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魔性の馬

  • 出版社:小学館
  • サイズ:19cm/365p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-09-356461-2

魔性の馬 (Shogakukan mystery クラシック・クライム・コレクション)

ジョセフィン・テイ (著), 堀田 碧 (訳)

  • 全体の評価 51件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,80051pt
  • 発行年月:2003.3
  • 発送可能日:購入できません

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商品説明- 「魔性の馬」

ロディングがロンドンで出逢った孤児のファラー。彼はアシュビー家の行方不明のパトリックにそっくりだった。金に困っていたロディングは、家督相続人である行方不明の兄が戻ってきたと、彼をアシュビー家に送り込んだが…。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「魔性の馬」

ジョセフィン・テイ

略歴
〈テイ〉1896〜1952年。スコットランド生まれ。英国の女流作家・戯曲家。バーミンガムの女子体育学校を卒業。著書に「時の娘」「フランチャイズ事件」など。

ユーザーレビュー- 「魔性の馬」

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2003/06/13 21:13

名作ミステリ『時の娘』に先立ち1949年に発表されたテイのもうひとつの代表作。埋もれた名作の本邦初訳。英国の田園生活や登場人物の心理の描写が魅力。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー)(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

『不死の怪物』という古典ホラーの名作がしばらく前に出たとき、「古典的名作にも訳し忘れってあるんだ」と不思議な感じがしながら、掘り起こしを歓迎した。
 内外でおびただしい出版物が刊行されている今なら、「あの作家のこの話題作がまだ訳されていない」などという情報が、原書で読む熱心なファンや研究家たちによって寄せられるのを複数のサイトで眺められる。
 しかし、50年以上も昔のことであれば、英米圏で評価が高い小説はほぼ遺漏なく紹介されてきたのでは…という印象がある。ましてや、古典ミステリ定番中の定番『時の娘』の作者が寡作の人となれば、しかも読了してこれほど出来が素晴らしいものであれば、「よくぞこれまで埋もれていた」と驚きを禁じ得ない。

 ジョセフィン・テイの他作品のレビューでどなたかが書かれていたが、『時の娘』は傑作ではあるが歴史ミステリであり、英国の歴史に多少なりとも興味がある
読者でないと入っていきにくいという面が確かにある。入院中の警部が、多くの史書からリチャード3世の子殺し事件という史実ミステリを解明していく設定であり、動きが少ないから特定人物に感情移入もしにくいかもしれない。
 それに比べると本書は、行方不明の名家の家督相続者にうりふたつの孤児が、本人に関する情報をみっちり叩き込まれ、当の屋敷に身代わりとして送り込まれるという設定からして分り易く、どうなることかと、とっつき易い。読者が面白そうだとイメージを抱くストーリーの展開パターンを、きっちり踏まえている。
「身代わり」「成り代わり」というモチーフは、ここ50年のうちにミステリのみならず小説やマンガ、アニメなど多くの後続を生み出してきたであろう。その先輩格のひとつである本書が、そういったものの「見本の型」を提示していることを改めて発見するのは興味深い。尚且つ、後輩たちに負けない魅力をいくつも有していて、決して古臭くないことに名作の底力を知らしめられる。

 いくつかある魅力のひとつが、名家の繁栄を支えてきた「馬」の存在だ。孤児院を出て就いた仕事に夢も希望も持てなかったブラットは、船に乗ってコックの下働きをし、メキシコに渡り米国へ入国する。南部で馬と出会い、牧童や調教や蹄鉄の仕事などを重ね、英国の馬と働きたいという望みをもって帰国する。
 人をだまして財産を手に入れる悪だくみに気が進まないながらも、彼をラチェッツという土地へと駆り立てたのは、その領地を所有するアシュビィ家が厩舎を持ち、ポニーの飼育や調教、乗馬レッスンで家を維持していたからなのである。
 物語のクライマックスは、この馬に関するイベントでテンションが高まる。といったように馬という素材を効果的に利用しているほか、題名にある通り「魔性」という性格づけをされた不思議な馬が登場し、その馬と孤児ブラットとの交流がまたひとつの読みどころとして描かれている。馬のことばかり書いたが、それが駆けめぐる英国の自然の豊かさというものが、丁寧に書き込まれているのも楽しい。

 犯罪に加担しながら、周囲の人の優しさに鈍感ではいられないために悩みつづける主人公はじめ、家族や使用人、近隣の人びとの特徴や言動が目に浮かぶ人物像として丹念に書かれている。これも期待を裏切られない小説たるゆえんだ。
 ミステリの結末としては、過去として書かれる事件も、本の中で進行していく事件もすっきり解決することが必須条件だが、解決以上の余韻も残る結末になっている。それが、人物たちに共感して読み進めた読者にとっては何よりである。

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