- 出版社:国書刊行会
- サイズ:20cm/285p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-336-03962-3
オレンジだけが果物じゃない (文学の冒険シリーズ)
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- 税込価格:2,520円(72pt)
- 発行年月:2002.6
- 発送可能日:7~21日
- 本
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商品説明- 「オレンジだけが果物じゃない」
【ウィットブレッド賞最優秀処女作賞】熱烈なキリスト教信者の母から伝道師教育を叩き込まれた少女ジャネットだが、一人の女性と恋に落ちてその人生は一変する。奔放な想像力と軽妙な語りで読者を魅了する成長物語。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介- 「オレンジだけが果物じゃない」
ジャネット・ウィンターソン
- 略歴
- 〈ジャネット・ウィンターソン〉1959年イギリス生まれ。「オレンジだけが果物じゃない」でホイットブレッド賞、「さくらんぼの性は」でE・M・フォスター賞を受賞。
ユーザーレビュー- 「オレンジだけが果物じゃない」
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2010/04/19 12:51
作者の自伝的作品。この物語の一番の読ませどころはやはり自立することの大切さと、そして親子の愛情の尊さを謳っている点でしょう。日本人的な発想で見れば、通常書きにくいことをよく書いたなと思うのですが、作者の才能は陳腐なそういった見方を超越して、読者の心の中にいつまでも根ざすであろう勇気を与えてくれる作品です。さあ、未読の方、とりわけ女性の方是非ご一読あれ。
投稿者:トラキチ(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
原題 "ORANGES ARE NOT THE ONLY FRUIT"(1985)、岸本佐知子訳 。国書刊行会の文学の冒険シリーズの一冊。
まず単行本の裏表紙のあらすじを引用させていただきますね。
<たいていの人がそうであるように、わたしもまた長い年月を父と母とともに過ごした。父は格闘技を観るのが好きで、母は格闘するのが好きだった・・・>
熱烈なキリスト教徒の母親から、伝道師になるための厳しい教育を叩き込まれた少女ジャネット。幼いころから聖書に通じ、世界のすべては神の教えに基づいて成りたっていると信じていた彼女だが、ひとりの女性に恋したことからその運命が一転する・・・。
『さくらんぼの性は』の著者が、現代に生きる女性の葛藤を、豊かな想像力と快活な諷刺を駆使して紡ぎ出した半自伝的作品。
(単行本背表紙から引用)
“何もかも、わたしが間違った種類の相手を愛してしまったことに端を発しているらしかった。いや、わたしの愛した人たちに“間違った”ところなど一つもなかった、ただ一点を除いてはーーー女が女を愛すると、もうそれだけで罪になるのだ。”
(本文より引用)
またまた素晴らしい作家に邂逅しました。
この作品を私なりのとってもありふれた言葉で表現すると、“構成、内容ともにパーフェクトな作品”ということになります。
いわゆる国内のベストセラー作品は多少評判が悪くとも、情報量も多いがゆえに手にする機会が多いであろう。
だが本作のようにたとえイギリスのベストセラー作家であろうと、知名度に関しては国内作家のそれと比べて著しく劣ることは否めず、ましてや原書が刊行されて25年、邦訳されて8年も経つ作品となれば、ささやかながらでもインターネットいう便利な媒体を通じてその魅力を伝えたいと思うのです。
あらすじは前述したとおりなのですが、読んでいくにあたってポイントはありますね。
わたしがもっとも頭に入れて読み進めたポイントは、やはり主人公のジャネットと猛烈な母、このふたりの血が繋がっていないという点ですね。
私的にはすごくこのことを重要視しています、これは日本の作家が同じような内容を書けばそんなに共感出来ないのでしょうが、この作品における母親のシチュエーション(養母、そして猛烈なキリスト教の信者であること)からして、一部非難の声が上がることを認めつつも、深い愛情を持って育てているんだなという気持ちが伝わってくるのですね。
そして読まれたすべての方が同じように感じるであろう各章にちりばめられた寓話の数々ですね。
この構成は読む者の心を和ませるとともに、すごく印象深い読後感が強烈に残ります。
もし、この寓話の挿入がなければこの作品自体もっと堅苦しく感じたのだと私は推測しています。
