- 出版社:中央公論新社
- サイズ:16cm/456p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-12-203857-X
幻の終戦 もしミッドウェー海戦で戦争をやめていたら (中公文庫)
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- 税込価格:900円(25pt)
- 発行年月:2001.7
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ユーザーレビュー- 「幻の終戦 もしミッドウェー海戦で戦争をやめていたら」
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2011/08/28 18:18
日本の8月は有意義だ
投稿者:拾得(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
1945年8月15日にポツダム宣言受諾を発表して以来、8月の日本には「戦争もの」があふれる。書籍、ドキュメンタリー、マンガ、証言集、もろもろ。このことに疑問を呈する向きもあるようだが、「考えるべきこと」が沢山あるだけではなく、多くのことを教えられる。そんな貴重な機会を、後代に生きるわれわれが活かさないわけにはいかない。
歴史を考える禁じ手のひとつに、「もし、あのとき・・・」というものがあるそうだ。しかし、それを考えたくなるのも人間の性であろう。「太平洋戦争」において、その「もし」の対象となってきたのは「ミッドウェー海戦」ではないだろうか。昭和史を中心にノンフィクションを次々と著している著者も本書でそれに挑んでいる。
「もし、ミッドウェー海戦で勝っていれば、その後の戦闘も有利になり、アメリカとの講和条約に持ち込めたのではないか」と考える人は、今でも少なくないだろう。そうした人々と著者が異なるのは、「ミッドウェー敗戦」を前提としたうえで、早期の講和が成立することはできなかっただろうか、という問いを立てていることである。日本自身の政治のあり方と政治家にどこまでの可能性があったのか、というものを問うことである。ある種の思考訓練か。「ミッドウェーに勝っていたら」と想像することは自由だが、それを前提に「もし」を考えることは、結局は「他人(他国)任せ」の夢想でしかなくなることを暗に指摘している。ミッドウェー以前からかかえていた日本内部の問題をかえって考えさせなくさせてしまうからである。
さて著者は、「もし」と言いつつも、前半第1部はミッドウェーそのものの検証に費やし、作戦そのものが「張り子の虎」でしかなく、どだい「勝てる」ものなどではなかったことを明らかする。これだけでも十分に読み応えがある。暗号が傍受され、それに気がついてさえいなかった、という1点を指摘するだけでも十分に理解されよう。
「もし」が描かれる第2部では、その中心になる人物は吉田茂と近衛文麿である。正直いって、最初はあまりに「ふつう」に感じてしまった。戦前、戦後と分かれるとはいえ、総理大臣経験者である。そのうち一人は、「政権投げ出し」の印象の強い総理大臣でさえある。フィクションであれば、ここに第3のヒーロー登場を期待したくなる。しかし、組閣経験のある2人が、そのもてる人脈を前提として手を組んでいれば、というのは「なるほど」と思わせるのに十分である。国難において、意外性のヒーローなどは現れない。それぞれが知力を尽くすしかない、ということでもあろう。
著者自身も日米の早期講和が成立したことだけで、諸々の問題がすべて解決するとは思ってはいない。それでもなお、このことを考えるのは、その後の戦争で失われた人命があまりに多いこと、そして、戦争を引き延ばすなかで「知的退廃」ともいえる精神状況がもたらされたことへの憤りから、といってよいだろう。
戦争と戦後をめぐっては、史観の問題とか何とかいろいろと議論がされているが、その前に考え抜くべきことは余りにも多いのだ。







