聖者の島 (徳間文庫)
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- 税込価格:620円(17pt)
- 発行年月:2003.6
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ユーザーレビュー- 「聖者の島」
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2011/08/29 09:53
人類文明の限界が冷ややかにテストされる
投稿者:SlowBird(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
離島や山奥の隠れ里は寿行が舞台に選ぶことの多い場所だ。そういう空間的にも、人間関係にも閉ざされた場所では、人間の欲望が凝縮された極限状況が生み出しやすいとか。
自由と平和だけを理念として、選ばれた100組の家族が無人島で疑似国家を形成するが、理想社会を作ることができるのか、国家として機能するのか、そういう思考実験のようでもある。
空間的な凝縮は、歪んだ人間の存在を大きなものにしてしまう。それに加えて、歪みを拡大し、スピードアップさせる時間的な凝縮も舞台装置に組み込まれている。一つはポリネシア、メラネシア、ミクロネシアを一つに統一しようという理想のための、国家レベルの駆け引きと裏工作。そして旧日本軍が発見していた、人を狂気に陥れる謎の森の存在。隣人同士の関係が壊れ、夫婦、親子の関係が壊れ、そして強国からの圧力でこの疑似国家の外枠もまた揺らぎ出す。
島に潜んだ謎を探る冒険小説である。幻獣の森は、島の自然を破壊から守るための進化なのか。かつてヨーロッパ人に蹂躙された人々の呪いか。
バイオレンス小説である。酸鼻である。良識的な人々というのはあまり登場しない。いや本当は登場するのだが、良識的な人々とは環境(の変化)に適応(追従)するのが上手な人々である。あるいは価値観が環境によって揺らぐことなく、よってそれに介入することもない。うーん、そういうことなんだろうか。だが誰もが戦うことになる。
描こうとしているのは、理想の勝利か、崩壊か、その激突か。
そこには、人間の原初的な欲望と理性の、あういは欲望と欲望、理性と理性のせめぎ合いもある。さらにそれらを超然と観察している視点も加わる。
最後の勝利者が誰なのか、理知と狂気のいずれが勝るのか、それは人類の行く末を占う実験なのだろうと思う。







