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斜陽 改版

  • 出版社:新潮社
  • サイズ:16cm/244p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-10-100602-4

斜陽 改版 (新潮文庫)

太宰 治 (著)

  • 全体の評価 4.510件のユーザーレビュー
  • あなたの評価 この商品を評価して本棚に反映 評価しました! ×
  • 税込価格:35710pt
  • 発行年月:2003.5
  • 発送可能日:24時間

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ユーザーレビュー- 「斜陽 改版」

全体の評価
4.5
評価内訳 全て(10件)
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★★★☆☆(1件)
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2003/03/02 00:07

不確かさを増す今の時代、もう一度、読みたい。

投稿者:〜花巻温泉〜(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

太宰治の代表作のひとつである本書「斜陽」が発表されたのは昭和22年、戦後の混乱期です。戦前の価値観、階級が意味をなさなくなり、人々の魂は生きる意味、理由、居場所を求めてさまよいます。

主人公かず子と、「最後の貴婦人」である母、戦争から帰ってきた兄、そして中年の流行作家上原。四人四様の旅路が、太宰の、一流の日本語でつづられています。

変化の局面にどうあれば、あることが、可能なのでしょうか。
対応を拒否して、退場する。自らが変化して新しい時代の構成員になる。いずれにも、苦悩が伴うでしょう。

21世紀になった今、一応の物質的な豊かさは相変わらず日本を覆っていますが、高度経済成長からバブルの時代を通じて信じられてきた価値観の揺らぎは、もはや否定しようがありません。

本書でえがかれる登場人物に、朝日の明るさはありません。が、不確かさを増す今の時代に、共感を得、こころ癒される人も多いのではないでしょうか。

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2002/03/26 12:31

不景気によりずるずる落ちる世帯年収におたおたしている水準では、美しく滅びていきたいと願う主人公の貴族たちに同化などできやしない。久世光彦氏言うところの優れた小説はみな少女小説——その決定版。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー)(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 自分は実は<隠れ太宰>だ…と熱読を告白する作家の久世光彦さんが、「すぐれた小説はみな少女小説である」というようなことをいくつかの場所で書いていたと記憶する。
 この場合、少女小説をどうくくるか、厳密な定義づけは野暮というものだろう。昔あった少女雑誌で発表されていたような…というアバウトな捉え方で、境界がぼんやりとした、しかし明らかに「聖域」と呼びたくなるようなジャンルが透けて見えてくればいい。実際太宰の小説は、その種の雑誌に何回か発表されている。

 礼法に外れ野蛮とも言える仕草(食べ物をひょいと指先でつまんで口に運んだり、秋月夜、奥庭の萩のしげみのなかでおしっこをしてしまったり)をすることもありながら、誰にも真似できない品が備わった最後の貴婦人「お母さま」の記述から始まるこの小説は、まさに少女小説の決定版といったおもむきがある。
 そんな母をあがめる長女かず子は、子をみごもっていたというのに夫以外の男性に好意を寄せた結果離縁をして、今またしょうもない男に胸を焦がしている。ラディカルな革命理論の本を読んで破壊思想に惹かれ、恋による滅びに身をやつそうと決意する。かず子の弟の直治は南方戦線から戻ると、元の不良少年に戻ったように麻薬に溺れていく。まとわりつくような人妻への思いから、悲痛な選択をくだす。その直治が大きな影響を受けたのが、太宰を思わせる上原という己れ自身を戯画化するデカダンな作家。「しくじった。惚れちゃった」などと言うキザなこの男性と、かず子は魂を響き合わせていくようになるのである。
 貴族である三人家族と、上原という流行作家と四人四様のけだるい滅びの美学を描いた作品である。

 好奇心を充たしながら、ステップを重ね高みに登っていきたいという向上心を私たちはもっている。その紙一重裏側には、恋をはじめとする魔的なものに溺れて身をやつしたい、堕ちていきたいという破滅への欲求を常に抱えている。感性の豊かな人であればあるほど、その矛盾する二者の激しいせめぎ合いをかみしめているのではないか、と私は思う。その意味で、これはとても太宰らしい小説だなという気がする。

