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庭の小さなばら

  • 出版社:講談社
  • サイズ:20cm/235p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-06-211753-3

庭の小さなばら

庄野 潤三 (著)

  • 全体の評価 4.52件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,78551pt
  • 発行年月:2003.4
  • 発送可能日:購入できません

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商品説明- 「庭の小さなばら」

多摩丘陵の家の夫婦二人だけの穏やかな日々。暮らしの中に小さな楽しみを見つけ、よろこびの輪を広げながらゆったりと時が流れ…。『群像』連載をまとめて刊行。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「庭の小さなばら」

庄野 潤三

略歴
〈庄野潤三〉1921年大阪市生まれ。九州帝大法文学部で学ぶ。「プールサイド小景」で芥川賞、「静物」で新潮社文学賞、「夕べの雲」で読売文学賞、「明夫と良二」で毎日出版文化賞、赤い鳥文学賞を受賞。

ユーザーレビュー- 「庭の小さなばら」

全体の評価
4.5
評価内訳 全て(2件)
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2003/05/04 14:33

老作家の近況報告

投稿者:大東数矢(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 足柄山に住む長女の夏子さんが大活躍である。「足柄旅行代理店」として夫婦の日光旅行の案内役、「おじいちゃん八十歳おめでとうの会」の世話役、「夏の民宿今村屋」のおかみ。門のとりかえと室内の塗装工事を泊りがけで手伝い、芸術院のビデオ撮りにそなえて家の掃除やガラスふきをするなど。
 さて庄野作品を読むとき、いつも楽しみにしているのは、この夏子さんをはじめ、こどもや孫たちからの手紙である。
 旅行から帰るとすぐに長女から「大成功の日光旅行!!」のお礼の手紙が来るし、お中元のビールには八十歳の会の「幹事のいの子」(夏子さんは亥年生まれ)からの手紙がついている。
 次男一家のモルジブ旅行の報告会を長男一家とすし屋で開き、「ビール(ヱビス)をよく飲み、お酒(福娘)も何度も追加して、盛り上がった。」
 「次男のはがき。」
「昨日は益膳のおいしいお料理をご馳走になり、ありがとうございます。…文子や春夫たちも大へんよろこんで居りました。」
 「長男の手紙。」
「…出て来る料理は、どれも素材を生かしたおいしいものばかり。それがヱビスビールと福娘によく合うこと!」
 つまり、読者は、庄野一族の一年を作者の筆によって楽しんだのち、さらに手紙を通じて堪能することができるのである。
 最後にはじめて宝塚歌劇に行った孫の春夫の手紙。
「今日は宝づかによんでいただいてありがとうございました。宝づかはとてもキラキラして、きれいでした。さいごに羽をつけたひとがかいだんをおりて来るところは、心にグサッときました。」
 彼が、作者と同じように、よき宝塚ファンになることを願っている。

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2003/05/03 23:00

ゆるやかな蜜月

投稿者:KANAKANA(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

庄野潤三を読み始めたのは、小学生のころだ。母から「『家族ロビンソン』みたいな本—たしか、ふた昔ほど前のテレビアニメ「南の島のフローネ」の原作になっていた物語で、ある一家の乗った船が難波して南海の孤島に取り残されるが、パンの木が生えていてとりあえず食いっぱぐれないのはお約束としても、家畜におあつらえむきの動物がうろうろしているわ、密林をずんずん切り拓いて畑をつくるわ、難破一周年記念と称して家族で大運動会を催すわと、それはもう途方もなくのんきで前向きな家族の南洋小説なのだった—だから、読んでみるといい」と『明夫と良二』手渡されてからというもの、「丘の上の家族」とわたしは、ずっと一緒に年を重ねてきた。

正確に言うと、十代の終わりごろからしばらくは、物語のスジを追うことがうっとうしくなって本を読むことをやめてしまったから、たまの付き合いになってしまったけれど。一年に一度、思い出したように新聞に掲載されるエッセイや新刊案内を「いま生きている作家で読んだことがあるのはこの人ぐらいだな」と、なつかしいような、さみしいような思いで眺めていたのを覚えている。

今ではそんな時代が信じられないほど、節操のない読書人生に突入—もっと早くから読むべきだった川上弘美に須賀敦子、ユーモア小説というジャンルが確実に存在する(した)ことを教えてくれた小林信彦、フランス郊外の少し殺風景な生活空間と王子とか早稲田といった都電周辺のよれた風景を違和感なく結びつける堀江敏幸、おまけにポール・オースターに始まる翻訳モノに手を出したら、読む本多すぎて収拾つきません—してしまったけれど、背表紙が日に焼けて黄ばんでしまった『夕べの雲』や『絵合わせ』はあいかわらず本棚の定位置を占め、庄野潤三とのゆるやかな蜜月はさいわい未だ続いている。

ただしある席上で、愛読書はやはり庄野潤三でしょうかと口ごもるわたしに「若い頃はたしかに読んでいたが、今はマッタク興味をひきません。だって同じことの繰り返しでしょう」と言い放った元・文学青年らしきオジサマの言からもわかるように、多摩丘陵に引っ越してきた40年前から今回の『庭の小さなばら』まで、家族の日常を書き続けるスタイルは、まったく変わらない。

とくに、三人の子どもたちがそれぞれ家庭を持つようになってからは、変化するのは孫の年齢だけ? と錯覚するくらい、おだやかな老夫婦(私と妻)の日々が綴られている。
脳内出血で倒れてからはリハビリも兼ねた散歩が日課、毎日の食事は「おいしい」。ときどき長女が足柄山から訪ねてきては宝塚観劇や小旅行にでかけると、そのあとに必ず「長女はいい手紙をくれた。ありがとう」。「おじちゃん八十歳おめでとうの会」には、子ども・孫・友人の総勢十五人で食事会。裕福すぎず、貧しくもない、ごくふつうの家族の記録。

だけれども、と思うのである。この何気なさのために、どれだけの注意がひそかにはらわれていることか。まず、書き手は健康でいなければいけない。まわりを観察する眼と、それを記録し続ける手がとまらないように。そして家族は仲良くあり続けなければいけない。ただの血縁の集まりにならないように。
その按配の難しさなんてものは、そもそも存在しないかのようにここでは描かれているけれど、つかず・はなれず・よりかからず。おだやかな日常を維持しつづけるには、たゆまない努力がいる。
どこにでもあるようでいてどこにもない、この幸せな家族の記憶をもうしばらく味わっていたい。

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