明らかに本筋は自伝的な作品なのですが、寓話を挿入することによってユーモア性とそして作品の内容自体に深みを与えていますね。
作品全体を通していえば、作者自体の筆力の高さが素晴らしい岸本さんの訳文を通して読者に否応なしに伝わってくるのですね。
内容的には、少女が自我に目覚め成長し(といっても引用文の通り同性愛者になってしまい、平凡なものじゃないのですが)を語りながら、その自立と母親との確執を描きつつも深い愛情を読者に知らしめてくれる自伝的作品となっています。
邦題はタイトルからの直訳ですが、このタイトル自体が大きな意味をもたらしています。
これは私的には次のように解釈しています。
母親がもたらしてくれたオレンジは、これは優しさの象徴なのですが、オレンジのほろずっぱさは世間の厳しさをも示唆するのだと思います。
ラストあたりで母親が「オレンジだけがくだものじゃないってことよ」とジャネットに語るシーンが印象的です。
これは成長(というか自立)した娘に対して発した言葉ですね。
もちろん言葉通りのなのですが(笑)、作者にしたら母親の言葉をやっとわかるように成長して戻ってきたのですね。
そして“オレンジだけがくだものじゃない”という言葉を受け入れつつも“あなたのオレンジに勝るものはないのよ”と再認識した瞬間でもあったと思います。
読後感としてはオレンジのほろずっぱさよりも清々しさを感じましたが、それは男性読者だからかもしれません。
作者ジャネット・ウィンターソンの願いは、作中のオレンジのようにたとえほろずっぱくとも、本作が読者の心を少しでも救ってくれる一冊として届くことだと思われます。
どんな形かは読者によって違うと思います。しかしながら何かをつかみとれる作品であると確信しています。
特に女性読者には手に取ってほしい一冊です。
女性読者なら感動も共感もできますから。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2005/01/06 12:06
古い束縛からの解放
投稿者:Yumikoit(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
頑迷で古い迷信に凝り固まった宗教…彼女の場合にはキリスト教原理主義…の下で育った結果、彼女は学校とか地元社会とか、そういった一般的な意味での社会生活に馴染むことができなかった。そしてそれを当たり前と思って育った。
幼い時の自分自身を通して過去を振り返っている著者は、それらの整理できない自分自身の感情を、昔ばなし風のエピソードや聖杯探検の伝説やそういうものでモチーフ的に表している。
子どもの時は誰しも、親の一方的な思い込みや考え方の押し付けの中で生きている気がする。それが理由付けのあるものであれ、もっともな理由のあるものであれ、「親の生きてきた環境」「親が信じて育ってきた環境」を一方的に押し付けられているのは子どもだ。
ある時、子どもはそれ以外の世界もあり、親の言う理屈だけで世の中が動いているわけではないことを知る。
子どもにとって外の世界が魅惑的であればあるほど、そして親の作った世界が強固であれば強固であるほど、その殻を打ち破るものかもしれない。
緩やかに。でも信念を持って。それでいて他者には狭義的ではなく。新しい概念はその場で退けるでもなく、かといってなんでも一方的に受け入れるでもなく淡々と。
そういうのが、あこがれる世界である。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2003/05/10 15:58
まなざしは、距離によって和らげることができる。奇妙な許しの物語。
投稿者:こたにりこ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者のデビュー作にして半自伝的作品であるが、そうと知らずに開いても想像力のはばたきに魅せられてしまう。芯から読んでよかったと思える、優れた作品と出会った。ジャネット・ウィンターソンという人は、本物の想像力を持った作家である。
孤児であったジャネットを引き取り育てたのは、狂信的なキリスト教に属するご夫婦だった。夫の影がひたすらに薄く、主導権を握っているのは妻なのだが、この人、あまりにも強烈なキャラクターを発揮してくれる。書物を選ばせたら旧約聖書と『ジェイン・エア』だけに拘泥する。『ジェイン・エア』に関しては、自分の都合に合わせて結末を変更している。<迷える魂の会>活動への入れ込みようも半端じゃない。養女ジャネットの行く末は勝手に伝道師と定め、幼い頃からびしびしと仕込む。いつでもどこでも一方通行で突っ走る姿に、鬼気迫るものを感じる。
困ったお母様だけど、こういう激しい人は、遠くから眺める分には「いいキャラしてる」のだ。直撃を受けた人が「すごいよね」と笑ってみせるのは、並大抵のことではないけれど。それを可能にするのが文学の力だと信じられるのは、大きな収穫であった。著者は、自分の母親の脅威であっても切羽詰った調子にならず、距離を置くことによって、まなざしを和らげるのに成功している。
