らすかを考えて行動していたのには驚いた。