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三島由紀夫全集 決定版 13 長編小説 13

  • 出版社:新潮社
  • サイズ:20cm/848p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-10-642553-X

三島由紀夫全集 決定版 13 長編小説 13

三島 由紀夫 (著)

  • 全体の評価 51件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:6,090174pt
  • 発行年月:2001.12
  • 発送可能日:24時間

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奔馬 397-820

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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2005/11/24 14:10

優雅さをめぐる葛藤

投稿者:dimple(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

三島由紀夫全集13巻に収められている『春の雪(豊饒の海・第一巻)』を読了し、そして同名小説を映画化した作品を鑑賞した。
羽林家の家格を有する公家の綾倉伯爵家令嬢・聡子と、維新の功により祖父の代に侯爵に叙せられた松枝家子息・清顕との悲恋を描いている。
映画作品の方は、限られた時間のなかで劇的効果を高めるべく、多少内容を変更しているが、ポイントはしっかりと押さえている。
尚武の気風に溢れる松枝家の人間でありながら、幼少期から綾倉家に預けられたことにより、「優雅さ」の何たるかを知ってしまった清顕は、素直に感情を表現できない、そして耽美的な性向を持ってしまっていた。
清顕は、聡子が自分に恋心を抱いていることに気付きながらも、「優雅さ」を生まれながらに自然に身に付けている聡子に対して素直になれない。あまりに自然な聡子の「優雅さ」に清顕は嫉妬していたのではないかと思う。
しかし、聡子と桐院宮治典王殿下との結婚が決まり、聡子を失うことが現実化してはじめて、清顕は自分の本当の気持ちに気付くのである。
もっとも、清顕の気持ちが変わっていく最初の重要なきっかけは、雪見に出かけたときであると思う。聡子が無理を言って清顕を雪見に連れ出し、その際、人力車の中で二人はファースト・キスを交わし、愛撫し合うこととなる。
このとき清顕は、聡子に覆われた「優雅さ」の膜の中に、静かではあるが、官能的な情熱があることを悟ったのだと思う。
このシーンは小説でも映画でも白眉なので是非注目してほしい。
そこから後戻りできない恋愛が進行し、悲劇的な結末を迎えるのであるが、そこは原作や映画をご覧いただきたい・・・。
思うに、公家の令嬢である聡子には、譜代大名藩主の家系で宮家にも出仕した三島の母方の祖母が投影されているであろうし、松枝侯爵や大審院判事の子息である本多は、三島の父方の家風を反映しているかもしれない。
そして、両家の気風の間で「優雅さ」について葛藤する清顕は、何よりも三島自身なのかもしれない。
このあたりの葛藤を現代の若手俳優が表現するのは難しいと思う。妻夫木聡はみずみずしい感性で清顕を好演していたが、聡子に対して素直になれない部分は、単なる天邪鬼的な甘えのように表現してしまっているのが残念だった。
聡子を演じた竹内結子はすばらしかった。でも、松たか子に演じてほしかった気もしないでもない・・・。
脇役陣もすばらしい。特に、松枝侯爵を演じた榎木孝明、綾倉家侍女・蓼科を演じた大楠道代の演技が秀逸であった。大楠は英国のマギー・スミスを髣髴とさせる。
あと、映像もすばらしい。撮影場所、衣装、小道具にもディテールにこだわっていて感心した。清顕の左腋には3つのほくろがあったし、学習院の制服や当時の外套おそらく本物であろう。
是非、原作と映画の両方に触れてほしいと思う。
(以上、「とはずがたり」ブログから転載)

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