ジャネットが同性に惹かれたことをきっかけに親子関係にひびが入り、娘は自立していくことになる。幾らでもどんよりと重たくすることができるであろうこの話を、独特の明るさで引き上げ、スパイシーに引き締める語りっぷりに魅了された。
主人公のたくましさに慰められながら知らされるのは、想像の世界には常に自由があるということだ。現実の痛みから目をそらさない強靭な精神力も欲しいが、決定的なダメージを食らう前に、必要とあらば架空の世界に逃避する方法も用意されている。『オレンジだけが果物じゃない』は、ただ傷口をこじ開けて不幸自慢をするのではなく、亀裂に巧みに夢を織り込みながら回復を求めていく。
「わたしは生まれてこのかたずっと、世界というのはとても単純明快な理屈のうえに成り立っていて、ちょうど教会をそのまま大きくしたようなものなのだと信じていた。ところが、教会がいつもいつも正しいというわけではないことに、薄々気づいてしまった。これは大問題だった。もっとも、その問題と本当に向き合うことになるのは、まだ何年も先のことだった」。
数年後、この問題に向き合ってみた彼女が手に入れた結論は、ファンタジーだった。
「ひょっとしたら、わたしという人間はどこにもいなくて、無数のかけらたちが、選んだり選ばなかったりしたすべての可能性をそれぞれに生きて、折りにふれてどこかですれ違っているのかもしれない」。
彼女は母から離れて生きながら、同時に母のそばにいることが可能だったのである。だから、母と娘は特に対立するわけではない。
意外にもジャネットは家に戻り、母親もごく普通に受け答えしていて、少しずつ歩み寄ったかのように見える。本当は、母親は何もかわってはいない。ただ、時間が流れただけのこと。かつてはオレンジ一辺倒だったのが「オレンジだけが果物じゃない」と言うようになったのも、彼女の興味がパイナップルに移ったにすぎない。オレンジと言い出したらどこまでもオレンジであり、パイナップルと言い出したらどこまでもパイナップルに入れ込む激しさは不滅である。
ふと微笑んでしまう。その家には秘密がたくさん眠っている。これは、この家のルールにのっとって結ばれた母娘の絆なのだ。まったく、奇妙な許しの物語である。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2002/07/09 15:15
一人の女性の成長物語として、思わず頬がゆるむような作品
投稿者:石堂藍(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
スティーヴン・キングの『キャリー』という小説をご存知だろうか。原作は読んだことがなくとも、映画を観た人は多いのではないかと思うけれども、狂信的な母親に育てられた未成熟な娘が、さまざまな抑圧の末に超能力を発現させて大惨事を引き起すという物語だ。もちろんあくまでもフィクションだが、〈世界最大の宗教国家〉などと呼ばれることもあり、カルトの巣窟である合衆国なら、いかにもこんな母娘がいそうだと思わせるリアリティがあった。
ジャネット・ウィンターソンの『オレンジだけが果物じゃない』は一歩間違えば『キャリー』の世界、というようなたいへんな母娘の物語である。しかも実はこれは著者の自伝的な小説——つまり実話に基づいているのだ!
ジャネットは布教活動を何よりも愛好する育ての母によって、教会の寵児たるべく英才教育を施される。聖書のことなら何でも詳しくなった早熟な少女は、集会で説教をして入信させる能力も大したものだった。しかし、学校では地獄の話で級友を怖がらせるなど異端児で、居場所を持てず、母との軋轢も長ずるに従って強まるばかり。やがて魅力的な少女と出会ったジャネットは、自分が禁じられた同性愛者であったことを知る……。
いくらでも〈暗い純文学〉に出来そうな題材である。しかし著者はそれをアイロニイの利いたユーモア小説に仕立てた。悲しみや苦しみに満ちていたはずの少女時代を、距離を置いて対象化し、笑いや風刺のスパイスを利かせ、呑み込みやすいものにして読者に供している。一人の女性の成長物語として、思わず頬がゆるむような作品になっているのだ。
本書の魅力はそれだけにとどまらない。その対象化をどのようにして行なったかの一端を、大筋の合間に独立した物語を挟み込むことで示している。挿話は、メルヘンや伝承文学風のファンタジックな物語として自分の体験を語り替えたものだ。つまりこのように語ることによって対象化したのだということなのだ。象徴機能を備えていると同時に茶化しの要素も交じった数々の挿話によって、この作品はより一層愛らしいものとなっている。 (bk1ブックナビゲーター:石堂藍/書評家)







