- 出版社:角川書店
- サイズ:20cm/301p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-04-873500-4
失はれる物語
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- 税込価格:1,575円(45pt)
- 発行年月:2003.11
- 発送可能日:購入できません
- 本
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商品説明- 「失はれる物語」
少年や少女だった日のひりひりするような魂を上質の文章力と定評のあるストーリーテリングで描く傑作短編集。ブロードバンドシネマ「手を握る泥棒の物語」原作など全6編を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧- 「失はれる物語」
| Calling you | 5-48 | |
|---|---|---|
| 失はれる物語 | 49-76 | |
| 傷 | 77-120 |
著者紹介- 「失はれる物語」
乙一
- 略歴
- 〈乙一〉1978年福岡県生まれ。「夏と花火と私の死体」でジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞しデビュー。「GOTH」で本格ミステリ大賞を受賞。
ユーザーレビュー- 「失はれる物語」
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2004/01/31 23:08
ゲッ!である。新作かと思ったら、殆どが旧作。上手くなったなあ、なんて思ったのが大間違い、乙一は昔からこんなに上手かった?!
投稿者:みーちゃん(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
装丁は帆足英里子(ライトパブリシティ)。五線譜を利用したカバー、目次、各編の扉がなんともビミョーな雰囲気を出す。勿論、悪い意味ではないけれど、例えば扉の五線譜などは、もう少し見る人が見れば違いが分るような遊びがあってもいいのではないか、などと思うビミョーさではある。
人と付き合うことが苦手で、孤独でいることが当たり前になったリョウが思い描くのは、高校生なら殆どの人が持っている携帯電話。いつも頭の中でそのことを考えていたら「Calling You」。結婚するまで音楽の教師をしていた美しい妻。そんな彼女との生活にも、いつしか感情の行き違いが多くなってきた。そんなある日、僕は交通事故に遭って、指先だけが辛うじて動かせる植物人間に。映像化を拒否した傑作「失われる物語」。
オレはクラス仲間への乱暴のせいで特殊学級に入れられることになった。そこで悪意のない子供たちとのんびり過ごしていた時、アサトがクラスにやってきた「傷」。映画の撮影風景を見たくて、わざわざ俺の住む町の旅館にやってきた伯母と姪。裕福な二人に呼び出された俺は事業の行く末さえ定かではないデザイナー「手を握る泥棒の物語」。
人と付き合うのが苦手なぼくは、伯父の所有する古い家に住むことにした。他人との付き合いを避け、ひっそり暮らすことを願うぼくの前に現れたのは白い子猫。閉めたはずのカーテンがいつの間にやら開けられて「しあわせは子猫のかたち」。僕たちが近くの陸橋で花火をしようとした夜、姉の友人の鳴海マリアが鉄道で飛び込み自殺をした。美しかった彼女が遺したものは「マリアの指」。それに、ライトノベルについてのことが書かれた「あとがき」がつく。
で、私が乙を読むのは2001年9月の出た『暗黒童話』と、2003年6月出版の『ZOO』だけだから、それから約半年して出たこの本を手にして、上手くなったなあ、この作家、と思っていたら、収められた作品の殆どが過去にライトノベルとして出版されたものだというのだから驚きだ。では、なぜこんなに凄い作品が騒がれなかったか、といえばそれは、これらがライトノベルとして出ていたからだ、と乙は言う。ではライトノベルとは何か、乙一の言葉を借りれば「漫画やアニメ風の絵を表紙に持つような挿絵つきの本である」。
乙は、それが正式の名称ではないが、断っているが、たしかに混乱がある。もちろん、それは乙の側にではなくて業界のほうにである。少なくとも私の知識で言えば、それは「キャラクター小説」(大塚英志)、「コミックノベル」(森博嗣)と同義である。で、確かなのは、いわゆる小説読みは絶対にそういうものには手を出さないということだ。勿論、私も例外ではない。
だから、この惚れ惚れとするような、乙の言葉によれば「やけに交通事故が多い」小説、私に言わせれば「むしろ白い猫がどこにでも出没する」作品群が、過去の若干不満足な出来の短編として解説されると、そんなご謙遜をといいたくなってしまう。ちなみにこれらが収録されているのは全て角川スニーカー文庫で『失踪』(2001.01)、『きみにしか聞こえない』(2001.06)、『さみしさの周波数』(2003.01)で、乙が1978年生まれ、23歳の時と考えれば、やはり驚くほどに上手いのである。
とりあえず、「Calling You」あたりは梶尾真治は『タイムトラベルロマン』で取り上げても良かったのではないだろうか。でも、あまりに切ない話だ。「手を握る泥棒の物語」は逆に、落語だろう。駄目男ぶりにイライラしているうちに、ま、ここまで遊べば十分かと思ってしまう。絶句してしまうのは、「失われる物語」の時の流れが止まってしまったかのような世界だろうか。でも、ある意味、殉教者、神の子の生き方を思わせる「傷」の持つ重さは、脱帽もの
