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空中庭園

  • 出版社:文芸春秋
  • サイズ:20cm/298p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-16-321450-X

空中庭園

角田 光代 (著)

  • 全体の評価 4.56件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,68048pt
  • 発行年月:2002.11
  • 発送可能日:24時間

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商品説明- 「空中庭園」

【婦人公論文芸賞(第3回)】郊外のダンチで暮らす京橋家のモットーは「何ごともつつみかくさず」。でも、本当はみんなが秘密をもっていて…。ひとりひとりが閉ざす透明なドアから見た風景を描く連作家族小説。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「空中庭園」

角田 光代

略歴
〈角田光代〉1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞。著書に「ぼくはきみのおにいさん」(坪田譲治文学賞)、エッセイ集に「恋愛旅人」など。

ユーザーレビュー- 「空中庭園」

全体の評価
4.5
評価内訳 全て(6件)
★★★★★(4件)
★★★★☆(1件)
★★★☆☆(1件)
★★☆☆☆(0件)
★☆☆☆☆(0件)

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4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2007/08/21 20:48

ホームドラマをひっくりかえす

投稿者:トマト館(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

団地とショッピングモール。

この二つだけなら、
ありふれたホームドラマになったかもしれない。
この本で重要なのは、
長女が生を受けた
ラブホテル「野猿」が、
この二つに加わっているということである。
この三番目の要素によって、
「空中庭園」は、
通常のホームドラマを、
ひっくりかえしたというか、
ある意味、
ホームドラマが見せようとしない面を、
全面的にだした作品になっている。

「隠し事はしない」という
モットーをもった家族。
その一員や、周囲の人の独白調でなりたっているこの小説には、
いたるところに隠し事がある。

すべての隠し事をしっているのは、
ほかならぬ、
読者だけ。
そのそれぞれの秘密を、ひとつひとつばらしていくような連作である。

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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2005/03/03 15:31

あなたは家族に「秘密」を持っていますか?もし持っているのであれば是非この小説を…。

投稿者:エルフ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

「秘密」を持たず、何でも包み隠さずに話し合う「京橋家」。
最初の「ラブリー・ホーム」では違和感を感じるほど仲睦まじい京橋家が書かれているのに次の「チョロQ」から一気に雲行きが怪しくなっていきます。

まず最初の「ラブリー・ホーム」に登場する京橋家の父親と「チョロQ」の貴史が重ならない。連作だと知らずに読んでいたので途中まで同一人物だとは気付かなかったくらいです。それくらい貴史のイメージが違い、また貴史から見た京橋家も違っています。
さきほど読んだ京橋家は幻だったのか?と思えるくらいの違い様なのです。

「ラブリー・ホーム」でも京橋家の長女・マナは家族にある秘密を持つのですがこれはまだ可愛らしい方ですし、こういう秘密は家族に話せないので恐らく誰もが納得すると思うのですよね。ところが「チョロQ」以降の短編は予想以上の秘密の大きさに薄ら寒さを感じるほどなのです。
しかも秘密が秘密を呼び、誰もが自分の「秘密」を守り、家族の前で京橋家の求める家族を演じている。しかも最初からこの家族は「嘘」から成り立っているから怖い。この「嘘」を見破られないために必死で家族の形を作っているのですよ。
「鍵つきドア」で貴史の浮気相手、ミーナが見た京橋家は一言で言うと学芸会のような家族でした。誰もが家族の一員として演じ、それに違和感を感じていない、それなのに全員が鍵つきのドアを持っていて同じ食卓に並んでいながら本当の顔を見せていない京橋家。
この「鍵つきドア」までの4編で見事にその部分が語られているのでこの部分を読んだ時には思わず背筋がゾッとしました。
決してホラー小説ではないのに、仮面の裏に隠されたそれぞれの「秘密」が見え隠れして読んでいると自分の家族を想像し重ねる怖さがあるのですよね。
実際に家族と言っても「秘密」を持たない家族はない。
誰もが過去なり現在なり何かを「秘密」にし、それを家族に知られないように演じているはず、その当然のことをここまでリアルに書かれると家族とは詮索しない事壊さないよう人の秘密は暴かないことが大事なのかと悩んでしまいますね。

あなたは家族に「秘密」ありますか?
もし「秘密」を持っているのであれば是非この小説を…。

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1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2003/08/22 21:26

祝!婦人公論文芸賞、賞金100万はともかくとして、これを機会に、もっと多くの人が角田光代を読めばいい。でも、かくたみつよとは読まないよね、普通はつのだでしょ

投稿者:みーちゃん(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

この小説が第3回婦人公論文芸賞(中央公論新社主催)に選ばれたのが8月20日。ちょっと記憶に自信がなかったから「角田光代・婦人公論・受賞」でネット検索してみた。全く出てこない。「文学賞」では婦人公論文芸賞自体が見つからない。「角田光代」で調べても最新の受賞の更新はされていない。で、中央公論新社のHPを覗いてみた。これがまた、ひどい。自分のところで出している賞なのに全く記事がない。自社出版物の宣伝ばかりで、トピックスみたいなものはないし、検索も出来ない。これが老舗のHP?とガックリ。

