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オルメイヤーの阿房宮

  • 出版社:八月舎
  • サイズ:19cm/181p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-939058-04-2

オルメイヤーの阿房宮 (コンラッド作品選集)

ジョウゼフ・コンラッド (著), 田中 勝彦 (訳)

  • 全体の評価 51件のユーザーレビュー
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  • 税込価格:1,57545pt
  • 発行年月:2003.11
  • 発送可能日:7~21日

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商品説明- 「オルメイヤーの阿房宮」

19世紀後半、ボルネオの没落商人オルメイヤーは、娘と欧州へ凱旋すべく隠された金塊を求めて奥地への遠征を企むが…。多彩な南洋の自然を舞台に、孤独な夢想家の運命への挑戦を巧緻な筆で描く、コンラッドのデビュー作。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介- 「オルメイヤーの阿房宮」

ジョウゼフ・コンラッド

略歴
〈コンラッド〉1857〜1924年。ポーランド生まれのイギリスの小説家。船員となったが、健康を損ね船を降り、創作活動に専念する。著書に「青春」など。

ユーザーレビュー- 「オルメイヤーの阿房宮」

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1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2003/12/18 22:47

「地獄の黙示録」の原作を書いた作家のデビュー作。未開の地ボルネオの生々しい自然、挫折と孤独にさいなまれる人の絶望、背反するふたつの血に悩みつつ恋にとらわれる人の葛藤などを鮮烈に描写した忘れがたい傑作。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー)(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 読書人のほか図書館関係者、リアル書店や出版関係者の方たちもロムっているようなので訴えてみたいのだが、本書はもっと紹介されたり、店頭に並べられたり、図書館に入れられたりしないものなのだろうか。
 インターネットの検索エンジンで「書名」「作者/書名」で当たり、ヒット数の非情なまでの少なさに呆れ落胆してしまった。新刊なので書評は期待していなかったが、普通はどこかの図書館の新刊リストぐらいは出てくるもの。こういう本を図書館が購入しないで、どうする?(版元の営業の問題もあろうが、怒ってしまった)
 しかも八月舎のサイトもヒットしない。検索エンジン自体の機能も疑ってしまったではないか!
 奥付に初版1500部というつつましやかな数字が挙がっている通り、海外文学の読書人口の少なさは承知しているが、英国文学の主要な作家の選集シリーズという貴重な企画だ。著作権が切れているからか定価も低く押えられ、手に取り易く品の良い造本になっている。原文との突き合せはできないけれど、翻訳も映画「地獄の黙示録」原作『闇の奥』に比べれば難解というイメージを抱かせないこなれたものになっている。
 
 数少ないヒット先サイトに、異文化交流の問題考察の上でコンラッド作品には限界がある旨書かれていた。彼が、植民地の被支配者層の自立という発想をもちえなかったこと、つまりネイティヴへの差別意識が作品に感じられのが瑕疵だというような論の流れかと理解する。 
『闇の奥』につづいて本書を読んだ限りにおいて、私はそれは民族、文化、伝統、習慣、風土といったものの差異に対する「曖昧でない明確な認識」としか捉えられないでいる。支配する側(時にそれは複数国であり、現地の支配者層も含む)と支配される側双方の立場が精緻に説明され、その対立構造が物語に大きなドラマ性を与えていることは確かだ。『オールメイヤーの阿房宮』においても、19世紀後半、ボルネオ東海岸の一触即発の政情不安定が書かれ、その状況下で行われる商取引、隠れた財宝をめぐる人と人との関係が読みどころの1つを成している。

 しかし、異文化との接触、異文化間の関係が果たして物語の主要なテーマであろうか。今日の世界情勢に強引に引き寄せ、そのような切り口でコンラッドの文学を語ることの不自由を感じる。
 主人公オールメイヤーは河辺の朽ちかけた家に暮らす英国人で、大英帝国の栄光と自分の華々しいヨーロッパ凱旋を重ね合わせて夢想するがゆえ、何とも悲しく転落していく男性である。そのような人物造型は普遍的なものであろう。
 その娘ニーナは、父の血とマレー人の母の血の背反が、自分の内部でもせめぎ合い葛藤するのを意識する複雑な状況にある。彼女の恋愛を通じて、ドーパミンと人種の相関関係などというものについても思いが及ぶ。テーマの面で、この小説は多くのものを取り込んでいるように思える。
 また、シェイクスピア劇を思い起こさせる強烈な性格設定と言動の芸術性も、テーマ同等高く評価されるものであろう。そして、何より畏怖と尊敬の対象たる自然の描写の見事さ。
「そこには過去からの何世代とも知れぬ木々が葬られ腐敗しつつあって、それらを弔うように立っている木々は暗緑色の葉を茂らせた巨大な姿で、どうすることもできず自分の朽ちる番を待っていた」(141P)
 全篇マニエリスム的な生彩に覆い尽くされた官能に響く表現の絶妙は、文学の価値としてしっかり受容されるべきなのである。
 

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