- 出版社:新潮社
- サイズ:20cm/141p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-10-455401-4
向田邦子の恋文
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- 税込価格:1,260円(36pt)
- 発行年月:2002.7
- 発送可能日:購入できません
- 本
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商品説明- 「向田邦子の恋文」
ひっそりと茶封筒に仕舞い込まれたもの。捨てきれなかった思い。それは、いかにも姉らしい「秘め事」だった−。没後20年、初めて明かされる痛切な記録。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介- 「向田邦子の恋文」
向田 和子
- 略歴
- 〈向田和子〉1938年東京生まれ。実践女子短期大学卒業。保険会社勤務等を経て、作家の姉・向田邦子と東京赤坂に惣菜・酒の店「ままや」を開店。その後、1998年閉店。著書に「向田邦子の遺言」など。
関連キーワード- 「向田邦子の恋文」
ユーザーレビュー- 「向田邦子の恋文」
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2003/01/19 20:58
20年後に明かされた、お姉さんのもうひとつの顔
投稿者:〜花巻温泉〜(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
1981年夏の飛行機事故で、突然逝ってしまった脚本家向田邦子さん。邦子さんの遺品として、本書の著者である妹、和子さんのもとにダンボール箱が残された。箱の中身が姉の恋の記録であることを、妹は薄々感づいていた。
和子さんがその箱をあけるには、姉の写真を整理し、思い出を文章にして『向田邦子の青春』をまとめる作業が必要だった。20年近い年月がたっていた。
本書を構成するのは、30代の向田邦子さんと、映像関係の仕事を通じて知り合った年上の恋人が交わした手紙と彼の日記。売れっ子脚本家として活躍する邦子さんと、病床からラジオやテレビで作品をチェックしてコメントをする彼。邦子さんと彼の間には、確かな信頼が見えます。毎日台本を生み出しながら、彼を愛し、健康を願う、そんな日々はあっけなく終わりを迎えます。
『向田邦子の青春』で披露された、第一線で活躍しながら家族への気配りを欠かさない、軽やかで聡明な姿に対して、本書では、その聡明な邦子さんがもう一方で必要とした、愛のかたちがみえます。
昭和を駆け抜けたお姉さんの、もうひとつの真実です。
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2004/04/08 08:53
飾らずとも華やかに
投稿者:米作り(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
「こんなに素敵な女性(ひと)がいたんだ!」 そんな新鮮な驚きをもちながら、夢中になって一気に読んだ。
邦子氏は、「しゃんとして」いて、でも「心地よい」空気も兼ね備えている方だと思う。日々、自身のバランスを欠いた気分屋な性分に悩まされている身としては、うやましい限りだ。日本の文芸界を突っ走る作家として、向田家の「心の大黒柱」として、そして重病を患った男性を愛する一人の女性として…。どれも決して楽な立場ではないが、辛い顔ひとつ見せず過ごしてきた彼女がどれだけ周りの人を助けてきたか、和子氏の文体から嫌味なく伝わってくる。
恋文に浮かび上がる20代の邦子氏は、(おこがましい言い方で大変恐縮だが)「すごくキュート」だ。ああ、本当に恋人のことが好きだったんだな、とこちらまで愛しい気持ちになる。けれども本を最後まで読んでからもう一度戻ってみるとどうだろう。彼女を襲った運命の厳しさと、甘酸っぱい恋文のギャップがあまりに大きく、すごく切なくなってくる。
向田ファンだけの本と思われそうだが、20代女性のひとりとして、ぜひ20代前半の女性に一読していただきたい。雑誌や自己啓発本の類に飽き飽きしている人には、特におすすめの一冊である。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2002/10/13 21:52
時間よとまれ、お前はあまりに美しい
投稿者:夏の雨(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
向田邦子が亡くなって二〇年になる。台湾上空の飛行機事故の死はあまりに突然だった。彼女が文壇に登場した時、コラムニストの山本夏彦氏は「向田邦子は突然あらわれてほとんど名人である」と語ったといわれる。そして今なら、こう付け加えてもいいだろう。「向田邦子は突然去って今もほとんど名人である」と。