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2003/12/22 22:48
忘れていた「あの日」が蘇る
投稿者:べあとりーちぇ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
乙一氏の作品をすべて読破したわけではないが、その作風には両極があるように思う。ひとつの極が『ZOOや『GOTH』に代表されるような「ショッキング」系。もうひとつが本書や『平面いぬ。』に代表される「しみじみ」系。ただし両方の系統とも根底に流れるものは共通していて、なかなか言い表しにくいその印象を強いて言葉にするとするならば、やはり「切なさ」ということになるのではないだろうか。
筆者は両系統とも非常に好みなのだが、どちらかを敢えて選ぶとすると本書のような「しみじみ」系がより好きである。内容説明文にあったような「ヒリヒリする」魂を持て余して生きていた頃。自意識過剰と理由のない矜持、その裏返しの不安感を抱えて、孤独感いっぱいだった頃。自分だけが世界と上手く折り合いを付けられないのだと信じ、周りの誰もが同じように不安なのだとは露ほども思わなかったあの頃。本書を読めば、忘れていた「あの日々」が、甘い痛みを伴って胸に迫ってくる。
本書に収められているのは「Calling You」「失はれる物語」「傷」「手を握る泥棒の物語」「しあわせは子猫のかたち」「マリアの指」の6編。中でも筆者が特に気に入ったのは、静かな気配に満ちた「しあわせは子猫のかたち」だった。「マリアの指」を除いては、角川スニーカー文庫の既刊本に収録されていた短編たちである。つまりいわゆる「ライトノベル」の分野に属していたわけである。
それらの5編の文体がやや生硬な印象を受けるのは、なるほどそういう理由だったのだろうか。ただしそれも、世慣れない少年少女たちが心のうちを精一杯語ろうとする時の一生懸命さを効果的に表現していて微笑ましい。書き下ろし最新作の「マリアの指」での洗練された文体よりも、少年少女の感受性、純朴さをダイレクトに伝えられているような気がした。
ライトノベルと一口に言うが、そのラインナップはなかなか侮れたものではない。たまにはこちらの心の奥底にグサリと来るような傑作もあって、そういう作品に当たった時の感動は一般書を読んだ時と何も変わるところはない。
ただしやっぱりどうしても目立ってしまうのがあの可愛らしい表紙たちで、どんなに素晴らしい内容の作品でも、漫画チックな表紙をしているだけで受け付けない人もいる。見た目で敬遠しないで読んでみてよと勧めた本を開きもせずに「やっぱいいや」と返される時の哀しさと来たら…。
その点、本書の装丁ならばパーフェクト。内容のみずみずしさを良く表現したセンシティブな印象のこの表紙なら、ラノベだからという理由で読まず嫌いな人たちにも安心して勧められる。乙一氏の世界を知らないなんてもったいない、と悔しい思いをすることもなくなるだろう。
あとがきによれば、乙一氏としてはそうやって表紙を一般書用に作り変えて取っ付きやすくすることは「ある種の敗北」なのだという。その悔しさも判らなくはない。あるがままの姿を受け入れてほしいという気持ちは、ライトノベルの読者なら誰でも持つものであろう。
けれど、この際「読んでもらったが勝ち」。中身の勝負で読まず嫌いな人々をノックアウトできたらそれでいいではないか。今後もどんどん、一般書の顔をした乙一印のライトノベルを出して欲しいものだと思った。
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2004/12/20 03:34
切ないがぴったりくる
投稿者:karasu(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
6話からなる本作は、悲しいとか、暗いというばかりになってしまいそうな事件、と言うか状況の話が詰まっているが、ソレを切ない、というものに変化させているのは乙一だからだと思う。
切ないと言うのが、やはり一番ぴったりくるのだろうか。それ以外に上手い言葉が思いつかない。こういう時に、言葉を勉強しなくてはなぁと思ってしまう。
どの話にも救いがあるから、悲しいだけでも、暗いだけでもなく、切ないというものに変化するのだろう。
各話に出てくる人達は、それぞれが苦しい状況や、切羽詰ったところに追いやられたりしているが、自分の中で昇華し、進んで行っている。「失はれる物語」の時間の感覚がもうなくなってしまっている彼も、進んだのだろう。
自分が、ツイていないと思う時や、最悪な気分の時でも、時間は流れて、朝が来て夜が来て、朝が来て夜が来てというのを止められないのだ。引きずるしか無く過ごすのと、昇華して進むのとでは、同じ時間でも全く違う。この物語では、進んでいるところに救いのような物を感じた。
止まるのは大事。止まらないというのも不自然だけど、進んでこそだなぁと思う。
ささやかな幸せに憧れてしまいそうになる本かな。
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2004/08/01 10:32
切なくて痛い
投稿者:郁江(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
乙一さんの最新作と思って 喜んでいたら 実は旧作品の焼き直し…正直読む前は、少し凹んでしまいました。しかし早熟の天才乙一氏 17歳に書いた小説「夏と花火と私の死体」で賞をとっただけ あって旧作品も読み応えありでした。
私は早熟の天才という言葉を聴くと どうしてもSキングの存在を思い出します。彼も「死のロングウォーク」という作品をまだ 学生のときに書きあげたらしいです。それでか なんとなく 私の中で キングと乙一さんがダブるんです。どちらも 予想のつかない展開と実際にはありえないSF的要素そして ホラー色の強い作家さんですよね。