閑話休題。この本、直木賞の候補作にもなっている。ただし、私個人としては、以前、角田の『キッドナップ・ツアー』を読んで苛ついた記憶がある。登場人物の会話にカツンときた、それだけが印象的で、話の内容は全く覚えていないのだから、かなりひどい。ただし『キッドナップ』は路傍の石文学賞、産経児童出版文化賞フジテレビ賞を獲得している。でも面白くないものは仕方がない。因みに、図書館では『空中庭園』は引く手数多だけれど『キッドナップ』はお茶をひいている。読者は正直だ。

「あたしはラブホテルで仕込まれた子どもであるらしい」この冒頭の文だけで、この物語の掴みはOKって感じ。しかも、そのラブホの名前がホテル野猿ていうのだから、教わった娘のマナだってガッカリする。マナはもうすぐくる誕生日で16歳。弟は中学三年生になるコウ14歳。「何事も包み隠さない」というのが我が家のモットー。でも同級生の森崎と野猿に行ったことは内緒。マナの「ラブリー・ホーム」。

飯塚麻子は京橋貴史の高校三年のときのクラスメート。妻の絵里子の妊娠が飯塚との交際の始まりだった。20歳で子どもが出来て、結婚をして大学中退。今は26歳のミーナとの浮気が飯塚ばれて、タカちゃんの「チョロQ」。母親が鬱陶しくてならない絵里子が企むのは京橋家の完全支配、それが自分の秘密。そんな彼女は14歳の息子の会話が理解出来なくなっている。原因は新しい家庭教師の北野三奈だろうか。子供に語る馴れ初めも、すべて嘘。絵里子の「空中庭園」。

年取った私に言い寄ろうとする爺さんもいる。ま、ただで好きなものが食べれるならばそれでいい。娘にも、いろいろ悪い思いをさせたかも知れないけれど、わたしはそんなに悪い人間じゃあない。母の「キルト」。私が何故、彼の家庭に入り込んだのか、相手もわからないだろうけれど、私自身もはっきりしない。そんな私の誕生会が。ミーナ「鍵つきドア」。僕がすでに童貞でないことは、家族の誰も知らない。その相手は高校一年生。占いが外れたことで、ハブられている彼女とコウの「光の、闇の」。

整理して書いておくと、京橋家の主人は貴史。40歳間近。滅法、女に弱い。今は、高校時代以来付き合っている飯塚麻子のほかに、26歳の北野三奈とも付き合っている。浮気の尻尾はとっくに妻だけではなく、麻子にも掴まれている。妻は絵里子、街道沿いの飲食店でパートをしている。大学生だった貴史とつきあい、妊娠、結婚。責任を取らされた形で、貴史は大学卒業を断念、すぐに仕事に就かなければならなくなった。子供は女子高に行っているマナと中三の息子コウ。絵里子の実の母は、生まれつきなのか年のせいか、すこしボケ気味。彼らの6つの視点が浮かび上がらせる現代家族の風景。

いやあ、面白かった。意外だった。これなら直木賞の候補どころか受賞しても、少しもおかしくない。重松清の本だと、大体心に秘密を持つのは、一人だけというパターンが多いけれど、角田のこの本に出てくる人間は、皆がみな、隠し事をしている。しかも、子供まで、かなり強かな印象だ。それが、視点が動いていくことで、見事に浮かび上がる。こういう傑作は、他社の本だって宣伝しなきゃ。出版界のためにも、たのんます。中公さん、おねがい新社さん。

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2004/12/29 15:18

どこかにありそうな家族。

投稿者:いわさち(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

秘密は誰にだってある。あるように悟られないようにするのも秘密である。
私はそう考える。だからこの京橋一家のモットーははぁ?って思った。
そんなのは建前。みんなに秘密がある。

自分が「発生した(させられた?)」ラブホで遊ぶ娘。
20年近く浮気を続け、26歳の愛人がいる父。
できっちゃった婚と見せかけ計画出産だった母。
じつはとっくの昔に童貞を捨てちゃってた息子。

家族4人は知らない、いや知らないふりをしているのかもしれない。
よくある話だ。これが一般家庭のあり方だ。
もちろん浮気をみんなしていて隠しているというわけではない。
知らないふりは大事だ。みんなの輪を壊してはいけない。
平和主義。江戸時代中ごろの風潮といったらよいものか。
そういう風にこの家族は捕らえていないかもしれない。
秘密と思っていないかもしれない。

