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分岐点

  • 出版社:双葉社
  • サイズ:20cm/363p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-575-23457-5

分岐点

古処 誠二 (著)

  • 全体の評価 4.52件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,78551pt
  • 発行年月:2003.5
  • 発送可能日:購入できません

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商品説明- 「分岐点」

日本人が本土決戦を覚悟し、中学生も勤労動員に駆り出された1945年8月。一人の少年が軍人を殺害した。鮮烈に胸を打つ、衝撃の結末。青春ミステリー。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「分岐点」

古処 誠二

略歴
〈古処誠二〉著書に「未完成」「ルール」等がある。

ユーザーレビュー- 「分岐点」

全体の評価
4.5
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2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2003/06/13 23:36

敗戦直前の帝国軍人の姿を見ていると、ほんとうにハラワタが煮えくり返る。国民より国体を守ることしか、そして自分たちを守ることしか頭になかったんだから。それは今も変わっていないかもしれない

投稿者:みーちゃん(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

今日は、戦争、日本が見事に敗れた、あの第二次世界大戦について書く。といっても、急に私が反戦派になったわけではない。あの戦争における軍人の愚劣な行動を描いた本にぶつかって、腹腸が煮えくり返るような怒りを覚えたからだ。無論、著者に対してではない。文学以前の怒りなど『マーメイド』の井口明美に対してだけで十分だ。

ついでに書いておくけれど、この本の著者である古処誠二は、既に『ルール』という小説で、血液が凍りつくような狂気に満ちた敗軍の姿を描いている。1970年生まれの人間が、どうやってあそこまで本格的な戦記小説を作ることができたのかと驚きながら、震える想いで読んだ傑作だった。それについては、次回にして、この憎しみに満ちたドラマの紹介に入ろう。

主人公は誰だろうか。13歳の、母を亡くし、田淵さんに面倒を見てもらっている虚弱体質の少年、対馬智だろうか。それとも、いつもお国のことを思い、そのために尽くそうとする成瀬憲之だろうか。その、お国の為という一言をかざして同級生の上に立とうとする成瀬を毛嫌いする梅野だろうか。いや、少年たちではなく、第二小隊の指揮を執れと言われ、敗戦を確信しながら中学生達を率いる片桐少尉だろうか。片桐に自分の本音、アメリカへの憧れを隠そうともしない服部伍長だろうか。それとも、アジアを転戦し今は本土で決戦の準備のために少年たちを拳で追いたて、智を苛め抜くサディスト、臼井伍長だろうか。

舞台は、敗戦の直前、本土への爆撃が繰り返され、物資は欠乏し、軍人と軍部の威光を背景に人の上に君臨しようとした人間以外は、誰一人として日本の勝利を信じることができなくなった昭和20年の夏の日本である。

母を空襲で亡くした智たち中学生が、ひ弱な教員柴田に率いられて三満川両岸に、陣地構築の為に動員されるところから始まる。中学生たちを、道具、いや自分たち軍人にとっての人間の盾程度にしか考えない臼井伍長は、実戦経験のない上官である片桐を嘲弄し、拳を上げることもできない教師の柴田を愚弄し、やせ細って抵抗もできない智、梅野たち中学生に暴行の限りを尽くす。空き腹を殴られ、蹴られ、血しか流すことができない智の絶望。その智を、足手まといだと貶す、軍人たちのお気に入り、優等生の成瀬。虎の威を借る同級生に敵意を抱く梅野。彼らの作業を嘲笑うかのように、田園に現れては市民に銃弾を浴びせるグラマン。

まだ、広島にも長崎にも原爆は落とされていず、自分たちだけは安全なところに身を置いた阿南陸軍大臣が「神州護持の聖戦を、草を食べ、土をかじって戦い抜け」と能天気な言を発し、連合国の出した無条件降伏に、「笑止」と答えて国民を無駄死にさせていた最後の夏。そこで奏でられる憎しみと狂気の輪舞。

ここに出てくる臼井は、井上ひさし『東京ローズ』に出てくる町会長であり、大江健三郎『取り替え子』『憂い顔の童子』に出てくる市国の右翼であり、篠田節子『コンタクト・ゾーン』に出てくる反政府ゲリラでもある。権力を背景に、本来、自分たちが守らねばならない人間に、暴力を振るい君臨しようとする人間の屑。

しかし、これほど多くの小説が、そういう人間を描くということは、それが未だに日本の現実世界に存在することを意味している。そんな今、国民のことなど顧みたこともないない国会議員や官僚が有事関連法案を成立させ、真実の声を封じる個人情報保護法という名の、言論弾圧法を通してしまった。何度も繰り返すが、恐ろしいことだ。臼井のような頭しかもたない議員が、保身の為だけに通過させた二つの法案。それが生むのは、身近では『分岐点』の世界。そして、どこかで『ルール』の世界。自分たちの明日を見たければ、この二冊を読めばいい。私の絶望の意味が、腸が煮えくり返った理由が分かるだろう。

明日は、その恐怖に満ちた戦争の真実を描く古処誠二『ルール』を取り上げる。

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2004/07/19 15:21

私は、戦争を知らない。

投稿者:早秋(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

私は戦争を肌で経験したわけではないから、戦争がどんなものか知らない。
餓えも知らないし、銃で撃ち殺される人間を見たこともない。

戦争の話だなんていうと、重いと敬遠したくもなるだろう。
だけど、読んで欲しい。
特に私のように戦争を知らない若い世代。成瀬少年と同じ位の年齢の人に。
古処さんの読ませる筆力は、秀逸だから。

この本には、対極にいるであろうたくさんの人が出てくる。
卑怯な大人も清々しい大人も、真直ぐな少年も出てくる。
でも、卑怯な少年はいない。
それが私には救いだった。
真直ぐな少年の真直ぐな姿勢は痛々しいけれど、それは私が「今」から見ているからだろう。
彼を否定することは誰にも出来ないけれど、否定してしまいたいとも思う。
いや、否定したいのは戦争だ。
戦争による統制だ。

「分からない」が一番近いかもしれない。
私と彼を隔てる点は、時勢だけなのだろうか。
成瀬少年は、どうやって生きていったのだろうか。
後悔などせず、清々しく生きていたのだろうか。
私には、分からない。

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