この作品は 短編集で 私のお気に入りは 1つ目の「Calling You」心の携帯なんてありえない と思いながらも 主人公の寂しさ 切なさ そして話の展開に引き込まれていきます。ラストは切なくて 痛いんですが、そこがまた乙一さんの作品らしくて好きなんです。また 主人公の視線でどこか淡々と語られる物語が 彼の魅力ですね。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2007/10/20 17:28
最後にきゅっとくる気持ち
投稿者:オクヤマメグミ(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏の文庫フェアの度に気になっていた著者の作品を初めて読んだ。
ハードカバーの短編集で、角川スニーカー文庫に収録されている作品を再編成したもの。著者の作品はライトノベルという位置にあるらしい。
堅苦しさがないのでとても読みやすかった。すぐに映像が浮かぶ感じ。
かといって単純な文章ではなく、情景描写の繊細さにハッとさせられることも多かった。
6つの物語を順に読み進めていったが、3話目の『傷』から一気に引き込まれていく。
主人公は子供なのに、闇を抱える2人の少年はひどく大人びている。
『手を握る泥棒の物語』はラストシーンが好きだ。
ミステリ仕立てでいたずら心もあって。手を握るという触覚の記憶に驚かされる。
『しあわせは子猫のかたち』子猫は次の作品『マリアの指』にも登場するが、子猫の姿がリアルでかわいい。見えない相手を追いかけたり甘えたりするしぐさが見えるように伝わってくる。
最後の一言は切なくてきゅっと来た。この本の中で一番好きな物語だ。
乙一の作品をもっと読んでみたくなった。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2004/08/03 21:08
「白乙一」をご堪能あれ
投稿者:祐樹一依(男性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
初期作品集にはホラーテイストのものが多かった乙一氏の小説ですが、ここ数年の氏の著作には、静かだけれども淡々とした優しさが紛れ込んでいる、という作風が目立つように思われます。いわく「切なさの達人」との異名を持つとか持たないとか。本人にそのつもりがあるかどうかは定かではないのですけれど、少なからず、本書にまとめられた物語の数々は読んでいて何処か、透き通った色の液体を眺めるときのような不思議な感覚に捕われるように思います。それは決して心地良いばかりのものではないけれど、いい意味で後に余計なものを残さない。それが乙一の「淡々とした優しさ」なのではと僕などは思うのです。
透き通った液体、と僕は評したけれども、それには未だはっきりとした光が当たっておらず、それゆえに読者の前には少々風変わりな「不思議」があるように思わせるに留まるのです。それが各々の作品にある「心地良さではないもの」に辺り、結果的にその「不思議」が明かされることがあれば、明かされないこともある。現代ファンタジーの書き手であると同時に、ミステリの書き手でもある氏の手腕の見せ所であります。それが氏の意地悪なところだけれど、毎回、よくこんなことを思いつくなあ、と思わせられますね。本書に関して言えば、ひたすらダークな「黒乙一」ではなくて、それが作者の小狡さとして機能している「白乙一」なのは明らかです。
書き下ろしの「マリアの指」は、伏線が効いたミステリになっております。それ以外の5編は、文庫に既出の短編。初めて乙一を読む、という人にはお勧めの一冊になりました。
(初出:CANARYCAGE)
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2003/12/22 15:12
「マリアの指」が指し示す方向
投稿者:UMI(女性|未指定) - この投稿者のレビュー一覧を見る
ライトノベルは認知されていない。
漫画のようなふんだんなイラスト。カギ括弧ばかりで下半分が何も書かれていない本文。子供の読み物という定義。実際ボク自身も馬鹿にしていたところがある。
今、書店の一番前に平積みにされた本書を手に取った大人達は、読後どんな感想を聞かせてくれるのだろう。
書き下ろしの「マリアの指」以外はすべて既に発表されているものだ。それは今まで大人が決して踏み込もうとしなかった「ライトノベル」という世界での出来事だった。
新作「マリアの指」は乙一らしい。書きようによってはグロテスクになる物語も、乙一にかかると透明感と喪失感の交じり合った不思議なお話になってしまう。何かが足りない人たちの間に生れる憎しみも悲しみも、淡々と描き出してしまう。
そしてボクらはなぜか息を止めて文字を追ってしまう。
人に懐かない猫が咥えてきたものは、小さくて白いマリアの指だった。
電車に引き千切られてばらばらにされたマリアの身体。彼女の指にはめられていたはずの指輪を探す事が「僕」の日課になった。
残された遺書。残された恋人。残された謎。残された疑問。
本当にマリアの死は自殺だったのだろうか。
すべての短編を読み終えて、ライトノベルを唇の端を歪めて笑える人がどれだけいるだろう。ボクは今でも乙一のスタート地点はライトノベルだと思っている。「このミス」でもなく「ミステリー大賞」でもない。
今まで見向きもしなかった中高生向けにつくられた薄い文庫本を捲ってほしい。ここに収録されなかった作品も、大人達を一ひねりしてくれるに違いないだろうから。