秘密という重々しいものとは対照的に話のテンポは軽く読みやすい。
ラブホも舞台になるが性的描写は最低限に抑えられている。
ラブホ、大型ショッピングセンター、そして団地。
3点セットで話は進むが、単調にならない。
主になる人物が変わるからでもあろうか、
大型ショッピングセンターひとつとっても
家族の視点は大きく異なりおもしろい。
読み比べてみるのも良いと思う。

京橋家一家4人の他に2人の話が入ってくる。
母の母と息子の家庭教師で父の浮気相手。
2人の話も京橋家を写す鏡となっているのではないか。

浮気、ラブホ…こういう言葉が嫌いな人はだめかもしれない。
大丈夫な人にはお勧めします。おもしろい。

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7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2006/03/06 20:17

砂上の楼閣

投稿者:つな(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 京橋家のモットーは秘密を作らないこと。全ては「ダンチ」のリビングの、蛍光灯のもとに晒される定め。姉のマナの初潮だって勿論そう(初潮晩餐会が催される!)、弟、コウの性の目覚めもそう。
 わざわざ「秘密を作らないこと」をモットーに掲げるだけに、実は京橋家には沢山の秘密が存在する。一番の秘密は、このモットーを作った母、絵里子がひた隠しにしていること。絵里子は、夫、タカシには避妊の失敗により結婚したと思わせ、またマナたち子供には、ヤンキーだったから早くに結婚したのだ、と説明していたが、実はそれは両方とも真っ赤な嘘。自らの家庭に絶望していた絵里子は、早く自分の家庭を作り、育った家庭を捨てるために、虎視眈々とその機会を狙っていたのだ。彼女のバイト先に現れた、平凡な大学生タカシは、絶好のカモだったというわけ。これはそんな京橋家を巡る人々が語る物語。
 「ラブリー・ホーム」は娘のマナが、「チョロQ」は父タカシが、「空中庭園」は母絵里子が、「キルト」は絵里子の母が、「鍵つきドア」はタカシの浮気相手ミーナが、「光の、闇の」は息子コウがそれぞれ語っている。
 母、絵里子には「こうあるべき」という家庭の理想の姿があった。子供たちを真っ暗な家に帰らせたくはないし、ベランダに設けた庭園には、いつも花が咲いているべき。ところが、毎年花を咲かせるはずの植物すら、この「空中庭園」には根付かない。必死に明るい花を咲かせる絵里子であるが、その背中は他の家族から見ると、鬼気迫るもの。
 絵里子は自分の生涯のある部分までを、なかったことにしたいと思って生きている。母にされた事の逆をすれば、良い子育てが出来ると信じている。絵里子の歴史の曖昧さを意識するからか、娘のマナも「自分が仕込まれた場所」を聞くし(それはなんと近所のラブホテル「野猿」!)、夫タカシもいつまでもフラフラしたまま実家の仕送りを受け続け、息子コウは同じ間取りでも全く違う顔を見せる家庭や建築に異常なまでの興味を示す。ここに出てくる大人は、タカシの浮気相手ミーナを含め、人生のある時点での過ちを、なかったことにしたいと思って生きている。しかしそれは正しいことなのか?
 キルトで語られる絵里子の母の話を読めば、絵里子が信じ込んでいたほど、彼女の育った家庭が酷くはないことが分かる。絵里子の母は不器用だっただけ。懸命に生きていたが、それが娘の絵里子には全く伝わっていなかった。後半で、絵里子の母が倒れ、母の言葉から、また絵里子の兄の言葉から、これまで絵里子が信じていた母の像が毀れる。絵里子は、京橋家はここから、空中の、砂上の楼閣ではなく、しっかりと地に根付いた家庭を作ることが出来るのだろうか。ここで、読者もまた空中に放り出される。絵里子の母の苦労、気持ちが、絵里子に伝わるといいな、と思う。「家族」について、考えさせられる本だった。

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2002/12/15 22:25

切なさとほんわかした優しさを与えられた

投稿者:HANA(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

母、父、娘、息子、母方の祖母、父の愛人かつ息子の家庭教師である女性が登場し、それぞれの立場からの家族を描く、連作小説。

「家族小説」というと、どこか重い雰囲気が漂い、敬遠しがちだったが、「あたしはラブホテルで仕込まれた子どもらしい」といった娘の独白から始まり、地方都市を舞台にしたストーリーが続き、あっという間に読んだ。少し冷めて互いに距離を置く家族のメンバーのどの人物にも違和感なく共感できた。

家族って、同じ空間で、何年も何十年も暮らしながらも、こうも思っていることは通じ合わないんだなあ、と切なくなる一方、分かり合えない分だけの気遣いや推し量る思いがあるからこそ、一緒にやっていけるんだ、とも気付かされる一冊だった。

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