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ギリシャ正教無限の神(講談社選書メチエ)

ギリシャ正教無限の神 (講談社選書メチエ)

落合 仁司 (著)

  • 全体の評価 32件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,575ポイント:15pt
  • 発行年月:2001.9
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商品説明- 「ギリシャ正教無限の神」

ギリシャ正教のテーゼを現代数学で読みかえるとき、東方2000年の智恵が新たな知として甦る。宗教と数学のクロスオーバー=数理神学が切り拓く、21世紀における宗教の可能性。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「ギリシャ正教無限の神」

落合 仁司

略歴
〈落合仁司〉1953年東京都生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、同志社大学経済学部教授。著書に「保守主義の社会理論」「地中海の無限者」「〈神〉の証明」など。

関連キーワード- 「ギリシャ正教無限の神」

ユーザーレビュー- 「ギリシャ正教無限の神」

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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2002/04/05 23:22

「数理神学者」に望むこと

投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 翔太は神の概念を信じるが、神の存在を信じない。インサイトは神の存在を信じるが、神の概念を信じない。これは永井均氏の著書に出てくる印象的なフレーズなのだが、これを落合仁司流に言い換えれば次のようになる。

 普遍言語(数学)で洞察する者にとって「神の存在公理」は自由な信仰の対象であるが、民族的地域的な言語で空想する者にとってはそうではない。

 また前者(洞察者)にとって「神の多一性」や「神の自己超越性」は数学的証明(神学的弁明)の対象であるが、後者(空想者)にとっては信仰の対象もしくは端的に非合理──この世界の他者である「神が人に成る」ことも「人が神に成る」こともともに矛盾──である(「非合理ゆえにわれ信ず」などと極めて無責任な発言をしたラテン教父もいた。ただしこれは落合氏の言)。

 本書を読み終えて、どうしても拭えない疑問が二つ。その一は、以前『〈神〉の証明』(現代新書)を読んだときにも感じたことなのだが(ちなみにメチエ版の内容は新書版のそれを超えるものではない、いやむしろ新書版の方がより「深い」ものを示唆していたように記憶している)、そもそも「神=この世の他者=無限」や「無限公理=神の存在公理」という等式がなぜ当然のように成り立つのかが納得できない。というより、この等式が自由な信仰の対象であると言われても根本的な異和感が拭えないのだ。

 そこでは無限集合の存在を仮定することが即ち神の存在を認容することとイコールであるとされ、神の「存在」が神の「概念」にすり替えられている。超在(父)や内在(子)や臨在(聖霊)といった異なるヒュポスタシスのうちに神の「愛」(存在の受容)を感じ、精神身体技法に助けられた「イエスの祈り」を通じて「神化」(テオーシス)を希求するといった、落合氏がギリシャ正教に託して語る普遍的な宗教の構造が単なる概念に堕している。

 パースは『連続性の哲学』で、究極的に数学へと収斂する理性(認識能力)の発展が魂のもっとも表層的で誤りやすい部分にかかわるものであるのに対して、魂のもっとも深く確実な実質的部分をなすのは「本能」や「感情」であると書いているのだが、「神=この世の他者=無限」や「無限公理=神の存在公理」という等式はこの本能や感情に達しない。

 それどころか、パースがケーリーやクラインやリーマンやカントールといった純粋数学者たちの集合が全体として発見しつつあると述べた「潜在性の世界」、理念的で永遠的な「イデアのコスモス」にすら達していない。要するに、琴線に触れないのだ。

 その二は、いま述べた事柄にも関連するのだが、数理神学を標榜する落合氏の数学観、というか方法論にかかわる疑問。カントールや現代の集合論、全数学や全近代科学の基礎づけをめぐる本書の記述がはたして妥当なのかどうか、私には云々することはできない。しかし、「集合論ほど神学さらには宗教の言葉として適切な言語は他にない」(190頁)と断言するだけの論証を落合氏が示しているかどうかについては、数学や神学や宗教学の非専門家である一読者の立場から私は納得がいかない。

 「数学のできない哲学者などほとんど無意味な存在なのである」(あとがき)と至言を吐く落合氏であれば、数学と宗教の同型対応をもっともっと徹底的に抉り出してみせてほしい。これぞ「数学的形而上学」(パース)の決定版と言える書物を読ませてほしい。これは一読者としての心からの期待。

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0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2001/10/01 18:16

2001/09/23朝刊

投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 宗教を、数学という一見全く無縁なジャンルと交錯させ、二十一世紀の宗教の可能性を探ろうという意欲的な論考だ。著者は、ギリシャ正教をヨーロッパとアジアが融合した普遍的な構造を持つ宗教だと規定。「数学わけても集合論と宗教は同型の構造を持つ」という考えから、「数理神学」という新しい学問を提唱する。ギリシャの歴史や数学史にも触れながら、数学の証明問題を解いていくかのように明快な議論を積み重ねていく。「文理融合」の試みとしても面白い。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001

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