 少女雑誌を読んだ世代ではないが、私が少女コミックを読み始めた昭和40年代——まだ、『りぼん』と『なかよし』ぐらいしかなかったけれど、今思うと、そこには太宰やミシマ的なお話が何と多かったことであろう。裕福でエレガントな女性たちが登場するのが定番で、ハッピーエンドよりはむしろかわいそうで悲しい結末の方が好まれていた。陰翳という点において、太宰やミシマとあの漫画たちの間にはいささかの隔たりはあった。しかし、きっと漫画の描き手たちは熱読した少女小説を意識しつつ、作品を描いていたのだと思う。

 「笑って没落していけばいい」と言ったのは、民俗学者・宮本常一のパトロンであった渋澤敬三。そのように泰然、悠然とした滅び方は今の日本ではなかなか見られない。「斜陽」という言葉には、偉大なるものが輝きを放ちながら静かに傾いていくというイメージがある。かつての大英帝国しかり、日本の貴族文化しかり。「斜陽」と呼ぶにふさわしい栄華は、もう既に私たちの前から過ぎ去ったあとなのではないかという気にさせられた。 

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2001/12/11 16:34

滅びってなんだろう

投稿者:たむ (男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 斜陽族とはいったい誰に共感した人々だったのだろう。
 自分を誰と重ね合わせたのか。「斜陽」という言葉が一番ぴったりくる母親だろうか。沈みゆく太陽。あるいは、直治や上原のような、沈みゆく太陽に自ら水爆を打ち込んでさらに沈めようとするくらいの破滅ぶりに共感したのか。本書の中で一番強い印象を残すのはかず子だ。あまりにも強く、強く生きている。大人が教えようとしなかった、恋と革命のために。けれどあまりに強く燃え上がった太陽は、やがて膨張し、破裂する。
 私は「落ちぶれる」という言葉を実感できない。けれどこの作品によって、落ちぶれるということについて考えることができた。「美しい破滅」というものがあるとしたら、おそらくこの作品のようなものなのだろう。そして斜陽族とは、美しい破滅にあこがれた人たちなのだと思う。

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2001/11/18 19:17

斜陽

投稿者:333(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 没落してゆく貴族を描いた作品。斜陽のようにゆっくりと、家族が没落してゆく様がよく描けている。寂寥を感じさせる描写が、ほんとうに没落してゆく様をあらわしている。死がゆっくりと、そして悲しく描かれています。太宰治の作品の中でも、特に優れた作品です。

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2001/02/05 12:55

言わずと知れた名作

投稿者:純子(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 太宰治の代表作の一つにして、斜陽族という言葉まで生み出した名作です。太宰が得意とする女性の告白体で描かれたこの作品は没落した貴族の物語です。当時の皇族の方もこの作品をよんで「身につまされる」と発言を残したそうです。

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4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2009/05/21 03:00

現代の古典としての太宰

投稿者:JOEL(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 このところ、太宰文学に対する評論を中心に読んできたが、いよいよ太宰作品そのものを手にすることにした。といっても、思春期にそれなりにかぶれて、いくつか読んでいるので、久方ぶりの太宰作品である。

 斜陽は太宰の代表的な作品のひとつだ。もちろん、この中にも、太宰作品の特徴が見いだせる。主人公にした女性による語り。死を強く意識した物語。しまいには自殺者がでる事態。弱々しく常に死と隣り合わせの登場人物。はてには、太宰自身が作中人物としても顔を出す点。

 読んでいて感じたのは、やはり太宰が、私という読者に直接的に語りかけてくれているのではという錯覚だ生まれることだ。すでに流行作家であったので、読者の一人ひとりに語りかけているわけもないのだが、そう思わせるうまさがある。

 この感覚を共有できる人と、できない人とでは評価がまるで違ってくるに違いない。ちなみに、私にはあたかも太宰が「朗読」して聞かせてくれるような場面まで出てきた。太宰という人格を抜きにして、作品だけを論じるのは困難だ。太宰の心象風景を追体験することは必要だろう。

 ところで、太宰がたたずんだ鉄道の跨線橋は、電車が真下を通過すると不安定に揺れる。この足許の不安定さを実感すると、作中の人物がなぜこれほどに涙を流すのか、太宰の筆の運びの理由が理解できるように思えてくる。

 さて、それとは別に、太宰が生誕してから100年が経ち、さすがに文体や用語には時代性を感じさせる。21世紀を生きる私たちには、もうクラシックな文芸作品に分類される。文庫によっては、巻末に用語集が用意されていたりするのが、その証明である。夏目漱石ほどには古典ではないが、遠からずそういう声が強くなりそうな感じがする。

