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紙の本
第一世界大戦中にフランスで起こったシュルレアリスム運動について、文学、芸術、文化横断的に分かりやすく解説された名著です!
2020/04/25 10:29
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、第一次世界大戦中にフランスで起こった文学・芸術運動であるシュルレアリスムについて分かり易く語ってくれる一冊です。この運動はフランスの作家であったアンドレ・ブルトンを中心としたもので、1924年に彼が『シュルレアリスム宣言』を発表して以降、本格的に始まりました。ブルトンによれば、「シュルレアリスムは、口頭、記述、その他のあらゆる方法によって、思考の真の動きを表現しようとする純粋な心的オートマティスムであり、理性による監視をすべて排除し、美的・道徳的なすべての先入見から離れた、思考の書き取りである」と定義されています。このシュルレアリズムを、非常に分かり易く、様々な文学的、芸術的、文化的な事例を挙げながら、解説してくれる名著です。同書の構成は、「シュルレアリスムという言葉」、「超現実とは何か」、「ワンダーランドと超現実、そして町」、「メルヘンと童話とのちがい」、「おとぎばなしの発生」、「<眠れる森の美女>の例」、「反ユートピアの立場から」、「トーマス・モアと大航海者」、「ユートピアさまざま」といったテーマで話が進みます。
紙の本
シュルレアリスムに人があこがれる理由が見えて来た気がする
2011/07/17 06:29
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
1993年から94年にかけて著者が都内でおこなった3回の講演が96年にまとめられ、それをさらに2002年に文庫化した一冊です。
もともと本にする予定がなかった講演で、著者自身が「即興」と形容する語りがもとになっているため、話は思いつくままといった趣でかなり自在に横へそれることもあるように思います。
それでも私は幾度も頷きながら頁を繰りました。
著者はシュルレアリスムを、現実に内在した「超現実」=「現実を超えているというよりも現実の度合いを増したもの」と捉えるべきだといいます。
世間一般が考えるような、「芸術家の主観による自由な表象を描くもの」というイメージとはむしろ正反対のものであることを、著者はブルトンの自動記述実験の様子を引き合いに出して分かりやすく説明していきます。「現実と超現実の連続性」とうのがシュルレアリスムの基本であるという点がまず目を引きます。
著者はさらに話を「メルヘン」そして「ユートピア」へと進めます。
メルヘンもまたこの現実世界と隔絶したものではなく、ときに重なり、ときにつながるものであること。それは「童話」という近代の発明品とも異なるし、ましてや運命と闘う自我を見つめる「近代小説」からは遠いところにあるものであるとするくだりは、一読二読ではなかなか理解が及ばないもどかしさもありましたが、次のユートピアの章に至ると著者の言わんとするところがより鮮明に見えてくる思いがします。
そのユートピアとは、日本人がとらえがちの「桃源郷」とか「楽園」といった自然あふれる世界ではなく、ヨーロッパのそれは法が整備された理想都市のようなものを指し、プラトンのイデアの世界が構想されるというのです。しかしそのように考えられるユートピアは、決して人間が豊かに暮らせる場所ではなく、むしろ「個性」が欠如し、人間が機能に還元される世界が広がることになるというのです。
まさにそれは現代の日本社会の姿です。
であるならば、ユートピアとは本当に<理想の世界>なのか。
著者が最後に語るのは、だからこそ、闇や無秩序、迷路や非合理性といったシュルレアリスムの世界の感覚を復活させるべきではないかということです。
シュルレアリスムに対して自分が持っていた捉え方に一石を投じてくれる、大変示唆に富んだ一冊でした。