財政学から見た日本経済 (光文社新書)
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- 税込価格:735円(21pt)
- 発行年月:2002.10
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ユーザーレビュー- 「財政学から見た日本経済」
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2003/01/09 22:47
個人主義、自己責任の時代に適応すべし
投稿者:深爪(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
景気は未だ回復に遠く、構造改革は遅々として進まず、さらには国債の発行残高は増え続け…とこの国の今が憂うべき苦境にあることはもう火を見るよりも明らかなんですが、国家財政っていったいどのくらい危機的なのでしょうか? そして危機を回避するにはどうしたらいいのでしょう? 「財政」になじみのない庶民の不安に応えるべく、著者は財政の専門知識をベースに、熱い持論を展開しています。
わりとわかりやすい著述で、なるほどなるほどと読み進められます。特にインフレになった場合、どう生活防衛するかというあたりの論議は興味深く理解できました。
しかしつぎつぎと悲惨な状況が報告され、なんだか改めて呆れながら情けなくなってきます。
例えば地方への配分過多が的確に指摘されています。それは結局地方の自立に帰結せず、国レベルとしても景気回復効果を生まないと。いまや日本全国どこへいっても似たような街、似たような風景が広がっています。各自治体にしてみれば他に後れをとらぬようにと努力した成果なんでしょうが、皆が背伸びをしすぎていたのでしょう。
地方への偏向にしても、「保険金の支払い」と括られる財政支出にしても、要するに「行政ニーズに応えた」弱者に対するケアなんですから、経済が拡大を続け、財政に余裕があれば主旨的には問題ないことです。でもこの先若年層の人口は減り続け、「自己責任」の名のもとにすべてを縮小に向けてシフトしなければならないことはもうはっきりしているんです。過去の遺産をどうやって整理・解体していくか、気がつけばとっくにそんな時代に突入していたんですね。
公平性よりも効率性を優先させるべし、「日本経済の再生」の定義を「経済活動の秩序の回復」とするべし、と結んでいるあたりも、筋がとおっていて無理のない論立てです。実現の可能性については何とも言えませんが。
でもひとつ希望があるとしたら、いまの若い世代にでしょうか。筆者は終章でいまどきの学生に触れ、彼らが先輩や目上に媚びず個人主義的な態度をとることは、将来の日本経済のために有益なことと持ち上げていますが、私も同感です。もう上の人だからといって気を遣い黙って従う時代は終わろうとしています。来るべき個人主義、自己責任の時代に適応すべく、若い人たちはその準備をすでに体現していると解釈し、倣うべきなのでしょう。
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2002/11/10 15:51
現代人の必読書
投稿者:オリオン(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
二つのモラルがある。借りたら返す金融のモラルと決めたことは守る政策のモラル。この国でこれらが劇的に崩壊したのは1997年以後のことで、いずれの場合も失われたのは「信用」であり、その帰結は規律なき財政赤字の増大と政策論理の一貫性の欠如であった。
たとえば景気対策の名分を借りて今また繰り返されようとしている財政出動。それは「国家戦略」をもって効率性の観点から金融対策と一体となって日本経済全体の成長率を高めようとするものではなく、福祉国家的発想と公平性の名のもとでの「保険金の支払い」──農村部への失業保険(公共事業関係費)、自治体への減収保険(地方交付税交付金)、倒産リスクへの保険(中小企業対策費)──であるにすぎない。
そこには自分の庭は他人のお金できれいにすべきではない(受益に見合う負担を厭わない)という、グローバル・スタンダードならぬコモン・センスすら貫徹されていない。そのツケは結局、増税であれハイパー・インフレであれ国民が払うことになる。
こうした現実に対して著者が示す処方箋は三つ。短期的には特殊法人改革と郵貯・年金改革、地方行財政改革(地方交付税改革)の四位一体でなされる財政投融資制度の再構築であり、中期的には国境を管理する中央政府と地域経済を担当する地方政府の財政の分離(中央政府による地域間・産業間所得再配分機能の限定と、それと裏腹な地方への補助金分配に対する国会議員の関与の縮小)である。
長期的かつ抜本的には個人主義の徹底による自己責任の確立、そして連帯責任(責任の曖昧化)から他者を思いやる協同責任へという「経済活動での秩序の回復」をめざすこと。自分の生活の安全は自分で守る。約束は守る。この単純だが普遍的なルールの再構築にすべてはかかっている。
平易簡明な叙述ながら問題の実質と帰結と対策を苛烈なまでの説得力で鮮明に描写しきった必読書。







