ミラードリームス

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投稿者：エーミール　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　眠っている時見る夢ってなんなのでしょうか。人間の脳の働きによるのでしょうか。それもつきつめていくと、人間存在そのものの不思議にまで想いをはせることになります。
　もしかしたら、そんなことから生まれたファンタジーかもしれません。作家は14歳。
　今は16歳になっているのだそうです。約５時間で書き上げたのだとか。「少女」が書いたものだからといって、甘いものと思ってはいけません。読み終えると上に書いたように「夢」そのものを、考えてしまうくらいきっちりとパラレルワールドを描きあげています。
　人物描写も性格的に面白く描かれているし、かけひきの場面など大人だってこうは書けないのではないかと思うほど巧みです。ユーモアのセンスもいいし、味わい深い大人っぽいファンタジーになっています。
　最初の方は、展開のスピードがやや遅く、夢の世界の国々の設定がよくのみこめなくて物語にはいれないのでは？　と心配になったりもしたのですが、だんだんよくわかってくると、人物設定の面白さもイギリス風（？）のおさえのきいたユーモアも活きてきて、これはなかなかのものだなと思えてくるのです。
　装丁が目を引きます。銀色のカバーに、よく見るとまどろんでいる女性の顔がネガでプリントしてあります。気になって思わず手にとってしまう装丁です。カバーの折り返しに、ストーリーの百年前の部分が書かれていますが、これは本文に入る前のページにおさめておいて欲しかったです。カバーのところに書いてあると、本文にダブって書いてあることだろうと思って読まない人も多いのではないでしょうか。ところがこれは、結構大事な部分なのです。
　本書には続編があり、イギリスでは１月に出版されていて、日本では秋には出版の予定だそうです。魅力的な主人公の魔法使いや夢見人に、続編で再会できるのを楽しみにしています。それまでは、本書の最後に書かれているように、夢で会うことにしましょう。

（エーミール／図書館の学校・児童書選書委員会）