この本は彼女の遺品の中に眠っていた、向田邦子三十三歳の切ない恋の記録の断章をまとめたものである。向田が心を許せる人だったN氏に宛てた彼女の手紙五通、電報一通、N氏から彼女に宛てた手紙三通、N氏の日記、手帳。この本に紹介されているのはわずか三ヶ月余りの時間に過ぎないのだが、二人のそれぞれに対する思いやりは如何ばかりだったのだろう。そして、それぞれが早過ぎる死を向かえてしまった事実は悲しい。まして、向田がN氏に宛てた自らの手紙を自身の遺品として残さなければならなかったことに、胸のつぶれる思いがする。
この本を読み終わってから「木槿(むくげ)の花」という、向田の死の後に書かれた山口瞳のエッセイを読んだ。山口瞳は向田が直木賞を受賞した際の選考委員の一人だった。彼は自分が強く彼女の受賞を推挙したことで、彼女の早過ぎる、そして突然の死を招いたのではと苦渋する。それとあいまって、山口がどれほど彼女の才能を評価し、彼女の人柄を愛していたかが深い悲しみとして描かれている。「向田邦子のように、会うたびにどんどん綺麗になる女性というのも、めったにいるものではない」と書いた山口は、彼女の「秘め事」を知っていたのだろうか。その山口も今はもういない。
書評のタイトルとした「時間よとまれ、お前はあまりに美しい」は、文豪ゲーテの「ファウスト」の有名な一節である。もしかすれば、カメラのファインダー越しに向田の姿を見つめていたN氏がこの一節を口ずさんだかもしれない。そうではないと誰も云えないほど、写真の向田は美しい。突然の航空機事故にまきこまれ、時間をとめざるをえなかった向田邦子は、山口瞳が評したように、綺麗なまま僕たちの前から去っていった。多くの美しい作品を残して。
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2004/12/03 22:08
開かされてしまった封印
投稿者:ろこのすけ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
航空機事故で急逝してしまった向田邦子さん。
この本は向田さんが亡くなって妹の和子さんが残された遺品の中からみつけたカメラマンN氏に宛てた向田さんの手紙とN氏の日記である。死後20年を経ての公開である。
読めば読むほど向田さんのけなげで一途な人柄に心うたれる。
カメラマンN氏は向田さんより13歳年上の妻帯者だったようだ。
病気で倒れ働けなくなったN氏はN氏の母親の離れで一人ひっそり逼塞していた。
そこへ放送作家として多忙極まりない向田邦子が日々食事の世話に訪れ、仕事の理解者でもあった愛するN氏との絆を深め、信頼を深めお互いが生きる糧となりあって寄り添っていった様子がわかる。しかしそれは決して公にすることなく秘かなることであった。
その一方で向田家の長女としても気丈に家計を助け家族の心の支えでもあり続けた向田さん。
四方八方に気働きのよくできた向田さんはN氏にだけはほっと心をほどいて一人の女としての幸にたゆたったのではなかろうか。信頼しあい、支え合って絆を深めていった二人ではあったけれど、脳卒中で不自由な体のN氏はある日、自ら死を選んだ。先行きのない前途にやつれた邦子さんをこれ以上巻き込むことができないと思ったからであろうか。愛するがゆえの自死であったろう。
そのN氏へ宛てた向田邦子の手紙とN氏の日記はN氏の母から死後茶封筒に入れてそっくり邦子に託された。N死の死後、どんなにこれら遺品をかき抱いて暮らしたことだろう。
本書はその秘められた茶封筒の中身を公開したことになる。
この本からは、向田邦子のけなげな人となりとその生き様が本当に読むのがつらくなるほど痛いくらい読みとれる。母をして娘以上の存在だったと言わしめる向田邦子。家計を支え、家族の心のかなめとして日々心をくだく向田。そんな邦子を愛し、仕事の良き理解者でもあったN氏との秘やかにして心ほどける日々の手紙とN氏の日記。
向田邦子を全て知りたい人にはかけがえのない一冊であるといえよう。
しかし、向田邦子さんからしてみれば、まさか自分の大切な「心」と愛する人の「日記」まで公開され、世に晒されてしまうなどとはゆめゆめ思わなかったことだろうに…
日記や手紙というものは第三者の目にふれられないという大きな安心の上で心を解き放って書かれるものである。特にN氏はあくまでも市井の一個人。その個人の日記を公開してしまうことに疑問をいだく。
家族にも他の誰にも知られないよう秘やかに紡いできたN氏との絆。
向田さんの人生で最も大切にしていたものを公に晒されてしまった感がいなめない。
他の何はさておいてもこれだけは最後まで秘して封印すべきものだったのではなかろうか。向田さんを知れば知るほどそう思えてくる。それは本書を読むほどに感じるのであるから何とも皮肉なことである。
きりりとした佇まいの美しいありし日の邦子さんの写真がその表紙を飾っている。美しくけなげに生きた人の顔がそこにあった。