 数年前の芥川賞選考で、若き女性作家金原が「人生という元手がかかっている」と評されていたが、50年以上前にすでにそういう作家がいた。しかも実生活と作品とが明確に区別されない作家。作品が評価されるにつれて、その作品世界を地で行くような生活を余儀なくされる。しまいには、玉川上水への入水という形で人生の幕を下ろすことになる作家が。

 太宰の暮らしぶりは、たぶんに芝居がかってはいるのだが、こういう作品群を生みだしては、ますます追いつめられていったのだろう。

 読者のみなさんは、本作品をどう評価されるのだろうか。人によりけりの太宰作品に関して、私が一番に知りたいことがそれだ。

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2002/07/25 07:54

革命の為の破壊、そして没落。

投稿者:むつき ジン(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 没落していく家の中で、最後の貴婦人となった母。革命を夢見て、恋に走るかず子。麻薬中毒になり、やがて酒に溺れ自殺した直冶。流行作家でありながら、自堕落な生活を送る上原。4人4様の破滅をなぞった本作は、斜陽族という言葉まで生んだ、太宰治の代表作である。
 本作が主に取り上げているテーマ、革命とは、旧体制の破壊である。その破壊を、太宰は夕陽に喩えた。斜陽、つまり夕陽は明るい。だが夕陽がもたらす光は、やがて夜がやってくるため必ず消える。そして光が明るければ明るいほど、影は一層暗くなる。この小説に登場する4人も、革命を望みながら多くのものを失い、傷だらけになっている。
 多少難解な小説である。が、とっておきの純文学であり、是非一読していただきたい。

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2001/06/22 05:27

日本的な悲劇のヒロイン

投稿者:呑如来(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 女性言葉で語らせると独特のたおやめぶりを発揮しだす太宰が書く美しき没落。優雅でいながら確実に崩壊してゆく貴族のやるせなさに感情移入するのは現代人には難しい。日本における悲劇のヒロインは小説の中でのみ、このような可憐な弱さを持ち続けていらるのかもしれない。

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2001/01/28 11:20

ローカルゆえに輝くもの

投稿者:katokt(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 なんでもないときにふと子供のことを心配する母親の話を聞いて、この話を思い出した。あらゆる意味でローカルな作家によるローカルな作品だとは思うが、そのローカルさが、細部において輝いているのもまた事実かと思う。詳しくは

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2004/12/04 13:41

「斜陽」の時代との距離感を味わう小説

投稿者:yukkiebeer(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 昨年の暮れに伊豆の安田屋旅館に投宿する機会に恵まれ、この旅館の一室で筆を執ったというこの作品を手にしてみました。大正期の建物が今も残るこの宿からは富士山が鮮やかに眺望できます。雲ひとつない青空を背景に神々しいまでに気高くそびえる富士の山を眺めながら太宰が死にとりつかれたかのようなこの小説と格闘していたというのは、どことなく均衡を欠いているようで奇妙な気分にとらわれました。

 戦後の民主化の流れの中で貴族という称号を失い、生活にも事欠く毎日を送る主人公たち。彼らの生活意識は残念ながら今の時代を生きる私の心には迫るものがありませんでした。それは時代の差なのであり、今の時代意識をもって彼らの生き方を裁くというのは公正ではないでしょう。

 ひとりかず子のみが「生きる」ことを力強く選択するということがひとつの救いではありますが、その生きるうえでの指針がこれもまた果たして今の時代から見て納得がいくのかどうかは大いに疑問として残りました。

 この小説が書かれた時代背景を見るうえでのひとつの資料としての価値はあるのでしょうが、日本という国はこの「斜陽」の時代から見れば長大な道のりを既に歩んできたのだということを強く感じさせられた、というのが正直な読後感です。

 なお、この新潮文庫には文章中の表現について夥しい数の注釈が巻末に掲載されていますが、これほどまでに注釈が必要なほど日本人の語彙は貧しくなってしまったのでしょうか。「タキシイド」「女中」「お灸」「守銭奴」「プライド」「源氏物語」「狸寝入り」…。こうした言葉にまで注釈をわざわざ設けなければ若い読者はついてこないということなのでしょうか。なんだかやるせない気持ちにとらわれました。

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